2013 Fiscal Year Research-status Report
抗TNF-a抗体の発癌に与える影響 -大腸癌を抑制する?-
Project/Area Number |
25861169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽根田 祥 東北大学, 大学病院, 助教 (20436140)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クローン病 / 抗TNF-a抗体 |
Research Abstract |
原因不明の慢性炎症疾患であるクローン病には根治治療法はいまだない。抗TNF-a抗体製剤や副腎皮質ステロイド剤、5-ASA製剤などの抗炎症薬をはじめとする薬物治療で寛解状態をなるべく維持し、悪化時には手術療法を行って治療していく。 クローン病患者における大腸癌の発生は、一般に比べて高率である。慢性炎症が発癌に関与することはよく知られており、それには種々の炎症性サイトカインが作用すると言われているが、炎症性発癌のメカニズムはいまだ不明な点も多い。 抗TNF-a抗体はクローン病に頻用されているが、抗TNF-a抗体が癌の発生や進展に関与する可能性が以前から指摘されている。抗TNF-a抗体と種々の癌発生に関してはこれまで多くの研究がなされているが、抗TNF-a抗体が発癌のリスクであるとするものと、逆に発癌を抑えるとするものとがみられ、結論は出ていない。 本研究では、抗TNF-a抗体の大腸癌に対する作用を解明することを目的としており、発癌を抑制することが証明できれば今後の臨床応用に役立てるデータとなると考えている。 平成25年度は大腸癌細胞株を用いた研究から抗TNF-a抗体が大腸癌細胞株の増殖能に対して及ぼす影響をin vitroの系を用いて検証する実験を行った。3種の大腸癌細胞株を腫瘍増殖抑制因子であるTNF-aで刺激した。細胞増殖能を吸光度を測定する系であるCCK-8を用いて測定した。3種の大腸癌細胞株ともTNF-aにより細胞増殖の減少がみられた。次にTNF-aに加えて抗TNF-a抗体で細胞株を同時に刺激してみると抗TNF-a抗体を加えることにより細胞増殖の増加がみられた。このことは、in vitroでは抗TNF-a抗体はTNF-aによる大腸癌細胞株増殖の抑制を抑えることにより、増殖を促進する作用があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定ではまず25年度中に大腸癌細胞株に抗TNF-a抗体を刺激したin vitroの実験を行い、抗TNF-a抗体により変化が見られた細胞株を選択。その細胞株をマウスに移植して抗TNF-a抗体を実際にマウスに投与し、大腸癌細胞株の増殖能が生体内で抗TNF-a抗体によりどのように変化するかを検討するin vivoの実験系をも開始する予定であった。 昨年度はin vitroの実験系の構築・予備実験および動物実験の準備の準備に思いのほか時間がかかってしまい、予定よりやや遅れるという結果になってしまった。しかし、大腸癌細胞株を用いた実験はある程度進ませることができ、動物実験も準備が完了して予備実験を開始できる状態にはなっているためまずまず進行したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌細胞株を用いたin vitroの実験をさらに続け、適切な大腸癌細胞株を2~3種選択する。 当初の計画通りマウスを用いた動物実験を行っていく予定である。すなわち、選択した大腸癌細胞株をマウスに皮下移植し、移植した細胞株が腫瘍増殖する指摘条件を検討する。抗TNF-a抗体投与群と非投与群にわけ、腫瘍増殖がはっきり見られるようになった時期(おおむね30日前後と推測される。検討後に決定する)に移植した癌の進展に差が生じるかどうかを調べる実験を行っていく。
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