2013 Fiscal Year Research-status Report
抗肥満薬開発の標的としての新規分泌性因子Neudesin
Project/Area Number |
25860045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 紘也 京都大学, 薬学研究科(研究院), 研究員 (40638988)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分泌性因子 / Neudesin / エネルギー消費の亢進 / 脂肪組織 / 副腎 |
Research Abstract |
代表者は所属する研究室で同定した分泌性因子Neudesinの生理的意義の解明を行ってきた。特にNeudesin遺伝子欠損(以下KO)マウスが食餌誘導性肥満(DIO)に耐性を示したことに着目して、Neudesinのエネルギー代謝における役割の解明、さらにNeudesinを将来的に抗肥満薬の標的として利用する時に役に立つ知見を得ることを目指している。 本研究計画において代表者は、Neudesin KOマウスの解析を通して、Neudesinがエネルギー消費と脂質の利用に与える影響を解明すること、および組換えNeudesinたんぱくを培養細胞に添加することによって、Neudesinにより活性化されるシグナル経路の解明およびNeudesin受容体の同定を目指している。 本期間の研究により、Neudesin KOマウスの脂肪組織(白色脂肪、褐色脂肪)でPgc-1αを始めとする脂肪酸酸化関連因子やUcp1といった熱産生関連因子の発現上昇が認められた。これらの因子の発現に骨格筋や肝臓では変動が認められなかったことから、Neudesin KOマウスで認められたエネルギー消費の亢進には主に脂肪組織が寄与していることが判明した。さらにNeudesinが副腎においても高発現していることや、Neudesin KOマウスでは血中カテコラミン濃度の上昇していることも新たに判明した。従ってNeudesinが、副腎でのカテコラミン産生や、カテコラミンを介したエネルギー消費調節に関わる可能性があることも判明した。 また昆虫細胞を用いた発現系で、添加実験に必要な組換えNeudesinたんぱくの作製に成功した。既にラット副腎髄質由来のPC12細胞に対して生物活性を示すことを確認済みであり、今後脂肪組織や副腎においてNeudesinにより活性化されるシグナル経路の解明が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において代表者は、Neudesin KOマウスの解析を通してNeudesinがエネルギー消費と脂質の利用に与える影響を明らかにすること、および組換えNeudesinたんぱくを用いた培養細胞への添加実験によって、Neudesinにより活性化されるシグナル経路の解明およびNeudesin受容体の同定を目指している。 本期間おいて、Neudesin KOマウスの脂肪組織で脂肪酸酸化と熱産生の亢進が認められることを明らかにした。従ってNeudesin KOマウスがDIOに耐性を示す原因はエネルギー消費の亢進にあり、このエネルギー消費の亢進は主に脂肪組織に起因することを確認できた。脂質の利用に関しては、Neudesin KOマウスでも99%以上の脂質が吸収されていることを確認できたため、少なくとも生理的な条件下においてはNeudesinは脂質の吸収には影響しない可能性が高いことも判明した。さらに新たにNeudesinが副腎でのカテコラミン産生に関わる可能性があることも見出した。 またNeudesinにより活性化されるシグナル経路の解明やNeudesin受容体の同定を行うために、培養細胞に組換えNeudesinたんぱくの添加実験を行う計画であるが、この実験に必要な組換えNeudesinたんぱくを昆虫細胞を用いて獲得する系を樹立して、実際に組換えNeudesinたんぱくを手に入れた。さらに作製した組換えNeudesinたんぱくが生物活性を示すことも確認した。従って、今後培養細胞を用いた系でNeudesinによって活性化されるシグナル経路の解明や受容体の同定に関する実験を、円滑に遂行できる状況になった。 以上のことを踏まえると、本研究はおおむね当初の予定に沿って順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果により、Neudesin KOマウスでは脂肪組織での脂肪酸酸化と熱産生の亢進が認められ、これがNeudesin KOマウスのエネルギー消費亢進という表現型の一因であることが判明した。また新たにNeudesin KOマウスでは副腎でのカテコラミン産生が亢進している可能性があることも判明した。 これらの結果を考え併せると、Neudesin KOマウスではカテコラミン作用の増強が認められ、これがエネルギー消費が亢進する根本的な原因である可能性が考えられる。カテコラミン作用が増強している理由として上記のように副腎でのカテコラミン産生が亢進している可能性が考えられるので、実際にNeudesin KOマウスの副腎でカテコラミン産生が亢進しているかどうかを明確にする。またカテコラミン作用の増強は中枢系、特に交感神経活性が亢進した場合にも認められる。そこで研究計画において述べたように、中枢系でNeudesinが果たす役割を明らかにすることを目指す。特にNeudesinが交感神経活性に与える影響を明らかにすることを目指す。 また組換えNeudesinたんぱくの培養細胞への添加実験を行ってNeudesinによって活性化されるシグナル経路の解明や、Neudesin受容体の同定にも着手する。こうしたシグナル経路や受容体の解明は、Neudesinの生理的意義の解明の一環として行うものであり、Neudesin KOマウスの表現型を分子レベルで説明する一助となることを期待して行う。そこでNeudesin KOマウスの表現型を鑑みて、脂肪組織や副腎、あるいは神経由来の培養細胞を用いて添加実験を行う予定である。
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Research Products
(5 results)