2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト口蓋扁桃におけるインフラマソーム活性化機構の解析
Project/Area Number |
25861575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
高野 賢一 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70404689)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒト扁桃疾患 / インフラマソーム / 扁桃癌 |
Research Abstract |
ヒト口蓋扁桃は生体防御を担う重要な免疫装置であるが,発達した陰窩構造を有し,容易に感染のターゲットとなり,かつヒトパピローマウイルスに関連した中咽頭癌の発生母地となる。口蓋扁桃におけるインフラマソームの活性化機構は,まったくわかっていない。そこで まず今年度は,正常扁桃と扁桃癌におけるインフラマソーム関連分子の発現パターンについて,p16 statusも含めて検討した。その結果,扁桃癌においてNLRP3,ASC,IL-1beta,IL-18およびCaspase-1の高発現が認められ,腫瘍由来IL-1betaが腫瘍増殖および再発を抑制するという報告や,NLRP3インフラマソームがシスプラチン製剤に反応しCaspase-1活性化およびIL-1beta産生を促すという報告などと合わせ,インフラマソーム関連分子,特にIL-1betaと扁桃癌に対する抗腫瘍効果との関連が推測された。扁桃癌はHPVと関連腫瘍と位置づけられるが,今回検討したインフラマソーム関連分子の発現はp16 statusとの有意な相関関係はなく,これらの分子発現はHPVによる刺激経路とは無関係と思われた。今後はDNAウイルスセンサーであるAIMとの関連を検討していく予定である。さらに,細胞増殖マーカーであるMIB-1との関連も検討したところ,扁桃癌細胞においてほぼ瀰漫性にMIB-1の発現上昇が認められたものの,インフラマソーム関連分子とは発現分布が大きく異なった。一方でインフラマソーム関連分子は癌細胞浸潤面でより強い発現が認められた。インフラマソームの抗腫瘍活性はまだまだ不明な点が多く,さらに検討を進めていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常扁桃と扁桃癌におけるインフラマソーム関連分子の発現パターンについて,p16 statusも含めて検討し,結果として,(1)扁桃癌においてNLRP3,ASC,IL-1beta,IL-18およびCaspase-1の高発現が認められ,インフラマソーム関連分子,特にIL-1betaと扁桃癌に対する抗腫瘍効果との関連が推測された。(2)扁桃癌はHPVと関連腫瘍と位置づけられるが,今回検討したインフラマソーム関連分子の発現はp16 statusとの有意な相関関係はなく,これらの分子発現はHPVによる刺激経路とは無関係と思われた。今後はDNAウイルスセンサーであるAIMとの関連を検討していく予定である。(3)細胞増殖マーカーであるMIB-1との関連も検討したところ,扁桃癌細胞においてほぼ瀰漫性にMIB-1の発現上昇が認められたものの,インフラマソーム関連分子とは発現分布が大きく異なった。一方でインフラマソーム関連分子は癌細胞浸潤面でより強い発現が認められた。 以上の結果に関しては,国際学会であるThe 8th International Symposium on Tonsils and Mucosal Barriers of the Upper Airways(ISTMB)において,ヒトパピローマウイルス関連および非関連扁桃癌におけるinflammasome関連分子の発現検討結果として,演題名「Inflammasomes in Oropharyngeal Cancer」を発表し,海外の研究者より評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで扁桃癌を中心にインフラマソーム関連分子の発現や発現パターンに関して,主として組織を用いた検討を行ってきた。今後はさらにヒト口蓋扁桃組織(癌,炎症性疾患)を用いて,インフラマソームに関連する因子であるカスパーゼ-1,NLRP3,ASC,pro-IL-1β,pro-IL-18,IL-1β,IL-18の発現を,mRNAレベル,蛋白レベル,免疫組織学的および血清学的に精査を加える。これらは臨床所見と照らし合わせて相関などを検討する。In vivoでの結果をふまえ,In vitroではヒト口蓋扁桃および患者末梢血由来単核球を培養し,各種インヒビターや菌体由来成分,炎症性サイトカインを処置し,カスパーゼ-1やNLRP3をはじめとするインフラマソーム関連因子の発現と,IL-1βおよびIL-18の分泌産生を調べ,インフラマソームが活性化される分子機構および情報伝達系を明らかにする。疾患別に扁桃組織および患者末梢血から分離した単核球をin vitroで培養する。複数の細菌由来の菌体成分(LPSやCpG-ODNなど)で刺激し,NLRP3の活性化やカスパーゼ-1,IL-1β,IL-18の発現について,mRNAレベルおよびELISA法を用いて解析する。さらに各種インヒビターや炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1など)を処置し,炎症性転写調節因子(NF-kBなど)の発現変化をみる予定である。 これらの検討から,インフラマソーム情報伝達系を明らかにし,活性化阻害機構を標的とした創薬につながる基礎的知見を得ることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
品薄のため物品請求を次年度に行うこととしたため,次年度の計画に計上することとしたため。 培養関連試薬の購入に充てる予定である。
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[Journal Article] Regulation of tight junctions in upper airway epithelium.2013
Author(s)
Kojima T, Go M, Takano K, Kurose M, Ohkuni T, Koizumi J, Kamekura R, Ogasawara N, Masaki T, Fuchimoto J, Obata K, Hirakawa S, Nomura K, Keira T, Miyata R, Fujii N, Tsutsumi H, Himi T, Sawada N
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Journal Title
Biomed Res Int
Volume: 2013
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed
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