2014 Fiscal Year Research-status Report
TSLP応答性樹状細胞が表皮の性状変化に及ぼす影響
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25860369
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
大森 深雪 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30462667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | TSLP / 樹状細胞 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アトピー性皮膚炎の病変表皮で高発現を呈するサイトカインTSLPの皮膚樹状細胞を介した作用に着目し、Th2細胞分化と皮膚病態構築の背景にある分子機序の解明を目的としている。 2014年度はTSLP応答性の複数の樹状細胞サブセットの純化を試みた。表皮特異的なTSLPの高発現を誘導できるK5-TSLP遺伝子(Tg)改変マウスでは、ドキシサイクリンの飲料水投与によりTSLPの発現を調節できるが、投与2週間以降では血中にTSLPが検出されるため、皮膚に局在する樹状細胞へのTSLPの作用を解析するには不適と判断し、ドキシサイクリン投与1週間以内で一連の解析を行うこととした。また、Tgマウス以外にもTSLP依存的なTh2型のアレルギー性皮膚炎実験モデルが報告されているため、別の実験モデルにおけるTSLP応答性樹状細胞サブセットの解析の可能性も含めて検討してきた。これらの実験モデルでは、誘導されるTSLPの発現そのものが比較的低いため、現段階では効率的にTSLP応答性樹状細胞サブセットを調整することは難しいという見解を得ている。 さらに、希少である皮膚樹状細胞サブセットの適切な純化方法についても検討した。表皮におけるTSLP高発現下の表皮・真皮・皮膚所属リンパ節から調整した細胞におけるTSLP応答性皮膚樹状細胞を解析したところ、数として最も皮膚樹状細胞を効率的に回収できるのは皮膚所属リンパ節であることが分かった。また、磁気分離では分離した細胞の純度が十分でなく、昨年度末導入されたセルソーターを用いるのが最適という結論を得た。 昨年度から方針を一部変更したTh2細胞由来サイトカインの表皮ケラチノサイト性状に及ぼす影響に関する研究計画については、IL-4あるいはIL-13により誘導される転写因子が新たに同定され、現在、表皮ケラチノサイトの性状変化にどのように影響するかについて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)TSLPの標的となる皮膚局在型の樹状細胞サブセットの同定と作用機序、(2)TSLP応答による樹状細胞サブセットの性状変化、(3)TSLPによって感作された樹状細胞サブセットによるTh2細胞分化を調節する因子の探索、(4)TSLPにより分化したTh2細胞由来サイトカインのプロファイリング、(5)Th2細胞由来サイトカインが表皮ケラチノサイトの性状におよぼす影響ついて検討する初期計画となっている。 2014年度は、TSLPに応答する皮膚樹状細胞サブセットの調整および純化の方法について検討を終えた。本年度は純化した樹状細胞サブセットを用いて、(1)~(4)についての解析が可能となった。また、(5)については、Th2細胞由来サイトカインにより表皮ケラチノサイトの性状変化に関わる転写因子が複数同定された。現在、それらの転写因子がどのように表皮ケラチノサイトの性状を調節するのかについて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、最優先で行ってきたTSLP応答性皮膚樹状細胞サブセットを最も効率的に調整する実験系としては、現段階ではドキシサイクリン投与下のK5-TSLP Tgマウスを用いるのが最適という結論を得ている。また、希少サブセットである皮膚樹状細胞の純化にはセルソーターの使用が必須である。本年度は、セルソーターを用いて純化したK5-TSLP Tgマウス由来皮膚樹状細胞を中心にして、TSLPの感作により皮膚樹状細胞サブセットでどのような性状変化が起こるのかについてリアルタイムPCR、ELISA、抗体アレイ、RNAシークエンスなどを用いて明らかにする。また、TSLP受容体欠損マウスと掛け合わせたOVA抗原特異的TCR Tgマウス(DO11.10+ TSLPR-/-マウス)の準備は整っているため、純化したTSLP応答性皮膚樹状細胞サブセットとTSLP受容体欠損ヘルパーT細胞の共培養により、Th2細胞への分化がいかに調節されるのかについてRNAシークエンス、リアルタイムPCR、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーなどを用いて明らかにする。さらに、TSLP応答性の皮膚樹状細胞のサブセットを解析するツールとして、現在は4種の表面マーカーを用いて分類しているが、より詳細なサブセットの分類には6種以上の表面マーカーによる分類が必要となる可能性がある。本年度から渡会浩志博士(東京大学医科学研究所)の協力を得て、さらなる分類の可能性について検討していきたい。
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Causes of Carryover |
樹状細胞サブセットを純化するセルソーター(学内共通機器)の導入が予想より遅れたため、セルソーター関連の消耗品購入を2015年度に残したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
セルソーター関連消耗品などの購入に充てる。
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