2014 Fiscal Year Research-status Report
黄砂による健康影響の東アジア地域における地理的差異の解明
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25860462
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鹿嶋 小緒里 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (30581699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気汚染 / 黄砂 / 循環器系疾患 / 呼吸器系疾患 / 救急搬送 / 死亡 / 健康影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度に入手した対象都市の各種データセットを用いて、黄砂の直接的な健康への影響評価と、間接的(効果修飾要因)な影響評価を実施した。まず、前年度に整備した、岡山市の救急搬送データを利用して、黄砂の健康(全疾患、循環器系と呼吸器系疾患発症)への直接的影響と効果修飾的影響の2つの側面を検討した。結果として、黄砂と救急搬送の関係は、交通由来の大気汚染物質(浮遊粒子状物質)と独立して観測された。黄砂の四分位範囲の増加により、イベント日より3日後で、全疾患の相対危険度が1.012 (95% CI: 1.004, 1.021)、循環器疾患が1.021 (95% CI: 1.002, 1.039)、呼吸器系疾患が1.026 (95% CI: 1.003, 1.050) であった。また、黄砂が多い日では、浮遊粒子状物質の増加による救急搬送の相対危険度は、循環器系疾患が1.299 (95% CI: 1.071, 1.576) であったが、このリスクの増加は、黄砂がない日では観測されなかった。このように、黄砂は、全疾患、循環器系疾患、呼吸器系の疾患発生に影響をもたらし、浮遊粒子状物質の循環器系疾患への影響を効果修飾することが示唆された。 本研究の一部は、第26回国際環境疫学会年次総会(アメリカ)とアジア地域総会(上海)で、発表を行い、世界の大気汚染研究者と相互に、アジアの知見について議論した。また、国際誌にも投稿した(Kashima et al., J Occup Environ Med. 2014)。次に、黄砂の死亡への直接的な影響を、ソウル(韓国)と日本でそれぞれ解析を試みた。その健康影響評価の分析において、各都市間のデータの整合性で一部不一致(死因状況)が発生し、データの再取得を実施した。よってメイン解析の行程が一部遅れ、現在も引き続き黄砂の直接的影響評価を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目標であった、黄砂の健康(全疾患、循環器系と呼吸器系疾患発症)への直接的影響と効果修飾的影響の2つの側面を検討については、データ解析を完了することができ、その結果を論文としてまとめ、国際誌へ掲載し、アジアの研究者と知見を共有することができた。よって、この解析部分に関しては、予定通りに進行し、研究目標の一つ目は達成することができた。 次に本研究の2つ目の目標である、“ソウル(韓国)と日本の都市において黄砂の死亡への影響が異なるか”についての解析については、上の概要で記載したとおり、その分析において各都市間のデータの整合性で、一部死因別死亡の定義が、ソウルと日本のデータ間で不一致が発生した。そこで、日本側データの再取得を行い、心疾患や、脳血管疾患などの死因別死亡データを、ソウルと日本でICD-10に基づき死因を再分類し、データセットを再作成した。平成26年度中にデータセットの作成作業は完了したが、メイン解析の行程が遅れを生じ、解析の一部作業が、平成27年度へ持ち越しとなった。そのため現在も引き続き黄砂の直接的影響評価を実施している。よって、平成27年度の研究期間の延長を申請し、日本学術振興会より承認を得た。これら解析作業の一部遅延により、平成26年度に購入予定だった解析ソフトなどの予算を一部、平成27年度に持ち越した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度より繰り越した、“ソウルと日本の都市において黄砂の健康への影響に差異があるのか”についての課題に取り組む。そのため、厚生労働省より入手した死亡個票に関して、目的外データ利用の平成27年度の延長申請を現在行っている。また、メイン解析を実施するにあたり、平成26年度に購入予定であった解析ソフトの購入を平成27年度に予定している。ソウルと日本における、黄砂の直接的な影響評価に関しては、解析の具体的内容については研究デザインおよび、利用する変数の定義の議論は確定しており、本報告書作成時にも、引き続き解析作業を進めている。 それら解析結果がすべて出た後に、共同研究者と国際学会において、研究成果の共有および、国際誌への論文としての投稿を予定しており、現在その進行も進めている。これら、研究期間全体を通して得た研究成果をもとに、共同研究者とさらに議論を行い、アジア地域における黄砂の健康への影響評価の最終成果を、平成27年度にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に購入予定としていた当該研究の解析に利用するソフトとデータについて、解析作業が平成27年度へ繰り越したため、一部購入を平成27年度前半へ持ち越した。また、研究打ち合わせに係る旅費および、論文投稿にかかる費用を平成27年度後半へ持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費は、当該研究で必要となるソフトウェアと、データの購入と、研究打ち合わせによる国内旅費、国際学会発表のための海外渡航費をはじめ、成果報告を発表するための論文の英文校正代として利用する予定である。さらに平成26年度よリ、ー部持ち越した解析ソフトと、データの購入を平成27年度前半に予定している。
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Research Products
(10 results)