2013 Fiscal Year Research-status Report
アクチン繊維依存的な異常タンパク質の脱凝集と分解除去の新機構
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25840066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田村 拓 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80363761)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ALS / SOD1 / アクチン / ミオシン / アグリソーム / タンパク質凝集体 / 脱凝集 / プロテアソーム |
Research Abstract |
本来SOD1は活性酸素を除去する酵素であるが、遺伝子変異によりタンパク質凝集体が形成され、神経変成疾患の一つであるALSの発症に強く関わっていることが明らかになっている。ALSは筋肉の動きを司る神経細胞が死滅する疾患であり、有効な治療法が確立しておらず、発症から5年程度で死亡する。以前に当研究室は、変異型SOD1に特異的に相互作用する因子として、Myosin1bを含むアクチン関連タンパク質を多数同定した。本研究では、Myosin1bとアクチンを介した、細胞内におけるタンパク質凝集体の品質管理機構の分子メカニズムの解明を目的として解析を行った。 細胞内の異常タンパク質は、プロテアソームやオートファジーなどの分解系オルガネラによって速やかに除去される。しかし、分解のキャパシティーを超えると異常タンパク質は凝集体を形成し、細胞内に蓄積した経年変化により、細胞毒性の高い封入体を形成する。ALSやパーキンソン病の患者からはこのような封入体が観察されることから、発症との関連が強く示唆されている。しかし、凝集したタンパク質がどのように分解系に提示されるのかは未解明な点が多い。申請者を含むグループは汎用培養細胞を用いたモデル実験系を用いて、細胞内にタンパク質凝集体を形成させ、局在や凝集体の量を解析することで、異常凝集したALS原因タンパク質である変異型SOD1が分解に至るまでの過程を解析している。 タンパク質分解系は、ほとんどの細胞で共通のシステムである事から、モデル細胞を用いて異常タンパク質の凝集および分解に至る過程を明らかにすることで、神経細胞におけるタンパク質品質管理の機構を明らかにすることが期待される。また、細胞が異常タンパク質を認識し、分解を促す過程の詳細が明らかになることで、疾患の発症前や発症後における治療について、有用な知見が得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、変異型SOD1凝集体の分解におけるMyosin1bの関与を明らかにするために、Myosin1bの機能的ドメインを欠失した変異体を発現するプラスミドを作成した。Myosin1bは1)アクチン結合ドメイン、2)アーム領域、3)カーゴ結合ドメインに分かれており、それぞれを欠失した変異体を作成した。また、カーゴ結合ドメイン内の結合に必要なアミノ酸の点変異ミュータントを作成し、細胞内における発現をウエスタンブロッティングと免疫染色によりそれぞれ確認した。その結果、アクチンとの相互作用やカーゴとの相互作用に必要な領域を欠失すると、局在が変化することが示された。また、野生型myosin1bはアクチンと部分的に共局在を示すが、カーゴ結合ドメインのミュータントはほとんどが細胞質に検出されたことから、カーゴ輸送機能を完全に失っていることが考えられる。次年度は変異型SOD1と作成したmyosin1bの変異体を共発現し、SOD1の凝集体を解析することで、SOD1の品質管理に必要なドメインを特定する。 内在性のmyosin1bを検出するために、Sigmaに依頼し、ペプチドを抗原とするウサギ抗血清を作製した。ウエスタンブロットによる解析から、内在性のmyosin1bが検出可能であることを確認した。また、生細胞におけるアクチンの動きを可視化するために、赤色蛍光タンパク質であるmCherryにアクチン結合ペプチドであるlifeactを付加したコンストラクトを作製し、生細胞におけるアクチンのダイナミクスを観察する事が可能になった。GFPを付加したmyosin1bおよびSOD1との共局在や相互作用を生細胞で解析し、変異型SOD1の分解におけるアクチン細胞骨格やmyosin1bの役割を可視化する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に作製したMyosin1bの変異体を変異型SOD1と共発現させ、変異型SOD1の凝集体を定量的に解析する。ウエスタンブロットにより凝集体と可溶型SOD1の量を比較し、myosin1bのどのドメインが変異型SOD1の分解を促すのかを特定する。また、免疫沈降法により、myosin1bが変異型SOD1を認識する際に必要な領域を特定する。siRNAによるノックダウンを行い、myosin1bのタンパク質発現量が、SOD1凝集体の分解および品質管理に関与している事を明確にする。 Lifeact-mCherryを用いて、変異型SOD1の分解におけるアクチンの関与を直接可視化する。また、凝集体の生細胞内における動きを解析するために、UV照射により蛍光が緑から赤に変換する、mKikGRと変異型SOD1の融合タンパク質の発現プラスミドを構築した。このタンパク質発現系を用いて、凝集体のみを赤く呈色させることで、凝集後のSOD1の振る舞い、特に、細胞内で分解される場所の特定や分子ダイナミクスを明らかにする。蛍光タンパク質を付加した変異型SOD1の細胞内ダイナミクスをFRAPとFCSにより、1分子レベルで解析する。アグリソームに蓄積したSOD1が、myosin1bにより細胞内に分散する過程、すなわち脱凝集を可視化することで、myosin1bが細胞骨格であるアクチンを介して凝集体の品質管理に関与しているメカニズムの詳細を明らかにする。前年度に、レーザー共焦点顕微鏡(zeiss, LSM780)にステージヒーターを導入し、生細胞により近い条件(37℃、5% CO2)で蛍光タンパク質のダイナミクスを解析する系が整ったため、今年度はこれらの解析を中心に行う。
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