2013 Fiscal Year Research-status Report
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25860684
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
木津 あかね 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30623201)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎線維化 / DNA修復 / DNA損傷 |
Research Abstract |
DNA損傷に対し、生体は、ゲノムの安定性を保つための様々なDNA修復機構を持つ。DNA修復遺伝子の異常をもつ遺伝子疾患のひとつに早老症が挙げられることより、DNA損傷とその修復機構は、線維化などの老化関連疾患に重要であると考えられる。しかし、臓器線維化の発症進展過程において、DNA損傷や修復遺伝子の発現動態を検討した報告はなく、病態制御の機序は明らかでない。本研究では、腎線維化病変におけるDNA損傷とDNA修復遺伝子の関連を検討し、さらにDNA修復遺伝子欠損マウスを用いて腎線維化モデルを作製し、DNA修復機構障害の腎線維化の発症進行への影響を検討した。 初年度の今年は、一側尿管結紮(Unilateral Ureteral Obstruction; UUO)によるマウス腎間質線維化モデルを作製し、線維化の程度とDNA損傷との関連について免疫組織学的、ウェスタンブロッティング法にて検討した。UUO腎では、対照腎に比べて腎間質のIII型コラーゲンの蓄積と筋線維芽細胞マーカーであるαSMAの発現増加を認めた。また、UUO腎において、DNA損傷の指標であるリン酸化ヒストンH2AXの発現増加を認め、線維化病変部位にDNA損傷が存在することが示された。さらに、DNA修復機構の腎線維化の発症進展への影響を明らかにするために、DNA修復遺伝子欠損マウスの繁殖を行い、それらのマウスを用いて、一側尿管結紮モデルを作製し線維化の程度についての解析をおこなった。野生型マウスに比べて、ヘテロ型とノックアウト型のマウスの腎臓では、腎間質線維化の程度の減少を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、一側尿管結紮を行い、マウス腎間質線維化モデルを作製し、腎線維化病変の進行におけるDNA損傷とDNA修復因子の関連について、免疫組織学的ならびにウエスタンブロット法で検討することと、DNA修復関連遺伝子欠損マウスでの線維化の程度への影響の解析を行うことであった。マウス腎間質線維化モデルは確立することができ、尿管結紮後7日、10日、14日目で腎組織の採取をおこない、DNA損傷因子について免疫組織学法による検討ができた。一部のDNA修復因子については染色条件の検討中であり次年度も引き続き解析する。さらに、DNA修復遺伝子欠損マウスの繁殖をおこない、野生型、ヘテロ型とノックアウト型の各群(n=3~4)にて一側尿管結紮モデルを作製し、腎線維化の程度を検討することができた。より詳細な解析のため筋線維芽細胞や炎症細胞数の解析を引き続きおこなう。以上より、研究はおおむね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、DNA修復因子の低下により腎間質線維化抑制効果が得られる機序を検討するため、マウス腎間質線維化モデルを用いて、引き続きより詳細な解析を行う。炎症細胞や筋線維芽細胞の細胞数を野生型と比べるほか、線維化に関わる転写因子について、mRNA レベルでの発現量の変化をReal time PCR法を用いて検討する。また、in vitroでの実験系を確立するため、遺伝子改変マウスより胚性線維芽細胞(MEF)を初期培養し、線維化誘導因子の添加を行い、I型・III型コラーゲンの産生や筋線維芽細胞マーカーの発現量の変化について野生型との比較検討を行い、DNA修復機構の線維化に及ぼす分子機序を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験物品の調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたために、差額が生じた。また、一部の抗体については、免疫組織学的検査の条件検討のため、数種類の抗体をサイズが小さい量で購入しており、条件が確立してから実験に必要な量を購入することとなっため、購入時期がずれたため。 一側尿管結紮による腎間質線維化モデルを用いて、より詳細な解析を行うため、複数のDNA損傷修復因子の発現の検討を加え、線維化病変部に浸潤する免疫細胞数や筋線維芽細胞数を解析する。また、in vitroでは、マウス胚性線維芽細胞を作製し、線維化誘導因子の添加を行い、線維化に関与するDNA修復関連因子の分子機序の検討を行う。次年度使用額として336,389円を繰り越しているが、上記のin vivoとin vitroの実験の遂行に使用を予定している。
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