2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870121
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古田 久 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80432699)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 運動不振 / 視覚探索行動 / バレーボール / アンダーハンドパス |
Outline of Annual Research Achievements |
運動が苦手な大学生のことを運動不振学生という。本年度は、学校の体育授業に取り入れられているバレーボールのアンダーハンドパスに着目し、運動不振学生、非運動不振学生及び熟練者の視覚探索方略に違いがあるかを検討した。 実験参加者は、運動不振学生6名、非運動不振学生6名、熟練者6名の計18名であった。運動不振学生と非運動不振学生は、大学生版運動不振尺度(古田, 2008)を用いて抽出した。熟練者は競技経験10年以上の体育会バレーボール部の学生とした。視覚探索方略の計測には、EMR-9(NAC)を使用した。実験で用いた運動課題は、アンダーハンドパスであり、実験参加者と返球目標が共に静止して行う条件、共に動く条件、どちらか一方が動く条件(2つ)の計4つの課題条件を設定した。紙幅の制限のため、ここでは両者とも静止の条件の結果のみを報告する。 分析の結果、第1に、参加者がレシーブする際に、ボールが出し手の手から離れるまでの局面では、熟練者群は、非運動不振群及び運動不振群に比べ、ボールを注視している時間の割合が多いことがわかった。第2に、ボールが出し手から離れ、参加者に触れる直前までの局面では、3群とも共通してボールを注視している時間が長く顕著な違いは認められなかった。第3に、ボールが参加者に触れ、離れる局面では、運動不振群は、ある特定の場所に視点を置いているのではなく、無秩序に視線を移動させる傾向が認められた。第4に、ボールが参加者から離れ、返球目標に返るもしくは床に落ちるまで局面では、熟練者と非運動不振群は、返球の際、返球対象の方向を周辺視でとらえ、返球するボールの先に視点を置いているのに対し、運動不振群は、返球対象をとらえていない傾向があった。このように、アンダーハンドパスのような比較的単純で基礎的な運動課題においても視覚探索方略の違いが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究課題を含む運動不振学生に関する一連の研究は5つのステップから構成される。ステップ1では,大学生版の運動不振尺度を作成し,運動不振の判定法を開発する。ステップ2及び3では,視覚的な情報処理プロセスのハード面に着目し,運動不振学生の視覚的能力(ステップ2)とワーキングメモリ容量(ステップ3)を検討する。そして、ステップ4及び5では情報処理プロセスのソフト面に着目し,運動不振学生の視覚探索方略(ステップ4)と予測技能(ステップ5)を検討する。 「運動不振学生の視覚的情報処理に関する研究」は、このうちのステップ3~5を含んでいる。昨年度にステップ3の運動不振学生のワーキングメモリ容量の検討が終了し、本年度にはステップ4の運動不振学生の視覚探索方略の検討が完了した。ステップ4の結果、バレーボールのアンダーハンドパスの遂行中の視覚探索方略において、運動不振学生は、非運動不振学生や熟練者とは異なる視覚探索方略を示すことが明らかとなった。 このように、当初予定していた研究計画はある程度完了したので、研究はおおむね順調に進展しているといえる。ただし、研究成果の公表等がまだ済んでいないので至急実行する必要がある。来年度は、ステップ5の運動不振学生の予測技能を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度研究計画では,運動不振学生の予測技能を検討する。体育授業における「つまずき」経験を調査した研究によれば,運動不振学生はボール運動の学習においてボールの軌道や落下地点を予測することが得意でないために,ゲーム展開についていけないことが示唆されている(古田, 2010)。 実験参加者は,運動不振学生10名及び比較対象としての非運動不振学生10名とする。予測技能の検討では,時間的遮蔽法を用いた実験室的な予測課題を用いる。時間的遮蔽法とは,参加者に呈示される動作の映像を特定の時間条件で遮蔽し,それ以降の映像を呈示しないで参加者に最終的な結果(ボールの落下地点等)を予測させる方法である。映像には本年度もバレーボールのサーブレシーブ動作を用いる。その遮蔽条件は、1)テイクバック終了後,2) 肘の挙上後,3:ボールと手のコンタクト時, 4:フォロースルー終了後とする。各遮蔽条件での参加者の予測落下地点と実際の落下地点のズレが少ないほど予測技能が高いことを意味する。 以上のような実験から行い、運動不振学生と非運動不振学生の予測技能における違いを検討する。
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