2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25870305
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤原 慎一 名古屋大学, 博物館, 助教 (30571236)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胸郭 / 機能形態 / クジラ / カイギュウ |
Outline of Annual Research Achievements |
【二次的水生適応と胸郭強度の関係】 陸上へと進出した脊椎動物の仲間である四肢動物は、クジラやカイギュウなど複数の系統で二次的に水生適応していった。化石種では四肢を備えた原始的なクジラやカイギュウの仲間が報告されており、それぞれの系統は、段階的に、陸生から半水生、完全水生へと徐々に適応していったと考えられている。しかし、進化のどの段階で陸生から完全水生へと生態を変えていったかを判別する基準がなかった。 陸上で四足歩行ないし匍匐運動を行う際、胸郭骨格に荷重がかかる。そのため、陸生ないし半水生の陸上での運動能力を保持した系統では、高い強度を備えた胸郭骨格を備えていると期待される。一方で、完全水生適応した系統は、自身の体重を支えられるだけの強度が備わっていない可能性が指摘される。本研究では、クジラやカイギュウ、アシカなど、複数の哺乳類の系統の胸郭骨格を用い、上記の仮説を確かめた。そして、胸郭骨格の強度が、化石種においても完全水生か陸生/半水生かを判別する有効な基準になりえることを示した。 【肩帯位置の復元法】 多くの四肢動物の胸郭と肩甲骨は互いに関節しないため、絶滅四肢動物の復元において、胸郭と肩甲骨の位置関係を正しく復元することは最も難しい課題のひとつである。四足歩行を行う際に、四肢動物の胸郭骨格は肩甲骨から伸びる筋肉で吊り下げられて支えられる。本研究は複数の現生四肢動物の三次元筋骨格モデルを用いて、胸郭骨格上で体重支持の際に係る筋張力に耐えうる強度を備えた部位を応力解析から、および、体を安定して支えることができる最適な肩甲骨の位置をモーメント解析からそれぞれ求めた。両解析から判断された胸郭と肩甲骨の位置関係は、CT撮像から得られた実際の位置関係と整合的であった。本成果により、これまで曖昧に復元されてきた四肢動物の前肢姿勢を、明確な根拠に基づいて復元していくことができると期待される。
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