2013 Fiscal Year Research-status Report
3次元空間イメージングによる肺静脈心筋自発活動の発生および伝播機序の解明
Project/Area Number |
25860194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
行方 衣由紀 東邦大学, 薬学部, 講師 (30510309)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自発活動 / 肺静脈心筋 / イメージング / 心房細動 |
Research Abstract |
肺静脈心筋は電気的に不安定であり自発活動を示すことが知られている。肺静脈での異常な電気的興奮が心臓に伝わると心房細動などの不整脈になることが示されており、肺静脈の性質を明らかにすることは重要である。本研究の目的は、この肺静脈の電気的自発活動に焦点を当て、組織の立体構造を保持した肺静脈標本に高速3次元共焦点顕微鏡法を適用し、細胞から組織レベルまでの総合的視点から、自発活動の発生および伝播機序を解明することである。 今年度は肺静脈標本の2次元空間イメージング法を確立し、自発活動を捉えるため、本実験で使用する動物種の検討を行った。 マウス肺静脈摘出標本を組織染色した結果、肺静脈自体の厚さが100ミクロン程度、さらに心筋層はおよそ30ミクロン程度であることがわかり、顕微鏡観察に適している可能性が示唆された。 マウス肺静脈摘出組織標本の心筋層にガラス微小電極を刺入し、電気活動を記録した。約半分の標本で自発的電気活動が見られ、連続発火、バースト状の間欠的な発火の両方が見られた。発火頻度をnoradrenalineは増大させ、acetylcholineは減少させた。自発的電気活動が見られない標本に1Hzの電気刺激を加えると、活動電位が発生した。肺静脈心筋の静止膜電位は心房筋に比べて浅いものであった。自発的電気活動が見られない標本にnoradrenalineを作用させると静止膜電位の脱分極方向あるいは過分極方向へのシフトが見られ、続いて自発活動が誘発された。この自発活動に対してacetylcholineおよびadenosineは抑制効果を示した。これらの結果から、マウス肺静脈心筋では多様な自発活動が見られること、それが自律神経伝達物質により影響を受けることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点までに、マウスの肺静脈心筋標本が顕微鏡観察に適している可能性が示唆された。実際、マウス肺静脈摘出標本は顕微鏡観察の至適範囲内の厚さであり、かつ微小電極法による電気的自発活動の観察が可能であった。また組織構造を保ったまま、肺静脈心筋内にカルシウム蛍光プローブを導入した結果、カルシウムオシレーションを2次元スキャンで捉えることに成功した。 現在は、高速スキャン顕微鏡の導入を試みており、ミリ秒単位で変動する心筋細胞の膜電位やカルシウムのオシレーションを捉えることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
肺静脈には心筋、血管平滑筋、結合組織などが複雑に存在するため、蛍光プローブを各組織に均一に導入するためのさらなる工夫が必要であり、それに伴った適切なプローブの選定、濃度、導入法の最適化が重要である。 さらにこのイメージング技術を応用し、組織レベルでの膜電位やカルシウムのオシレーションの伝播を3次元空間的に捉えることを目指す。また実験系に薬理学的手法を取り入れ、肺静脈自動能に関与する分子(イオンチャネルなど)を見出す。これまでガラス微小電極法によって効果が認められたナトリウム/カルシウム交換機構阻害薬やT型カルシウムチャネル阻害薬、筋小胞体のカルシウム放出阻害薬等を適用し、自発活動発生の原因となる機能分子を明らかにする。さらに組織レベルの検討においては、免疫組織学的手法を加え、その分子の存在部位や比率を3次元空間的に解析し、自発活動の発生頻度との相関を取ることで、自発活動の易発生部位とその機序を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(19 results)