2013 Fiscal Year Research-status Report
多文化主義オーストラリアにおけるマイノリティの包摂とアンザック・デイ
Project/Area Number |
25870098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津田 博司 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30599387)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オーストラリア / 多文化主義 / アンザック / マイノリティ / 記憶 |
Research Abstract |
今年度は、1980年代のアンザック・デイ(4月25日)に焦点を定めて、フェミニスト団体Women Against Rape(WAR)による抗議活動の分析に取り組んだ。その一環として、8月13日から31日にかけて、オーストラリアでの現地調査を実施した。分析の史料としては、メルボルン大学図書館、オーストラリア国立図書館、ニューサウスウェールズ州立図書館で史料調査を行うとともに、WARの元メンバーからの聞き取りおよび個人的に提供を受けた内部史料を併用することによって、より精度の高い情報の補完を試みた。 WAR は1980年代半ばから、設立の目的であった女性の人権擁護や性暴力撤廃をこえて、アンザック・デイに抗議活動を行うようになった。WARのフェミニストは、アンザックの伝統のなかにマスキュリニティとの結びつきを見出し、「戦没者追悼」や「国民国家の誕生」といった言説に隠された、軍国主義・白豪主義的イデオロギーの残存を指摘した。このような主張は、現在のオーストラリアで提起されている「オーストラリア史の軍事化」をめぐる議論を、大きく先取りするものである。しかし、当時のメディアにおいては、例えば退役軍人会とWARの衝突などがセンセーショナルに報道される一方で、そうした先鋭的批判が正確に理解されることはなかった。その後のアンザック・デイの隆盛を考えると、WARによる問題提起がすみやかに「忘却」されてしまった事実をどのように位置づけるかが、本研究課題にとっての重要な論点であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所定の研究実施計画に基づいて、1980年代のアンザック・デイを取り巻く問題(とりわけ、現在の歴史研究者によるアンザック・デイに対する批判との相似性および差異)について、今後の研究につながる多くの知見を得ることができた。論文による成果発表は次年度以降に行うこととなるが、三つの年度にわたる研究課題の初年度として、順調に研究活動を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は1990年代以降を対象として、(WARがその「排除」を問題としていた)先住民などの民族的マイノリティによるアンザック・デイへの「参画」を分析する。メルボルンでのVPデイ(8月15日)のフィールドワークからは、アンザック・デイがその式典の規模などにおいて、他の戦争記念日を圧倒する重要性を与えられていることが明らかとなったため、次年度は文献史料による分析と並行して、現在のアンザック・デイに関するフィールドワークを重点的に実施する。
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Research Products
(1 results)