2015 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニルストレス関連分子をバイオマーカーとした統合失調症の病態解明
Project/Area Number |
25861040
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
宮下 光弘 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主席研究員 (60532132)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カルボニルストレス / ペントシジン / ビタミンB6 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病、腎機能障害を除外した上で、年齢を調整した統合失調症156名、健常者221名でカルボニルストレス亢進の再現性を検証した。その結果、健常群と比較して患者群では、血漿ペントシジン濃度の有意な上昇、血清ビタミンB6濃度の有意な低下を認めた。以上から、一部の統合失調症におけるカルボニルストレスの亢進は再現性の高い現象であり、ペントシジンのバイオマーカーとしての有用性が改めて実証された。また、カルボニルストレスを呈する患者群では、カルボニルストレスの無い患者群と比較して、「入院患者の割合が高い」、「入院期間が4.2倍と長期に及ぶ」、「抗精神病薬の量が多い」という特徴を明らかにした。この特徴はKaneらが定義する治療抵抗性統合失調症の特徴に類似していると考えられた。さらにPANSS面接の同意が得られた49名の患者群で、年齢、抗精神病薬投与量、治療環境(入院・外来)などの交絡因子を独立変数として組み入れた上で、ペントシジン、ビタミンB6とPANSSスコアとの関連を多重回帰分析で検討した。その結果、PANSSのトータルスコア、陽性症状スコア、総合精神病理スコアにおいて、ビタミンB6が独立した負の相関因子であり得ることも見出した。現在、治療抵抗性統合失調症に対して科学的根拠を有する有効な治療薬は、クロザピンだけである。しかしながら、無顆粒球症や糖代謝異常など致死的な副作用を生じることが稀ではない。本研究の成果は、治療抵抗性統合失調症におけるビタミンB6の治療が、安全かつ有効な治療法となる可能性を示唆している。最後に、採血時に入院していた患者74名を対象に、退院の可否を調査した。前向き調査の結果、採血時にペントシジンが正常であった群と比較して、ペントシジン高値群では、退院できなかった患者の割合が2.7倍に達すること見出した (p=.0083, Fisher’s Exact test)。
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Research Products
(5 results)