2013 Fiscal Year Research-status Report
神経上皮組織特異的な活性酸素シグナル伝達の分子機構の解明
Project/Area Number |
25840090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
酒井 大輔 同志社大学, 高等研究教育機構, 助教 (90632646)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 活性酸素シグナル / 脳原基形成異常 |
Research Abstract |
本年度の研究計画に沿って、(1)胚体内活性酸素の人為的減少法の確立、および(2)胚体内活性酸素の減少が神経上皮細胞に与える影響の解析を重点的におこなった。まず(1)に関しては、全胚培養の血清培地に添加する抗酸化剤(NAC)の濃度やタイミングを詳細に検討した。その結果、胎生8.5日目のマウス胚を10mM NAC存在下で24時間から36時間培養することで脳原基の形成が著しく阻害されることを見いだした。その際、体幹部の発生にはほとんど異常が認められなかった。また、活性酸素は血管形成にも関与することが報告されているが、この時期に形成される主要な血管である卵黄嚢血管の形成は正常だった。活性酸素の減少による脳原基形成異常の原因を調べるために、免疫染色による組織学的解析をおこなった。神経上皮細胞の細胞死、細胞増殖、神経分化に関して異常の有無を調べた結果、細胞増殖能の低下が認められた。また、神経細胞数の減少も認められたが、これは細胞増殖の低下による神経前駆細胞の減少に起因すると考えられた。細胞死の誘導は認められなかった。さらに興味深いことに、前脳領域で特に顕著な細胞増殖能の低下が認められた。これは、神経上皮細胞の増殖における活性酸素依存性が脳原基の領域ごとに異なることを示しており、活性酸素が前脳発生特異的に機能するという、新規の活性酸素シグナル機構の存在が示唆された。さらに、胎生8.5日目の胚で発現している活性酸素合成酵素(Nox/Duoxファミリー)の同定を試みた。胎生8.5日目胚から調整したcDNAを用いてPCRをおこない、Nox2、Nox4、Duox2の発現を確認することができた。しかし、ホールマウントin situハイブリダイゼーションでは、いずれの遺伝子の発現も検出できなかった。おそらく、発現レベルが検出限界以下であることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに次年度の研究計画の一部である、胎生8.5日目胚に発現する活性酸素合成遺伝子の同定に着手しており、その候補分子もある程度絞られてきている。また、活性酸素シグナル伝達経路の分子実体の解明に必須である遺伝子機能解析法として、エレクトロポレーションによる胎生8.5日目胚への遺伝子導入法を確立した。これらの理由から、当初の計画以上に伸展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画では、活性酸素シグナル伝達機構を分子レベルで解明する予定となっている。まずは活性酸素存在下で活性化することが知られているPTEN-Akt経路の関与を中心に調べるために、PTENやAktの活性化を検出することができる抗体を購入し、免疫染色によりこれらの活性が抗酸化剤処理により抑制されるか調べる。また、胚体内の活性酸素分布パターンが古典的Wntシグナル伝達経路の活性化部位と酷似していることが判明したので、Nrx-Wnt経路の関与も視野に入れて解析をおこなう。そのために、古典的Wntシグナル経路の標的遺伝子であるAxin2の発現をホールマウントin situハイブリダイゼーションにより検出し、抗酸化剤処理の有無による発現の違いを比較する。新規の活性酸素シグナル伝達経路の発見を目的とした網羅的な解析も並行して行う予定だったが、まずは既知の活性酸素依存的経路であるPTEN-AktとNrx-Wnt経路の関与を重点的に調べることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本発生生物学会第46回大会への参加を予定していたが、諸事情により参加することができなくなったため、旅費の分が次年度使用額として発生した。 今年度、新たに日本分子生物学会に参加する予定であるので、その旅費として使用する。
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