2013 Fiscal Year Research-status Report
光受容体フォトトロピンの光情報認識からキナーゼ活性化に至る分子機構の解明
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25840047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中曽根 祐介 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00613019)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | phototropin / LOVドメイン / 過渡回折格子法 / 光センサー蛋白質 |
Research Abstract |
高等植物や藻類の様々な運動反応を制御する青色光センサー蛋白質phototropinは光受容を担う二つのLOVドメイン(LOV1、LOV2)と光依存的に活性化されるkinaseドメインからなる。その信号伝達機構を明らかにするため、クラミドモナスおよびオストレオコッカス由来の全長phototropinの光反応を過渡回折格子法により測定した。その結果、クラミドモナス由来のphototropinは光依存的に2量体化する様子が観測され、この会合反応はLOV1ドメインが制御していることが示唆された。一方、オストレオコッカス由来のphototropinでは会合状態の変化は観測されず、代わりにヘリックス構造の崩壊反応が観測された。この反応にはLOV2ドメインが支配的に関与しており、同じphototropinでも生物種の違いにより反応機構が大きく異なることがわかった。さらに遺伝子操作によりオストレオコッカス由来のphototropinからkinaseドメインを取り除いた試料を作製し測定した結果、ヘリックス構造の崩壊反応が観測されなかったことから、全長蛋白質で観測されたヘリックス崩壊反応はkinaseドメイン(あるいはLOV2ドメインとkinaseドメインを結ぶ領域)で起こっており、LOV2ドメインがこの反応に必須であるという結論を得た。これらは信号伝達機構の理解において重要な知見である。また分子レベルでの反応においても生物種の違いが顕著に表れるということは非常に興味深い。現在、信号伝達に重要と予想される部位に変異をかける実験も行っているが、Wild typeとは大きく異なる信号が観測されており、信号伝達経路に関する詳細な知見も得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では1年目にクラミドモナス由来の全長phototropinの光反応解明を達成する予定であった。現在、その80%程度が完了し、また変異体の作製により信号伝達に重要な箇所の同定も進んでいる。一方、オストレオコッカス由来のphototropinの反応検出は2年目に行う予定であったが、サンプルの調達がスムーズに運んだため、既に着手しており多くの結果が得られている。これらの比較により最終目標であった異なる生物種間での蛋白質反応の違いに関する考察も進めており、トータルでみておおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目はまず全長蛋白質の光反応解明完了を目指す。詳細な解析のために全長蛋白質から各ドメインを切り取った試料の調整を行い、その測定結果を基に全長蛋白質の反応機構を議論する。またkinaseの活性化機構の本質に迫るために、ATPを加えた系で同様の測定を行い、自己リン酸化過程や基質のリン酸化過程、さらにはリン酸化に伴う蛋白質の高次構造変化の追跡も行う。これによってphototropinが光を受容してから信号伝達を完了するまでのメカニズムを明らかにできると考えている。最後にクラミドモナスとオストレオコッカス由来のphototropinの反応を比較することで、進化の過程についても分子論的観点から考察する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一定培地量に対する蛋白質の回収量が予想より多く、蛋白質試料調製に必要な消耗品経費を予定より低く抑えることができた。また変異体の作製数が研究計画より少なかったため、遺伝子操作に必要な試薬の節約およびシークエンス解析費用を抑えることができたため、当初の使用計画を下回った。 2年目はより精力的に変異体の作製やドメイン単位で切り取った試料の調製を行う予定であり、1年目の繰越額をこれに充てる。またリン酸化過程を調べる上で、蛋白質を予め完全に脱リン酸化する必要があるが、そのための脱リン酸化酵素は比較的高額である。実験上この高額試料を大量に購入する必要があるが、これも繰越額でまかなう予定である。
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