2013 Fiscal Year Research-status Report
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25870073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
善積 克 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70553379)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / グリシン / グルタミン酸 / 頻尿 / 炎症 / 痛み / 脊髄 |
Research Abstract |
神経障害性疼痛時に惹起される排尿異常を反映するモデルラットを作製し、その病態メカニズムの解明を目的として検討を行った。片側のL5脊髄神経結紮モデルを作製し、von Frey testにより経日的に疼痛閾値を観察したところ、3日目以降から有意な疼痛閾値の低下が認められたが、代謝ケージを用いての排尿行動試験では7、14日で排尿回数が増加傾向になるものの有意な排尿回数の増加が認められなかった。炎症性疼痛や神経障害性疼痛時にはプロスタグランジン(PG)が脊髄内に遊離または生合成され、グルタミン酸を介して痛覚過敏反応を引き起こすことが知られている。排尿機能においても、PGによる排尿促進が報告されており、臨床研究において、PG合成阻害薬であるロキソプロフェンが夜間頻尿に効果があることが報告されている。そこで、動物実験において、ロキソプロフェンの排尿機能抑制効果について検討した。排尿行動試験では、ロキソプロフェンの経口投与により排尿回数の有意な低下が認められた。覚醒条件下での膀胱内圧測定では、ロキソプロフェンの静脈内および脊髄髄腔内投与により排尿間隔が有意に延長した。このことから、ロキソプロフェンは少なくとも脊髄内のPGの生合成を阻害することで、排尿機能を抑制することが示唆された。さらに本研究では、抑制性神経伝達物質であるグリシンの静脈内投与により排尿間隔が有意に延長し、ロキソプロフェンと併用投与することで、排尿機能において相乗的な抑制効果を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
片側のL5脊髄神経結紮モデルラットは、疼痛閾値の低下、すなわちアロディニアの発現が認められたが、代謝ケージを用いての排尿行動試験では排尿機能に影響がなかったため、この神経障害性疼痛モデルでの検討は進めることができなかった。しかし炎症時の疼痛に深く関与する脊髄PGが、排尿促進に関わることが明らかになるとともに、グリシンとのクロストークが存在する可能性も明らかとなった。次年度以降は、PGE2脊髄髄腔内投与によるPGE2誘発性の頻尿モデルあるいは膀胱内に酢酸0.1%を灌流して作製する酢酸誘発性頻尿モデルを用いて、脊髄PGとグリシンの排尿機能に対する役割を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、炎症疼痛時に惹起される排尿促進とその病態メカニズムの解明について検討するため計画を変更する。具体的な研究計画はまず、排尿機能における脊髄PGおよびグリシンの役割を検討するため、無麻酔拘束下で膀胱内圧を測定し、PGE2の脊髄髄腔内投与による膀胱内圧の変化を確認する。この結果をもとにPGE2の受容体であるEP1~EP4受容体の拮抗薬を用いてPGE2誘発性頻尿に対する各受容体の役割を薬理学的に検討する。グリシンも同様に脊髄髄腔内投与による膀胱内圧の変化を測定し、グリシン受容体拮抗薬を用いて解析する。また、炎症性疼痛時には脊髄内に遊離または生合成されたPGE2がグルタミン酸を介して痛覚過敏反応を引き起こすことから、PGE2脊髄髄腔内投与によるグルタミン酸遊離機構を確認するため、マイクロダイアリシス法を用いて脊髄グルタミン酸遊離量を測定する予定である。さらに、PGE2は脊髄で特異的にグリシン神経伝達を抑制することから、グリシン受容体α3サブユニットがPGE2の標的分子として提唱されている。したがって、siRNAを用いてグリシン受容体α3サブユニットをノックダウンしたラットを用いて、PGE2脊髄髄腔内投与あるいは0.1%酢酸膀胱内灌流による排尿促進に対して効果を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定よりも使用動物数が下回ったため、次年度に繰り越した研究費が出た。 次年度は使用する動物数、薬品量が大幅に増加するので、研究費は繰り越し分と合わせて主に実験動物と各種薬剤に使用する予定である。国内学会と国際学会参加を各1回予定しているので、こちらにも研究費を使用する。
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