2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25850227
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
相内 大吾 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (50552783)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 昆虫寄生菌 / Beauveria bassiana / 感染症媒介蚊 / Anopheles stephensi / 産卵行動 / 吸血行動 / ベクターコントロール / 行動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果として昆虫寄生菌に感染したハマダラカの吸血率および吸血量が低下することが明らかとなった。今年度はこれら吸血行動以降の産卵行動に関連する項目を評価した。吸血後、卵巣の濾胞の発達程度を評価したところ、対照区で濾胞発達率が90%程度であるのに対し、昆虫寄生菌接種個体では菌感染3日後から低下し、5日後には約60%と有意に低い値を示した。また、産卵数は菌感染2日後から有意に低い値を示し、菌感染3日以降の吸血個体の産卵数は対照区の半数以下となった。さらに、これら卵の孵化率を評価したところ、対照区では80%以上の値を示したのに対し、昆虫寄生菌接種個体は菌感染4日後から孵化率が低下し、6日後で約60%と有意に低い値を示した。 以上の結果からハマダラカは昆虫寄生菌に感染することで宿主探索行動の鍵となる熱・色・匂いを認識することが出来なくなるのに加え、吸血行動量および吸血用の低下に伴い、卵巣の濾胞の発達程度の低下、産卵数の減少、孵化率の低下を引き起こすことが明らかとなった。したがって、昆虫寄生菌の感染は宿主探索行動量の低下と吸血行動量の低下を引き起こすことでマラリア伝播リスクを低下させるだけでなく、次世代の個体群サイズにも大きく影響を与えていると考えられる。 一方、これまでの研究で用いた昆虫寄生菌は高病原性系統であったことから、ハマダラカの行動を評価する際に致死の影響を受けるという課題があった。そこで、今年度低病原性系統の昆虫寄生菌を選抜した。これらの菌株は感染力は有するものの、病原力の低い系統であり、菌感染がハマダラカの行動に与える影響をより純粋に評価できることが期待された。しかし、これら低病原性系統は吸血行動率および吸血量、産卵数、孵化率のいずれにも影響を与えることは無かった。今後、両系統の特性の比較により、昆虫の行動に影響を与える要因を解明する材料になると期待される。
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