2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80432699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動不振 / ワーキングメモリ |
Research Abstract |
ワーキングメモリとは,視覚情報も含めて課題の遂行に必要な情報を一時的に保持しながら処理を行う容量に限界のある記憶システムのことである。運動技能の学習や遂行場面では,外界の状況に合わせて,全身を協応的にコントロールしなければならないため,処理しなければならない外的及び内的な情報は膨大である。もし,ワーキングメモリの容量が極端に小さい場合,運動課題の学習及び遂行中に過剰負荷状態に陥ってしまうため,高い学習成果及びパフォーマンスは期待できない。したがって,運動不振を呈する者が,運動が苦手な理由の1つとしてワーキングメモリの容量が小さいことが仮説的に考えられる。そこで,平成25年度は運動不振とワーキングメモリの関係を検討することを目的とした。 女子大学生7人を対象し,AWMA (Automated Working Memory Assessment)の視空間に関する2つのテストDot Matrix (VSSTM; Visuo-Spatial Short-Term Memory, 視空間短期記憶)とSpatial Recall(VSWM; Visuo-Spatial Working Memory, 視空間ワーキングメモリ)及び大学生版運動不振尺度を実施した。 AWMAの2つのテスト(VSSTM, VSWM)と大学生版運動不振尺度の2つの下位尺度(身体操作力,ボール操作力)の相関を分析した結果,VSSTMと身体操作力の間でr=.534,VSSTMとボール操作力の間でr=.393,VSWMと身体操作力の間でr=-.766,VSWMとボール操作力の間で,r=-.829の相関が認められた。現時点では被験者数が少なく,運動不振とワーキングメモリ容量との関係について明確な結論を下すことができないため,追加の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ワーキングメモリの測定は,これまで言語や数字の処理を中心に行われてきた。このため,運動との関係が深いとされる視空間的な処理に着目してワーキングメモリを測定する方法は,体育・スポーツ科学の研究者の間ではあまり知られていない。そのため,測定法の検討に手間取り,研究がやや遅れている状況にあった。しかし,AWMA (Automated Working Memory Assessment)が本研究に適用可能であることが分かったので,この遅れは挽回可能であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
運動不振とワーキングメモリの関係については,現時点で被験者の数が少ないので,これを増やしていく。課題であったワーキングメモリの測定法の問題も解決したので,問題なく進めていくことができると考えられる。 平成26年度及び27年度では,運動不振を呈する者の視覚探索方略と視覚情報からの予測技能を検討する。視覚探索方略と予測技能は,過去に関連する実験を行った経験があるので,変更の必要もなく遂行できると思われる。
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