2013 Fiscal Year Research-status Report
非病原力遺伝子変異を指標としたいもち病抵抗性遺伝子持続性予測システムの確立
Project/Area Number |
25850028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中馬 いづみ 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90628926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イネいもち病 |
Research Abstract |
AVR-Pizt遺伝子の変異に関して、以下のような実験を行った。日本国内で採集されたAVR-Pizt変異菌10菌株を供試し、変異様式を解析した。このうち、MAFFジーンバンクより取り寄せた6菌株については、登録されているイネ菌約600菌株からレース番号に基づき選抜したものである。これらに加えて、宮城大学圃場で分離されたササニシキ(Pia)病斑上の菌(非変異菌)とこれが変異してとりで1号(Piz-t)に感染した菌(変異菌)を合わせて供試した。上記変異菌全体としての変異の種類は、トランスポゾン挿入(プロモーター領域、コード領域)、塩基置換(終止コドンへの変異、アミノ酸変異)のいずれかに類別され、何らかのかたちで元の遺伝子配列が保持されていた。転写の有無を調査したところ、ほとんどの変異菌株において転写されていることが明らかとなった。これらのうち、宮城大学で分離された菌株は、AVR-Piztプロモーターへのトランスポゾン挿入変異によってとりで1号に対する病原性を獲得したことが判明した。非変異菌・変異菌におけるAVR-Piztの発現量を比較したところ、接種後ともにAVR-Pizt遺伝子は発現していたが、変異菌においてはプロモーターへのトランスポゾン挿入によって、発現量が有為に低下していたことが明らかとなった。一方、イネ菌以外の菌株が持つAVR-Piztホモログについては、イネ菌に導入してとりで1号に接種することで、すべて抵抗性反応を誘導することを確認した。Multiple translocationを起こしたAVR-Pia, AVR-Pita等の主な変異機構が遺伝子の全欠失であることと比較すると、AVR-Pizt遺伝子はいもち病菌集団において、機能的にも遺伝子配列の有無においても高く保存されており、本遺伝子が安定な遺伝子であるという仮説が支持されたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) LTH monogenic linesを用いた各種AVR遺伝子のR品種上での変異菌検出頻度の比較 増殖したLTH monogenic linesの種子を用い、AVR-Pizt保有菌と非保有菌に対する感受性を確認するための予備実験を行った。LTH(感受性)およびLTH-Pizt(Piz-t保有)のいもち病菌に対する感受性が、それぞれ、日本産判別品種新2号(感受性)およびとりで1号(Piz-t保有)とは異なっており、日本産イネ菌を用いた病原性検定には適当ではない可能性があることが判明した。 (2) AVR遺伝子とR遺伝子の地理的相関の検討 現在のところ、イタリア産のイネ菌・メヒシバ菌を用いて非病原力遺伝子の分布調査を行っているが、採集地におけるイネ品種が保有する抵抗性遺伝子と病原菌のもつ非病原力遺伝子の分布に関して予想に反する相関は見出されていない。東南アジア産いもち病菌の輸入が予定より遅れているため、実験がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
AVR遺伝子変異の再現について、いもち病菌分生胞子の共存培養実験と形質転換いもち病菌を用いた変異選抜実験を、予定通り遂行する。AVR遺伝子のR品種上での変異菌検出頻度の比較については、コシヒカリまたはヒノヒカリnear isogenc linesを入手し、実験を行おうとしている。
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Research Products
(13 results)