2013 Fiscal Year Research-status Report
中性子・X線回折によるアモルファス氷の結晶化その場観察
Project/Area Number |
25870182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松 一生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50541942)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 氷 / 高圧 / X線 / 中性子 |
Research Abstract |
高圧下で生成した不純物を含むアモルファス氷からの結晶化を観察するため、平成25年度は、低温下で大気圧まで減圧できるダイヤモンドアンビルセルの開発を行った。具体的には、ピストンとシリンダーの摩擦を軽減しつつ、最低限ピストンとシリンダーの平行度を確保できるよう両者のすり合わせを調整し、かつ双対する台座の間に皿ばねを挿入することで低温下での大気圧への減圧に成功した。 また開発したセルを用いて、PF-18CおよびJ-PARC/PLANETにおいて、低温・高圧その場X線/中性子回折実験を行った。塩や酸を少量含む水溶液を液体窒素温度下で加圧し、アモルファス氷を生成した後、加熱することで結晶化させ、得られた氷結晶相について、その不純物を含まない系のX線/中性子回折パターンとの比較を行った。その結果、塩を含む系で生成した高圧氷は、純粋なそれより格子体積が膨張し、氷の格子中にイオンとして取り込まれていることが示唆された。また、相関係そのものも大きな変化が見られた。純水を用いた系では、低温下で加圧することで、1.0-1.5 GPa程度でアモルファス化し、さらに加圧していくことで、氷VII'相に相転移することが知られていたが、塩を含む系では、少なくとも4 GPaまではシャープなブラッグピークは現れず、アモルファス構造を保っていることがわかった。さらにアモルファスからの散乱強度の特徴であるFSDPの位置が圧力にともなって大きく変化し、高密度アモルファス氷(HDA)的な構造から超高密度アモルファス氷(VHDA)的な構造へ変化したことが示唆された。本研究によって、さらに高圧までアモルファス氷を維持することができれば、未だ知られていないさらに高密度なアモルファス氷を生成できる可能性があり、その点でも興味深い結果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年5月にJ-PARCで起きたハドロン実験施設の放射能漏れ事故を受けて、10ヶ月あまり中性子回折実験を行うことができなかったために、中性子が必要な実験については多少の遅れが生じている。しかし、X線によるアモルファス氷の結晶化の観察は予定通り進展しており、本研究の進展には事故の影響は甚大ではなく、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、アモルファス氷を高圧下で加熱し結晶化した場合についての実験は順調に進んでおり、今後も引き続き種々の不純物を添加した系について同様の実験を行っていく予定である。しかしながら、アモルファス氷を一度大気圧下まで減圧したのちに、加熱、結晶化させる実験は、結晶化の際に試料室内の圧力が上昇してしまうという技術的問題が残っており、今後圧力セルの改良も含めた技術開発を行っていかなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年5月に生じたJ-PARCハドロン施設の事故により、約10ヶ月近くにわたってJ-PARCにおける中性子回折実験が中止となった。当該年度に行う予定だった実験を次年度に行うため、必要な消耗品や旅費分を次年度に使用する予定である。 J-PARCにおいて中性子回折実験を行うための消耗品(高圧セル用アンビル・ガスケット加工代)に20万円程度、旅費に15万円程度(2.5万円 x 二人 x 3回)を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)