2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小豆川 勝見 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (00507923)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 人工河川 |
Research Abstract |
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故によって、放射性物質が広く環境中に沈着した。比較的長い半減期を持つ放射性セシウム(134Cs, 137Cs)が環境中で卓越し、その化学的性質から雨水や風といった自然現象によって集積、拡散する。放射性物質には固有の半減期があり、その物理的性質から将来の放射能を予測することは可能であるが、それは、一切その場から放射性物質が移動しないことが前提であり、環境評価には適切ではない。本研究では数平方キロメートルの比較的小さな分水嶺を研究対象に置いたことから、一度の測定だけではなく、詳細な定点測定によって放射性物質の拡散、濃縮を評価する方針である。 平成25年度では、雨水を効率よく排水するシステムを有する茨城県守谷市を中心に、雨水によって運搬される放射性セシウムの動態観測を行った。特に市内で最大の人工河川であるプロムナード水路に着目し、水路内で水平、垂直方向に約120試料を採取した。この他、規模にかかわらず集積が確認される地点で試料採取を行い、約40試料を採取した。すべての試料はGe半導体検出器によってガンマ線を測定し、放射能を求めた。 その結果、水路内では放射性セシウムは鉛直方向にはほとんど浸透せず、水平方向に移動し、水路の上流ほど雨水によって流され、放射能が物理的半減期よりも極めて早く低減する傾向が強いことが明らかになった。その一方で、下流側では雨水によって運搬される量と蓄積される量が拮抗していることも明らかになった。得られた値は速やかに市役所、住民ボランティア団体に開示している。その一部は科学誌等で公開した。 また、守谷市以外にも放射性物質の沈着量が極めて多い福島第一原子力発電所正門近辺や、逆に沈着量が比較的少なかった東京都内でも放射能測定や放射線マッピングの定点観測を行い、放射性物質の雨水による移動について引き続き検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間あたりの分析数の目標を約200試料に設定していたが、実際の測定数は約240試料(Ge半導体検出器以外の測定機器による分析も含む)になり、当初計画した放射性物質の動態を探るうえで必要になる目標数には達している。また試料採取のたびに、協力体制にある守谷市に対して、随時、測定結果及び研究成果を報告してきた。しかし、放射性物質の動態を直接観測できるマッピングについては、現在の測定法よりもさらに高空間分解能を実現できる見込みが立ったことから、より高度な測定システムの構築のための検討の時間を必要とした。上記2点を総合的に判断して、おおむね順調と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究協力体制にある守谷市より放射線アドバイザーを委嘱され、守谷市内の放射性物質の動態について、報告、検討を重ねてきた。同時に住民ボランティア団体とも共同体制にあり、引き続き行政、住民、研究者の3者が共同で放射性物質について連携する体制を整えることができた。平成26年度も同アドバイザーを継続する方針であり、平成25年度と同様の研究推進体制をとっていく予定だ。
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