2014 Fiscal Year Research-status Report
院外心停止患者に対する治療戦略:効果的なAED使用ならびに心肺蘇生の研究
Project/Area Number |
25870391
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 哲久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30639810)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病院外心停止 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、院外心停止患者の救命率改善のための治療戦略として、市民による効果的なAED使用ならびに心肺蘇生の質を改善するための因子の検討を行うことである。研究2年目となる26年度には、2005年から2012年までの約56,000件データセットを構築した。 前年から実施している救急指令室からの院外心停止患者に対する口頭指導種別についての分析は、1年分データを積み上げて再解析を行った。19,671症例のうち、4,022症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生(CPR)口頭指導がなされ、70.0%の症例が実際に居合わせた人(バイスタンダー)によるCPRを施行された。また13,926症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、62.1%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行され、統計学的に有意な差であった(P<0.001)。これらの結果は、病院までの市民によるCPR実施を増加されるためには、胸骨圧迫のみのCPR口頭指導の普及が役立つことを示唆している。 さらに、本登録の大阪市の2011からの2年分のデータを用いて、AEDパッドを装着した事例を抽出し、市民が現場でどのような症例に対してAEDを使用しようと試みているのかを評価した。その結果、スポーツ施設の79%、駅の51%、一般的な公共施設22%の順にAEDパッド装着が試みられていることが明らかになった。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。 研究はおおむね順調に進んでおり、上記研究の論文化を進める。今後は、現在進行中の市民によるCPRの質の評価だけでなく、大阪府や全国で集積されている院外心停止データとも組み合わせて、院外心停止患者の予後改善に寄与する因子について、包括的かつ探索的に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目となる26年度には、2012年(平成24年)に大阪府で集積された院外心停止記録約7,800件のデータクリーニングを実施し、2005年から2012年までの約56,000件データセットを構築した。 市民に指示した口頭指導内容を、従来の人工呼吸つきの心肺蘇生(CPR)ならびに胸骨圧迫のみの心肺蘇生別に居合わせた人によるCPR施行率を比較した。この前年から実施している分析については、1年分データを積み上げて再解析を行った。19,671症例のうち、4,022症例に対して胸骨圧迫のみの心肺蘇生(CPR)口頭指導がなされ、70.0%の症例が実際に居合わせた人によるCPRを施行された。また13,926症例に対して従来の人工呼吸つきのCPR口頭指導がなされ、62.1%の症例が実際にバイスタンダーCPRを施行され、統計学的に有意な差であった(P<0.001)。多変量解析でも同様の結果であった。これらの結果は、病院までの市民によるCPR実施を増加されるためには胸骨圧迫のみのCPR口頭指導が役立つことを示唆している。 さらに、本登録の大阪市の2011-2012の2年分のデータを用いて、AEDパッドを装着した事例を抽出し、市民が現場でどのような症例に対してAEDを使用しようと試みているのかを評価した。その結果、スポーツ施設の79%、駅の51%、一般的な公共施設22%の順にAEDパッド装着が試みられていることが明らかになった。これらの結果は、市民によるAED使用状況は場所によって異なり、適正なAED普及・配置には場所ごとの戦略が必要なことを示唆している。 口頭指導の研究については次年度中に投稿できるよう準備中であり、AEDパッド研究は大阪市のデータを大阪府全体に拡大して解析し、発表ならびに論文投稿できるよう再解析予定であり、それゆえ研究は順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成27年度においては、上記で述べた口頭指導研究とAEDパッド装着研究の論文化を進める。また平成25~26年度の大阪府院外心停止データを集積しクリーニングならびにデータセット構築も予定している。さらには、これらのビッグデータを用いて、病院前救護における院外心停止患者の予後に関連する因子について、市民によるCPRやAEDといった一次救命処置に関する分析だけでなく、救急隊によって行われる2次救命処置を含めて多面的に評価を実施する予定である。 また課題の一つである、市民によるCPRの質の検証については、胸骨圧迫の深さ・位置・リズム、心肺蘇生の種別(胸骨圧迫と人工呼吸)などについて、救急隊が心停止現場で聴取すべき内容についての作成したアンケート調査を用いて、大阪府豊中市消防本部で平成23年8月から登録を実施しており、このデータ登録は平成25年12月をもって終了している。今後は、これらデータクリーニングに合わせて、院外心停止記録とアンケート調査を匿名化したうえで連結・解析を行い、昨年10月での米国心臓学会で発表済みであり、現在は論文化を進めている。 また、消防庁が集積している全国院外心停止記録も利用し、院外心停止の発生に関わる因子の同定、ならびに救命率向上に寄与する処置などの検証など、包括的なアプローチも予定している。 上記研究課題について論文化を進めるとともに、集積されたデータ解析の取りまとめを行い、得られた成果の報告と情報公開を行う。2015年末に予定されている新しい国際心肺蘇生ガイドラインに反映させるべく、研究成果の発信方法としては、英語原著論文ならびに学会発表を予定している。加えて、我々が運営している心肺蘇生研究グループのホームページ(http://cc-resus.com/)、消防機関、大阪府の広報等を活用し、広く研究成果を発信する予定である。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Epidemiology and outcome of adult out-of-hospital cardiac arrest with non-cardiac origin in Osaka: a population-based study2014
Author(s)
Kitamura T, Kiyohara K, Sakai T, Iwami T, Nishiyama C, Kajino K, Nishiuchi T, Hayashi Y, Katayama Y, Yoshiya K, Shimazu T
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Journal Title
BMJ Open
Volume: 4(12)
Pages: e006462
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Effectiveness of prehospital Magill forceps use for out-of-hospital cardiac arrest due to foreign body airway obstruction in Osaka City2014
Author(s)
Sakai T, Kitamura T, Iwami T, Nishiyama C, Tanigawa-Sugihara K, Hayashida S, Nishiuchi T, Kajino K, Irisawa T, Shiozaki T, Ogura H, Tasaki O, Kuwagata Y, Hiraide A, Shimazu T
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Journal Title
Scandinavian Journal of Trauma, Resuscitation and Emergency Medicine
Volume: 22(1)
Pages: 53
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Trends in survival among elderly patients with out-of-hospital cardiac arrest: a prospective, population-based observation from 1999 to 2011 in Osaka2014
Author(s)
Kitamura T, Morita S, Kiyohara K, Nishiyama C, Kajino K, Sakai T, Nishiuchi T, Hayashi Y, Shimazu T, Iwami T
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Journal Title
Resuscitation
Volume: 85(11)
Pages: 1432-1438
DOI
Peer Reviewed
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