2013 Fiscal Year Research-status Report
ドパミンおよびアドレナリン受容体が側坐核のアセチルコリン神経活動制御に果たす役割
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25861763
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
青野 悠里 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (50508497)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アセチルコリン受容体 / 側坐核 / ラット / 脳微小透析法 / 薬理学 |
Research Abstract |
Endomorphin(EM)-1およびEM-2は,μ受容体の内因性agonist候補物質である。中脳辺縁系dopamine神経の主たる投射領域の側坐核にはμ受容体が局在するacetylcholine(Ach)介在神経があり,opioid受容体の非選択的agonistのmorphineは側坐核のAch神経の抑制作用を示す。しかし,側坐核のμ受容体の選択的刺激が同部位のAch神経に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では側坐核の細胞外Ach量を指標として,EM類の側坐核への投与が同部位のAch神経活動を抑制するか否かについて,無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo脳微小透析法により検討した。Cholinesterase(ChE)は細胞外へ放出されたAchを分解するが,本研究はNoori et al.(2012)の報告を参考にしてChE阻害薬のphysostigmineを50 nM添加した灌流液を用いた。 側坐核への電依存性Na+チャネル阻害薬のTTX(480 pmol)の灌流投与により,同部位から回収した試料中のAchは70%以上消失した。つぎに側坐核へEM-1,EM-2(6,30 nmol)を灌流投与したところ,同部位のAchは用量依存的に約30~50%減少した。選択的μ受容体antagonistのCTOP(3 nmol)の側坐核への投与は同部位のAchにほとんど影響を与えなかったが,EM-1とEM-2がそれぞれ誘発したAchの減少をいずれも強く抑制した。 以上の結果から,本実験条件下で側坐核から得たAchはその大部分が神経活動依存性に細胞外へ放出されたものであることが示された。また,EM-1またはEM-2による側坐核のμ受容体刺激は同部位のAch放出を減少させることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
側坐核のμ受容体の選択的刺激が同部位のAch神経に及ぼす影響について,側坐核の細胞外Ach量を指標として,無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo脳微小透析法により検討した。その結果,側坐核から得たAchはその大部分が神経活動依存性に細胞外へ放出されたものであることが示された。また,EM-1またはEM-2による側坐核のμ受容体刺激は同部位のAch放出を減少させることが示された。これらの実験から得られた成果の一部を2014年3月に宮城県で行われた日本薬理学会で発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに本研究成果の一端は2014年3月に宮城県で行われた日本薬理学会で発表した。当該年度は,かねてより課題としていたμ受容体を介した側坐核におけるAch神経活動の制御機構の解明のほか,EM-2の側坐核への灌流投与がopioid受容体刺激を介さずに誘発したDAの細胞外放出促進作用は,physostigmineの灌流液への添加を行っていない条件下で観察されたものである。昨年度の研究結果ではphysostigmineの灌流液へ添加の結果,側坐核へ灌流投与したEM-2が同部位のμ受容体刺激を介したAch放出抑制作用を示した。そこで今後は,physostigmineの灌流液への添加がEM-2の誘発したμ受容体非依存性の側坐核のDA神経促進効果に及ぼす影響を観察し,この内因性μ受容体agonist候補物質の非opioid作用の発現機構について側坐核のAch神経の関与の面から解明に取り組むことを計画している。またこれらの研究成果を,2014年6月22から26日にかけて5日間にわたりCanadaのVancouverで行われるCINP(国際神経精神薬理学会)にて発表する予定である。 【役割分担】統括,神経化学・行動学・組織学実験の遂行:青野悠里(研究代表者),実験の遂行:関野麗子(研究協力者),滝口旗一(研究協力者),田口寛子(研究協力者),木口友里(研究協力者),研究の助言:三枝 禎(研究協力者),J. L. Waddington(海外研究協力者)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた実験が終了したため、114,441円を使用せずに残した。 次年度へ繰り越す114,441円と次年度経費のうち100万円を実験のための物品費として使用することを計画しており,実験動物,試薬,HPLC消耗品の購入に充てる。このほかに40万円を旅費として使用し,2014年6月22から26日にかけて5日間にわたりCanadaのVancouverで行われるCINP(国際神経精神薬理学会)における研究成果の発表のための交通費と現地での滞在費(6泊8日)に充てることを計画している。
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