2014 Fiscal Year Research-status Report
介助負担と乗り心地を考慮した標準型車いすへの改善に関する検討
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25862135
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
能登 裕子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40615910)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 車いす / ティッピングレバー / 段差 / 介助方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
標準型車いすは、介助用として施設・住宅を問わず広く利用されている。介助者の操作負担の軽減と乗車者の乗り心地を確保するとともに、介助者がスムーズに最適な操作が可能な標準型車いすが必要である。本研究は、走行上の障害となりやすい段差通過時に操作するティッピングレバーの形状・位置とグリップに着目し、①介助者の身体負担と乗車者の乗り心地、②操作姿勢と車いすの走行動態との関係を検討し、高齢介助者や介助未経験者にも軽負担かつ容易な操作が可能な車いすを提案する。 本年度は、本研究期間に挙げている3つの課題のうち、研究2「ティッピングレバー設置位置・角度と介助者の操作姿勢・車いす走行動態との関係」を行った。 実験は、高齢女性介助者15名と20歳代男性乗車者2名を対象とし、車いすは標準型車いすのティッピングレバー部をアタッチメントできるように加工した。レバー位置は水平方向3パターン、垂直方向2パターンを組み合わせた6条件、レバー角度は水平、+30度、-30度の3条件とした。車いすの操作は、前輪はレバーを踏み前輪を浮かせて乗り上げ、後輪はグリップを持ち後輪を浮かせながら段差に押し付けて乗り上げる方法とし、段差通過区間における車いすの走行軌跡や介助者の操作姿勢、乗車者・介助者の主観評価、足底圧および上下肢の筋電図を計測した。その結果、介助者の主観評価は、前輪の持ち上げやすさ、レバーの踏み込みやすさの項目で、レバーの水平方向が長くなると標準位置に比べ有意に高評価を示した。また、レバーの踏み込み時の足底位置は、レバーの高さにかかわらず、水平方向が長い条件では踵に近い位置で踏み込みを行っていた。一方で踏み込み時の踏込み総面積と踏込み荷重にはレバーによる差は認められなかった。また、レバーの角度を変えても、被験者の主観評価には違いは認められなかった。今後、車いすの走行軌跡や介助者の筋電図との関連を分析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のスケジュールとしていた、平成26年度後半期までの実験を遂行し、研究1、研究2の目的および目標の示唆を得ている。 また、学会への研究成果発表予定が確定しており、平成27年度に行う実験の準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1および研究2により、介助者が段差通過操作を行いやすいティッピングレバー形状と位置の方向性が明らかとなった。研究2ではティッピングレバーの位置(長さと高さ)と前輪持ち上げ操作時の介助負担感、足底圧および踏み込み位置とのの関連性を検討した。現在、研究2における段差通過区間の上下肢の筋電図、車いすの走行動態を分析中である。一方で、前輪の持ち上げ動作は、下肢によるレバー踏み込みだけでなく、上肢によるグリップ押し下げ動作も合わせた複合動作である。さらに後輪持ち上げ時には、グリップは介助者が車いすに力を加える中心となる部分であり、操作性に及ぼす影響は大きいと考える。研究1、研究2の結果をふまえて、研究3「グリップが前輪・後輪持ち上げ操作の容易性に及ぼす影響」を行う。当初は、グリップの材質条件のみを設定する予定であったが、前輪持ち上げ、および後輪持ち上げに効果的な力を発揮できるグリップについて、握る位置や握り方に関連する可能性があるグリップ径、グリップ形状も考慮し、グリップ条件を設定する。対象者は、研究1、研究2と同様に高齢女性介助者と若年乗車者とする。測定は、主観評価、動作解析、筋電図(平成26年度科学研究費にて購入済み)をもとに、介助者および乗車者双方にとってよりよいグリップを検討し提案していく予定である。なお、実験を行う測定スペースは、研究代表者の所属施設において確保できない可能性がある。その場合は、研究1・2と同様に研究協力者(村木里志氏・同大学)の所有する動作解析実験室を借用する。
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Causes of Carryover |
当初対象者は、介助者の体格(身長・下肢長)による影響を分析するため身長別に測定をすることとしていたが、研究1のティッピングレバー形状との違いとの比較検討をするため、研究1と同様の高齢女性介助者(当初計画より総人数減)へ変更した。また、ティッピングレバー部のアタッチメント加工の一部を研究代表者が行った。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究3で使用する、車いすのグリップおよびティッピングレバー部のアタッチメント加工に要する消耗品と人件費、その他研究遂行に不足する物品を中心に使用する。
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Research Products
(2 results)