2013 Fiscal Year Research-status Report
TSLP応答性樹状細胞が表皮の性状変化に及ぼす影響
Project/Area Number |
25860369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
大森 深雪 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30462667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | TSLP / 樹状細胞 |
Research Abstract |
本研究では、アトピー性皮膚炎(AD)の悪化因子であるサイトカインTSLPに応答性の皮膚局在型樹状細胞を介した作用に着目し、AD病変皮膚において皮膚恒常性の破綻の引き金となる2型ヘルパーT(Th2)細胞由来サイトカインの産生誘導機構およびそれらが表皮の性状変化で果たす役割を明らかにすることに焦点を絞って、表皮におけるTSLPの高発現がもたらすAD様皮膚病態の成り立ちについて検証することを目的としている。 2013年度は、TSLPの標的となる樹状細胞サブセットの同定を行った。本研究では、皮膚特異的なTSLPの産生を誘導できる遺伝子改変マウス(K5-TSLP Tgマウス)を用いている。K5-TSLP Tgマウスでは、テトラサイクリンのアナログであるドキシサイクリンの投与により濃度依存的に皮膚特異的TSLP発現を誘導できるが、TSLP応答性の樹状細胞サブセットを同定するために、ドキシサイクリン投与以降の経時的な樹状細胞サブセットの存在頻度の追跡を行った。ADにおける時空間的な免疫反応を考察するにあたり、病変部である皮膚、皮膚の所属リンパ節、2次リンパ節である脾臓を対象に解析を行った。その結果、ドキシサイクリンの投与後早期に反応する皮膚由来の樹状細胞サブセットと、比較的時間が経過した後に反応するサブセットが存在することが明らかとなった。これらの樹状細胞サブセットにおけるTSLP応答時の性状変化を解析するためには、セルソーターを用いた細胞の純化と細胞数の確保が必須である。K5-TSLP Tgマウスを用いた標的細胞サブセットの調整が本研究の目的のための実験アプローチとして至適であるか否かも含めて、現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、初年度研究計画として、(1)TSLPの標的となる皮膚に局在する樹状細胞サブセットの同定と作用機序、(2)TSLP応答により起こる樹状細胞サブセットの性状解析を設定した。(1)の一部は終了し、(2)は解析に用いる細胞調整をいかなる実験アプローチで行うのが至適かについての検討段階である。本年度以降の研究計画として、(3)TSLPに感作された樹状細胞サブセットによるTh2細胞の分化誘導を調節する因子の探索、(4)TSLP応答性樹状細胞により分化したTh2細胞が産生するサイトカインのプロファイリング、(5)(4)のサイトカインが表皮ケラチノサイトに及ぼす影響を予定していたが、(1)の未施行な項目と、(3)から(5)の項目は、(2)の最適な実験アプローチの検討が終了した段階から施行可能な状況となる。現在までの研究の進度については、上述の状況に加えて、前採択研究の発展研究として施行している“Th2細胞由来サイトカイン(IL-4, IL-13)が表皮ケラチノサイトに及ぼす影響とその機序”について新たな実験結果も得られていることから、総合的には概ね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究の今後の推進において、鍵のひとつとなるのが現在検討段階である“セルソーターを用いた細胞の純化と細胞数の確保”である。樹状細胞はリンパ球とは異なり存在頻度が低く、存在する部位や機能により様々なサブセットに分類できる細胞であるが故に、解析に用いるための十分な細胞数を準備するための適した実験手法の選定が重要である。K5-TSLP Tgマウスを用いた手法もひとつの候補であるが、他にもTSLP依存的なADの実験モデルは複数報告されている。よって、本年度はその検討を最優先で行い、追随する研究を順次推進することとする。 また、“Th2細胞由来サイトカインの表皮ケラチノサイト性状に及ぼす影響”に関する研究計画では、前採択研究で扱ったため、Th2サイトカイン(IL-4, IL-13, IL-5)を対象外として申請時は記載したが、(1)IL-4, IL-13, IL-5はTh2細胞が主たる産生ソースでありAD病態を特徴づける代表的なサイトカインであること、(2)前採択研究の発展研究で新たな実験結果が得られたことから、IL-4, IL-13, IL-5も含めて本研究の一部として研究を施行していくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前採択研究関連の論文(J Invest Dermatol 134: 1342-1350、advance online publication, December 19, 2013)の改稿作業などを行った影響で、現採択研究に関連した新たな実験に取り組む時間が限られていたため。 初年度に取り組む予定であった新しい実験系に積極的に取り組み、本研究の鍵となる実験系の最適化を最優先で行い、研究を推進させる予定である。
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