2013 Fiscal Year Research-status Report
日本美術館建築の内部空間におけるデザインと思想の形成過程
Project/Area Number |
25870415
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻間 裕子 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (30649603)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 美術館建築 / 美術館 / 日本近代美術 |
Research Abstract |
日本の戦後美術館建築における設計論について、本研究では建築家の前川國男や磯崎新らを中心に検討しその形態的変遷を明らかにすることを目的としている。その中で、東京国立近代美術館や東京国立博物館の東洋館など、国立の重要な美術館や博物館を設計した谷口吉郎の設計論を詳細に検討し、谷口が、日本の近代美術という概念形成とともに、あるいはその形成過程に深く関わりながら美術館建築設計を行っていたことを明らかにした。つまり、谷口は日本美学と美術館建築を結びつけながら設計を試みて完成させており、いわば西洋建築史的観点から美術館建築の設計を行ってきた前川や磯崎らとは対照的とまで言えるほどの設計論を谷口は考えていたということである。ここに、美術館建築の日本的特徴の一つを認めることができ、その研究成果の一部を大阪大学大学院文学研究科 芸術学・芸術史講座の紀要『フィロカリア』に論文として投稿し掲載された。 また本研究は、50年代60年代における日本の「近代美術」とは何か、という概念形成に関する問題を重要な研究課題解明の鍵として捉えており、日本の近代美術と近代建築との関係を新たに考察する軸を提出することができると考えられる。これは美術館が視覚的な装置であるということに起因し、住宅建築や他の公共建築とは別に切り離して考察する必要があると考えられ、むしろ劇場建築史や舞台設計論などを包括した視覚装置の歴史として新たなジャンルが構築される展望があると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本における美術館建築の特有性を明らかにする一歩を得られたことは、今年度の大きな成果である。従っておおむね順調に進展していると言える。また、その研究成果の一部を計画書通りの紀要に投稿し発表することができた。しかし、1980年代以降を中心とした日本の美術館建築における美学的思想の変遷やより大きな結節点、転換点などの抽出は未だ行えておらず、引き続き課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、前川と磯崎の形態論的分析に基づいた内部空間の配置と外観との相互影響の考察を進めたい。また、その際、決して西洋建築史的観点のみの影響関係が述べられるのではなく、日本の美学思想、日本の近代美術という概念形成とどのような関係をもちながら変遷しているのかということを重点的に考察する。この考察が十分に行われることで、現代の日本美術館建築にまで問題を敷衍することができ、その特殊性の根拠を提示することができると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究のための旅費を十分に申請することができなかったため。 夏期休暇の際に予定しているアメリカへの調査旅費に当てることで計画通りの研究を進め、予算もそれに当てられることになる。
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Research Products
(1 results)