2013 Fiscal Year Research-status Report
ゲル試料の摂取方法が嚥下機能に与える影響-Oral Processingの重要性
Project/Area Number |
25870249
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
林 宏和 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (80632439)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 舌 / 嚥下 / 咀嚼 / 舌圧 / 介護食 / 物性 |
Research Abstract |
安全に食事を行うためには,患者個々の咀嚼・嚥下能力とその能力に適した食事形態が提供されることが望ましい.我が国における嚥下困難者用食品は硬さ・凝集性・付着性による規格が設けられているが,実際の嚥下能力との関連性は明らかにされていない.本研究では食品物性の違いと舌運動の関連を調べることを目的とし,ゲル試料の硬さと摂食様相の違いが舌圧に与える影響を検討した. 被験者は若年健常有歯顎者とし,センサーシートにより舌圧を記録した.測定時にはゲル試料5mlを験者の指示の後,二種類のタスク規定のもと摂取させた.一つはゲル試料を歯で咀嚼せずに舌で押しつぶした後に嚥下することとし,他方は自由咀嚼後に嚥下することとした.試料は物性の異なる二種類のゲルそれぞれ三段階の硬さを用意した.それぞれの試料について押しつぶし・咀嚼共に3回ずつの測定を行った. その結果,いずれのゲルにおいても硬さは押しつぶし時および咀嚼時舌圧の大きさに影響を与えており,硬いゲルの場合には高い舌圧・持続時間が認められた.また,押しつぶし後および咀嚼後の嚥下時舌圧を比較すると,ゲル化剤Aでは摂食様相が変化しても,嚥下時の舌圧最大値・持続時間ともに変化が見られず,押しつぶしだけで十分食塊形成できたと考えられた.ゲル化剤Bでは舌圧最大値・持続時間ともに押しつぶし後より咀嚼後の嚥下時の方が有意に小さく,咀嚼して初めて食塊形成が容易にできることが分かった. 以上より,ゲル化剤濃度に応じて押しつぶし時または咀嚼時の舌圧は変化しており,押しつぶしまたは咀嚼運動中には食物の硬さを感知して調整していた.また,ゲル化剤Aは崩れやすく一度の押しつぶしで破断するが,ゲル化剤Bは破断しないため押しつぶした後も嚥下時に力を要すると考えられた.咀嚼は押しつぶしに比べ強い舌圧を必要とせず,すばやくゲル試料を十分に嚥下できる食塊に形成することができると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,ゲルの物性,および摂食様相が押しつぶし・咀嚼時および嚥下時舌圧発現に与える影響を明らかとした.その結果,ゲル化剤濃度に応じて、押しつぶし時または咀嚼時の舌圧は変化しており、随意運動である押しつぶしまたは咀嚼運動中には食物の硬さを感知して調整している可能性が考えられた。 また、ゲル化剤Aは崩れやすく一度の押しつぶしで破断するが、ゲル化剤Bは破断しないので、ゲル化剤Bの方が押しつぶした後も嚥下時に力を要すると考えられた。咀嚼は押しつぶしに比べ、強い舌圧を必要とせず、すばやくゲル試料を十分に嚥下できる食塊に形成することができると考えられた。一連の摂食時舌圧を計測することで、ゲル試料の違いや摂食様相の違いにより嚥下時舌圧に変化が認められ、物性測定だけでは判定できない食塊形成・送り込みのしやすさを生体測定によって判定できる可能性が示唆された。 本年度予定していた研究の内容はほぼ遂行することができており,おおむね順調に進行しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から,ゲルの物性,特にゲルのかたさが摂食時舌圧に影響を及ぼしていることが明らかとなった.さらに,舌による押しつぶし・咀嚼といったゲルの摂取様相が嚥下時舌圧に影響を及ぼしていることが明らかとなり,口腔内での食塊形成の重要性が示された. 次年度は,さらに多様な物性のゲルを用いた実験を予定しており,かたさだけではなく,ゲルの応力・ひずみが舌圧・筋活動・舌骨喉頭運動に及ぼす影響を検討する予定としている.さらに,これらのゲルを用いた場合の摂取様相の違いが嚥下動態に及ぼす影響も検討する.これらの検討により,食物の物性と摂食時の生体運動との関係性をより明確にすることができるとともに,摂取様相の違いを検討することにより顎口腔機能の重要性を示唆することができると考えている.また,これまでの研究結果を総括し,結果報告・論文執筆を行っていく予定としている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,順調に研究を行うことができたが,測定装置は当研究室で保有している物を使用したため,新たに設備を購入する必要は無かった. 必要な消耗品の他,設備のメンテナンス,成果発表のための海外・国内旅費,論文作成補助などに使用する予定である.
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