2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔顔面運動神経細胞に入力するコリン作動性C-terminalネットワークの解析
Project/Area Number |
25860152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
松井 利康 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 助教 (90531343)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コリン作動性ニューロン / 介在ニューロン / 脳幹網様体 / 運動ニューロン / 脳神経運動核 / 神経トレーサー / ウイルスベクター |
Research Abstract |
口腔顔面の筋を支配する運動ニューロンはコリン作動性神経終末C-terminalの入力を受けており、その入力は運動ニューロンの活動調節を行うことで口腔顔面運動の制御に関与すると考えられる。一方で、コリン作動性介在ニューロン(C-terminal起始細胞)がどのようにC-terminalを投射するのかについては不明な点が多く、その機能的役割も明らかにされていない。そこで我々はまず、マウス脳幹において運動ニューロンにC-terminalを送る起始細胞の分布を検討するために、順行性トレーサーBDAを用いた神経トレーシングを行った。その結果、C-terminal起始細胞は延髄から橋の大細胞性網様体に分布しており、両側性かつ複数の運動神経核にまたがった投射をもつ可能性が示された。 続いて、C-terminal起始細胞の詳細な形態学的特徴を解析するため、レポーター遺伝子GFPを発現するCre/loxP誘導性アデノウイルスベクターを用いて少数細胞レベルでの可視化を試みた。脳幹網様体のC-terminal起始細胞を理解するためには、類似した細胞集団と考えられる脊髄のC-terminal起始細胞の形態を把握し、比較することが必要である。そこで平成25年度では、脊髄のC-terminal起始細胞(パーティション細胞)ついて上記の手法で可視化を行い、その樹上突起の分枝様式を解析した。その結果、従来は大きな細胞集団として考えられていたパーティション細胞が細胞位置と形態学的特徴に基づいて3群に分類でき、各群に属す細胞はそれぞれ異なる樹上突起分布を持つことが示された。次年度は脊髄での所見を活用して、脳幹網様体におけるC-terminal起始細胞の詳細な形態解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の当初計画では、1)従来の順行性トレーサーを用いたC-terminal投射様式の解析、2)Cre/lox組み換えシステムとウイルスベクターを利用したC-terminal起始細胞の可視化、の2点を予定していた。1)については、脳神経運動核に投射するC-terminal起始細胞の脳幹網様体における分布、C-terminalには複数の脳神経運動核にまたがり同側性に投射する傾向があることを査読付論文として報告することができた(Matsui T., et al., Neuroscience Letters 548: 137-142)。2)については、脳神経運動核にC-terminalを送るコリン作動性ニューロンの可視化および形態解析はまだ実施していないが、今後の解析の基礎的知見となる脊髄のコリン作動性ニューロンの形態学的特徴に関する所見を集めることができた。 また、本来は次年度以降に取り組む予定であった3)C-terminal起始細胞の新規マーカーの探索についても一部取り組んだ。その結果、肝臓や腎臓で発現することが知られている有機カチオントランスポーターOCT2が、C-terminal起始細胞を含めた脊髄のコリン作動性ニューロンに分布することを見出した。この知見は共同研究として、査読付論文で報告している(Nakata T., Matsui T., et al., Neuroscience 252: 212-221)。 以上から、当初の研究計画のとおりおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、コリン作動性ニューロン選択的な標識によるC-terminal投射系の可視化:前年度から継続して、Cre/lox組み換えシステムとウイルスベクターを利用した脳幹網様体のコリン作動性介在ニューロン(C-terminal起始細胞)の可視化を試みる。少数の細胞のみが標識された実験例が得られた際には、単一ニューロンの樹上突起について越切片トレーシングを行い、樹上突起の詳細な分枝様式を解析する予定である。 2、C-terminal起始細胞の新規マーカーの探索:前年度において、脊髄のコリン作動性ニューロンに分布することが明らかにされた新規のアセチルコリン-リサイクリング機能分子OCT2について脳での分布を検討する。また、脳神経運動核でのOCT2局在を明らかにし、脊髄での分布と比較する予定である。 3、C-terminal起始細胞に対する入力の神経化学的性状の解明:C-terminal起始細胞に対する入力の伝達機構を明らかにするため、神経伝達物質マーカーを用いた免疫染色により入力伝達物質を決定する。前年度計画で確立したコリン作動性ニューロン特異的標識法を用いることで、従来の手法では限界があった樹状突起の遠位部への入力についても検討する予定である。発現が見られた受容体はin situハイブリダイゼーション、免疫染色で発現およびその局在を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度計画の2)Cre/lox組み換えシステムとウイルスベクターを利用したC-terminal起始細胞の可視化では、単一のコリン作動性ニューロンに着目して、可視化された神経突起を複数の切片を越えてトレーシングしている。そのため良い実験結果が得られた場合には、神経トレーシングとニューロン全体像の再構築に当初計画よりも時間を使うことになった。それに伴って、注入実験に使うウイルスの全体量、免疫染色に用いる抗体の使用量が少なくなり、次年度使用額が生じた。 平成26年度で計画する3)C-terminal起始細胞に対する入力の神経化学的性状の解明では、様々な神経伝達物質に関する抗体を利用して研究を進める必要がある。したがって、本計画の実施に必要な抗体購入に使用する予定である。
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