2014 Fiscal Year Research-status Report
9.4T 高磁場MRSによる脳性麻痺に対する臍帯血移植の損傷脳回復機構の解明
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25860912
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
王 飛霏 高知大学, 教育研究部 医療学系, 助教 (10629033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳性麻痺 / 臍帯血幹細胞 / MRS |
Outline of Annual Research Achievements |
高知大学では、『脳性麻痺に対する自己臍帯血幹細胞移植の臨床研究』が進められている。本研究では、9.4T H-MRSを用いて新生仔脳虚血・再灌流障害モデルマウスに対するヒト臍帯血移植による神経再生メカニズムを明らかにすることを目的とした。 生後9日後のNOD/SCIDマウスを用いて、従来のLevine's modelよりも臨床像に近い新生仔脳虚血・再灌流障害モデルマウスを作製した。Levine's modelでは、一側の頸動脈を結紮・切断するが、我々はクリップにより血流を一時遮断し低酸素下にて一定時間置いた後に再灌流を行った。このようにして作製したモデルマウスは、MRIのT2強調画像では大脳皮質から線条体にかけて顕著な虚血性病変を認めた。 ヒト臍帯血細胞の移植はQ-Dotにてラベリングを行った後、尾静脈投与した。臍帯血移植を行ったモデルマウス群では、行動学的評価のWire hanging testにて移植2週間後に改善傾向を示した。 前年度、正常マウスを用いてH-MRS測定(PRESS法)を行い、神経活動の指標となるN-アセチルアスパラギン酸(2.02ppm)、クレアチン(3.00ppm)、コリン(3.20ppm)のピークを観測することに成功した。今年度は、新生仔脳虚血・再灌流障害モデルマウスを用いてH-MRS測定を行ったところ、正常マウスでは見られない乳酸のピークが1.92ppmに認められ、同時にN-アセチルアスパラギン酸のピークの減少も確認された。さらに行動学的評価と乳酸値の上昇、N-アセチルアスパラギン酸の減少には相関性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、脳性麻痺モデルマウスとして新生仔脳虚血・再灌流障害モデルマウスを高い再現性で作製することが可能となった。 このモデルマウス脳のMRS測定を行い、N-アセチルアスパラギン酸や乳酸のピーク値と行動学的評価のスコアとの相関関係を認めた。 また、これまではMRS測定中に装置内でマウスが死亡することが問題点であったが、装置内温風装置によりマウスの体温を一定に保温することが可能となり、生存率が大幅に向上した。本研究で明らかにしたい点の一つであった脳障害前後での脳代謝物の変化については、一定の成果を得ている。よって、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
移植したヒト臍帯血の局在を明らかにするため、マウスの脳切片でヒト特異的抗原(human CD45,HLA-ABC)に対する免疫染色を行ったが検出することができなかった。今後はウィルスベクターを用いた蛍光タンパク遺伝子の導入などの方法を検討していく。 研究内容としては、マウス脳のMRSで内在性神経幹細胞のピーク(1.28ppm)を捉え評価することと、臍帯血移植後の測定を行う。また、従来のMRSでは検出困難であったγ-アミノ酸やグルタチオンといった代謝物の検出も試みる。そして、臍帯血移植治療の前後での脳代謝物の変化と神経新生を明らかにしていく予定である。
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