2014 Fiscal Year Research-status Report
多波長観測による惑星質量天体(浮遊惑星)の研究:その形成と多様性の解明に向けて
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25870124
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 星惑星形成 / 褐色矮星 / 惑星質量天体 / 系外惑星 / 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽以外の恒星周囲に千を越す系外惑星系が見つかり、太陽系は宇宙の惑星系の標準ではなく多様な形態があることがわかってきた。特に、親星となる恒星を持たずに単独で存在する「単独惑星質量天体(浮遊惑星)」は応募者らが世界で初めて明らかにした新しい種類の天体であり、系外惑星の多様性を解明するためにその理解は重要である。しかし、光度が非常に小さく詳細な観測が少ないために、未解明な点が多い。 そこで、平成26年度は、惑星質量天体の環境による頻度分布や形成の違いを調べるために、複数の星形成領域について深い近赤外測光観測,及びそのデータ解析を進めた。 (1)太陽の3倍重い中質量星が形成されているへび座分子雲の主コア約8分四方について、すばる8.2m望遠鏡による詳細な近赤外測光観測。約10000天体が検出され、光度や輻射比などを基に約1700の超低質量天体が同定された。電波観測との比較から、その多くが分子雲の低密度領域に存在すること、星の初期質量関数が環境によって異なる傾向が明らかになった。 (2)太陽程度の低質量星が形成されているへびつかい座分子雲の約0.9°四方について、イギリス3.8m赤外線望遠鏡による近赤外測光観測。検出された約98000天体のうち約2000の超低質量天体候補が同定された。惑星質量天体は分子雲密度によらず一様に分布する一方、褐色矮星は分子雲密度が高い領域に集中していることがわかった。また、その質量関数は低質量側に増加関数で表されることがわかった。 (3)太陽程度の低質量星が形成されているおおかみ座分子雲の約0.9°四方について、イギリス3.8m赤外線望遠鏡による近赤外測光観測。約95000天体が検出され、約1000の超低質量天体が同定された。(2)と同様に、惑星質量天体は一様に分布するのに比べ、褐色矮星は分子雲密度が高く、Tタウリ型星(低質量星)の近傍に存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで進めてきた、大型望遠鏡による近赤外測光観測のデータ解析及びそれらを用いた議論はおおむね順調に進んでいる。 一方、比較として進める予定である、銀河面からやや離れて密度が低い分子雲領域を対象とした若い低質量星、褐色矮星や惑星質量天体の探査観測については、平成25,26年度ともにハワイ大学2.2m望遠鏡に観測プロポーザルが採択されたが、望遠鏡の不具合と悪天候のため予定の半分程度しか観測が進んでいないという問題もある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、平成26年度までに予定された、環境の異なる低密度分子雲領域の惑星質量天体/褐色矮星の探査観測を実施し、未だ明らかでない高銀緯分子雲における超低質量天体形成を探る。 さらに、太陽の10倍以上重い大質量星形成領域における、超低質量天体の頻度分布や空間分布を探ると共に、同一分子雲複合体でも周囲の環境による違いがあるかを探るための観測/解析を進め、これまでの観測結果と比較考察し、超低質量天体の統計的性質を調べて、頻度分布の差異からその形成過程や環境を探る。
加えて、これらの観測/解析結果をとりまとめて、研究成果発表や論文投稿を行うとともに、各種講演や学内外の講義、雑誌記事やホームページなどを通じて、一般市民を対象とした研究成果の情報発信も積極的に推進していきたい。
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Causes of Carryover |
アメリカ・ハワイのマウナケア山頂にあるハワイ大学2.2望遠鏡を用いた、環境の異なる低密度分子雲領域における惑星質量天体/褐色矮星の分光探査観測について、観測プロポーザルが採択され、観測が予定されていたが、望遠鏡の不具合と一週間続いた悪天候により、やむを得ず中止となった。したがって、観測に赴くための旅費を次年度に繰り越す必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既にプロポーザルが採択され、次年度に実施予定の共同利用観測に赴くための旅費や、観測で取得したデータを解析するための環境の整備、研究成果発表のための旅費に充当する予定である。 加えて、相補的な観測を行うための装置物品の購入を予定している。
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[Journal Article] Dust from Comet 209P/LINEAR during its 2014 Return: Parent Body of a New Meteor Shower, the May Camelopardalids2015
Author(s)
Ishiguro, M; Kuroda, D; Hanayama, H; Takahashi, J; Hasegawa, S; Sarugaku, Y; Watanabe, M; Imai, M; Goda, S; Akitaya, H; Takagi, Y; Morihana, K; Honda, S; Arai, A; Sekiguchi, K; Oasa, Y et al.
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Journal Title
The Astrophysical Journal Letters
Volume: 798
Pages: 34-39
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Observation campaign for the near-Earth object 2012 DA_{14} in Japan2014
Author(s)
Urakawa, S.; Terai, T.; Takahashi, J.; Fujii, M.; Hanayama, H.; Yoshida, F.; Hoshi, H.; Sato, T.; Ushioda, K.; Oasa, Y.; Arai, A.; Honda, S.; Takagi, Y.; Itoh, Y.; Ishiguro, M.
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Journal Title
Proceedings of the conference "Asteroids, Comets, Meteors"
Volume: 539
Pages: 539
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[Journal Article] Variable optical polarization during high state in gamma-ray loud, narrow-line Seyfert 1 galaxy 1H 0323+3422014
Author(s)
Itoh, R; Tanaka, Y.; Akitaya, H; Uemura, M; Fukazawa, Y; Inoue, Y; Doi, A; Arai, A; Hanayama, H; Hashimoto, O; Hayashi, M; Izumiura, H; Kanda, Y; Kawabata, K; Kawaguchi, K; Kawai, N; Kinugasa, K; Kuroda, D; Miyaji, T; Moritani, Y; Morokuma, T; Murata, K.; Nagayama, T; Oasa, Y et al.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 66
Pages: 108-115
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 光赤外線大学間連携観測の円滑な遂行に向けた環境整備2014
Author(s)
秋田谷洋, 渡辺誠, 大朝由美子, 諸隈智貴, 斉藤嘉彦, 村田勝寛, 野上大作, 高橋隼, 永山貴宏, 黒田大介, 関口和寛, 光・赤外線天文学大学間連携観測チーム
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] 大学間連携によるAGNジェットの多波長観測2014
Author(s)
伊藤亮介, 深沢泰司, 田中康之, 秋田谷洋, 川端弘治, 吉田道利, 植村誠, 森谷友由希, 上野一誠, 高木勝俊、渡辺誠, 大朝由美子ほか光赤外線大学間連携観測チーム
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] 光赤外線大学間連携を通じた矮新星観測とその成果2014
Author(s)
大島誠人, 野上大作, 加藤太一, 秋田谷洋, 川端弘治, 植村誠, 橋本修, 新井彰、花山秀和, 永山貴宏、坂田脩一郎, 大朝由美子ほか光赤外線大学間連携観測チーム
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] 光赤外線大学間連携による観測教育ネットワークOISTER2014
Author(s)
黒田大介, 関口和寛、渡辺誠, 大朝由美子, 諸隈智貴, 斉藤嘉彦, 村田勝寛, 野上大作, 高橋隼, 秋田谷洋, 永山貴宏, 光・赤外線天文学大学間連携観測チーム,
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] 可視・近赤外撮像データに対する測光パイプラインの開発2014
Author(s)
斉藤 嘉彦, 諸隈 智貴, 渡辺誠, 大朝由美子, 村田勝寛, 野上大作, 高橋隼, 秋田谷洋, 永山貴宏, 黒田大介, 関口和寛, 光・赤外線天文学大学間連携観測チーム
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] 若い小惑星族の高速自転小惑星候補の観測2014
Author(s)
吉田二美, Z.-Y.Lin, O.A.Burkhonov,Sh.A.Egamberdiyev,K.E.Ergashev・・大朝由美子ほか光赤外線大学間連携観測チーム
Organizer
日本天文学会2014年秋季年会
Place of Presentation
山形大学(山形県)
Year and Date
2014-09-11 – 2014-09-13
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[Presentation] Observation campaign for the near-Earth object 2012 DA_{14} in Japan2014
Author(s)
Urakawa, S.; Terai, T.; Takahashi, J.; Fujii, M.; Hanayama, H.; Yoshida, F.; Hoshi, H.; Sato, T.; Ushioda, K.; Oasa, Y.; Arai, A.; Honda, S.; Takagi, Y.; Itoh, Y.; Ishiguro, M.
Organizer
Asteroids, Comets, Meteors 2014
Place of Presentation
Helsinki(フィンランド)
Year and Date
2014-06-30 – 2014-07-04
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