2014 Fiscal Year Research-status Report
移植軟骨を軟骨膜様細胞へ分化・誘導させる新規因子の探索
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25861712
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
力丸 由起子(西由起子) 久留米大学, 医学部, 助教 (90368960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 軟骨 / 組織移植 / 形成外科 / GFP transgenic rat / FIB/SEM tomography / 三次元構造解析 / 線維芽細胞 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨膜を除去した状態で、軟骨組織を生体内に移植しても、長期間、軟骨組織は吸収されることなく形態は維持されるが、その仕組みについてはわかっていない。H25年度は移植した軟骨が生体内で維持されるために必要な、軟骨周囲に軟骨膜様組織を生じさせる分化・誘導因子を探索した。GFP transgenic ratおよびwild ratを用いて、軟骨の異種移植を行ない次の4つの実験結果を得た。① 軟骨膜を除去した移植軟骨では、時間の経過とともに軟骨周囲にrecipient由来の線維芽様細胞が集まること。②移植軟骨実質内にrecipient由来の軟骨細胞が出現すること。③移植軟骨周囲には軟骨膜様組織が形成され、これがおそらくは移植軟骨の維持に関わっていること。④しかも、この軟骨膜様細胞はrecipientの細胞に由来するが、軟骨実質との相互作用によって形成されること。また、軟骨組織周囲に分化・誘導される軟骨膜様組織を確認する方法として、次の2つを行なった。 a、顕微鏡を使っての組織切片の観察 b、I型コラーゲンの組織染色での確認 a では軟骨部分を明瞭に染色するために組織サンプルをトルイジンブルーにて染色し、直接顕微鏡で観察して、軟骨細胞の周囲に軟骨膜様組織の形成を確認した。また、DAPI染色を行い、GFP陽性細胞と陰性細胞の配置および分布を確認した。さらに、微細構造を3次元的に解析可能な電子顕微鏡観察(FIB/SEM tomography)を行い、移植軟骨周囲に形成された軟骨膜様組織と本来の軟骨膜組織との細胞レベルでの比較を行った。 b ではI型コラーゲンは軟骨膜マーカーとして、II型コラーゲンは軟骨細胞のマーカーであるので、I型コラーゲン線維の染色によって周囲組織が軟骨膜様組織であることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度予定の異なる系統のラットを用いた移植実験はおおむね順調に進展しており、実験結果についても十分なn数を確保している。また、実験計画の一部である、軟骨細胞の培養アッセイ系の確立および軟骨細胞と線維芽細胞の共培養によるアッセイについては培養方法のtechnicalな問題を完全にクリアできていないため、いくつかの問題点が残されている。しかし、プロジェクトと並行して更なる改善を行っている。 現在出ている結果に対しては、学会にて成果発表を行い、現在論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様、実験動物として用いるラットの購入と維持費、FIB/SEM使用ときの消耗品購入のための経費が基本的に必要となる。現 在、蛍光標識による免疫染色との比較も行っているため、免疫染色のための抗体等試薬の購入が必要となってくる。今後は前年度の実験計画で完遂していない軟骨細胞の培養アッセイ系の確立および軟骨細胞と線維芽細胞の共培養によるアッセイと平行して、データベースから軟骨細胞に発現している増殖因子や分化因子の候補(既知物質)をピックアップし、検索された候補因子について、移植軟骨と周囲の線維芽細胞での発現を調べる。とくに移植後の時間経過を追って因子の発現がどのように変化するかをみる。 候補因子のタンパク質サンプルを入手できれば、軟骨アッセイ系で軟骨膜様組織の形成活性を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇および育児休業を取得したため(研究中断届出年月日:H26年12月9日)
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会発表や論文掲載に必要な諸経費に充てる予定である。また最も必要な実験動物の購入・維持費および消耗品の購入にも充てる予定である。
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