2013 Fiscal Year Research-status Report
高い不可視性を有し可逆的に書き換え可能な感熱型発光記録媒体
Project/Area Number |
25870137
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中村 一希 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (00554320)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | デュアルモードディスプレイ / サーモクロミズム / エネルギー移動 / 発光制御 / 光誘起電子移動 |
Research Abstract |
外部刺激によって可逆的に蛍光強度、蛍光波長をスイッチングできる光機能性材料は幅広い分野で重要性が高まっている。本研究では、熱刺激による発光スイッチング材料において、発光情報の書き換えが可視光下では視認できず(セキュリティ性が高く)、不可視光照射により強く発光し、実用的な温度で高速に蛍光のON-OFFが制御可能となる新規な感熱型光機能性材料の創製を目指す。具体的には高分子媒体中で酸性分子とpH応答性発光分子を複合化させ、これら機能性分子の分子集合構造の変化による発光制御を目的としている。 本年度は、計画書記載の通り、高分子媒体中で長鎖酸性分子と種々のpH応答性発光分子がどのような分子集合状態、相互作用形態を有しているのか、またそれが熱刺激によってどのように変化するのかについて検討した。具体的には、プロトンの付加-脱離により分子構造が変化し発光性を制御できるフルオラン誘導体と、長鎖アルキル基を有するアミドフェノール誘導体をPMMA中に溶解させた薄膜を作製し、その熱特性および光学特性の変化を検証した。 その結果、PMMA中で酸性分子自体で結晶化し、フルオラン分子との相互作用が弱い状況下では、フルオラン分子からの発光が起こらなかった。一方、急熱・急冷による熱刺激によって酸性分子とフルオラン分子が強く相互作用する状況下ではフルオラン分子からの強発光が観測された。また、この発光制御は熱の与え方・冷却の方法によって可逆的に制御できた。 XRD測定、DSC測定から、この発光性の変化は両分子の分子集合構造の変化によるものであることが示唆された。また、量子化学計算によって、この発光性の制御は電子遷移における分子内電荷移動の制御によるものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載の通り、本年度は高分子薄膜中において、pH応答性発光分子と長鎖アルキル酸性分子を用いた熱刺激による発光制御が実証された。また、この発光性の変化は、両分子の分子集合構造の変化によるものであることがXRD測定やDSC測定から示唆された。 このように、本研究の主目的である、pH応答性発光分子と長鎖アルキル酸性分子熱刺激による可逆的な発光制御に関しては基本現象の実証がなされたと考えている。 また、本研究に関連した、熱による光学特性制御媒体に関する招待講演や特許出願も進んでいることから、概ね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の基本現象を見出したが、作製した高分子薄膜の不可視性に問題があった(プロトン付加によって淡黄色に着色が生じてしまう)。今後は、不可視性向上のため、無色透明なpH応答性発光分子を用いる。希土類錯体は、Stokes shiftが有機分子に比べて非常に大きく(>300 nm)、無色透明状態から紫外光励起によって様々な波長の発光を示す事で知られている。計画書記載の希土類錯体群を用いることで不可視性の高い発光制御材料の実現を目指してゆく。
|
Research Products
(37 results)