2013 Fiscal Year Research-status Report
学校管理職の任用システムの実証的研究-ジェンダーの視点から-
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25870500
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊 川 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 学術協力研究員 (80599407)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学校管理職 / 任用制度 / ジェンダー / 女性教員 / キャリア形成 |
Research Abstract |
本年度は、三つの柱で研究を実施した。 一つ目は、教員、学校管理職の人事制度に関する研究、女性教員、女性管理職のキャリア研究、企業組織、公務員組織の女性管理職の研究の文献・資料を収集し、先行研究の検討を行った。 二つ目は、文部科学省が実施した「公立学校における校長等の登用状況に関する調査」のデータ(20年間)を収集し、学校管理職任用制度の変遷及び女性管理職の登用状況を概観した。また、女性管理職の割合の変化に着目するとともに、都道府県・政令市が策定した「男女共同参画基本計画」の内容、女性管理職登用の促進政策の実際を確認した。そのうえで、研究代表者はかつて都道府県・政令市教育委員会を対象に実施した「校長・教頭等任用制度に関する調査」の結果を再分析し、都道府県・政令市の管理職選考試験制度の運用、女性管理職の登用促進をめぐる現状と課題を検討した。 以上の二つの検討(文献の検討、実証データの検討)を通じて、「管理職任用制度」と「教員のキャリア形成の契機」という二つのファクターを組み入れた女性教員の管理職昇任プロセスの新たな分析枠組を構築した。この分析枠組は今後の事例研究の土台となり、次年度から複数の自治体調査を行い、制度・政策の違いによる女性管理職のキャリア形成への影響を確認することで、枠組の妥当性を検証し、教育行政学への新たな分析枠組の有効性を示すことができると考える。 三つ目は、女性管理職登用の促進政策を有し、公立小学校の女性教頭率(10年間)が上昇しているW自治体の行政資料、文献資料を収集したうえで、W自治体の管理職任用制度の実際を明らかにした。このうえで、上記の分析枠組に従って、8名の女性管理職の「語り」のデータを用いて、W自治体の女性管理職のキャリア形成の実態を分析した。女性管理職登用の促進政策は女性教員の管理職志向に影響を与えていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究文献・資料の収集及びデータ化を行い、本研究に関する先行研究のレビュー、文部科学省の調査データと研究代表者がかつて実施した調査の実証データの検討を進めた。これにより、当初の研究計画書で提示した分析枠組をさらに修正し、「管理職任用制度」と「教員のキャリア形成の契機」という二つのファクターを組み入れた女性教員の管理職昇任プロセスの新たな分析枠組を構築することができた。この分析枠組は、今後の事例研究の土台となる。この枠組を用いて、複数の自治体の制度・政策の違いによる女性管理職のキャリア形成への影響を検証することができる。このように、本年度は次年度からの事例研究の土台作りに重点を置き、順調に進展している。 また、事例研究に関しては、本年度予定していたX自治体への調査は調査協力者の都合により、次年度に行うことになったが、自治体調査の順番、スケジュールを変え、本年度はW自治体の調査―行政資料、文献資料の収集、女性管理職の「語り」のデータの整理を実施することができた。また、上記の分析枠組に沿って、W自治体の女性管理職登用の促進政策、任用制度は女性管理職のキャリア形成への影響を分析することもできた。このように、事例とスケジュールの変更があったとはいえ、事例研究もおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは二つの柱で研究課題を進めていく。 一つ目は、複数の自治体調査の実施である。本年度は本研究の分析枠組を構築し、それに沿って、一つの事例研究を進めたが、制度・政策の違いによる女性管理職のキャリア形成への影響を明らかにするために、事例の比較が必要である。次年度からは、研究計画書で提示した政策・制度が違うW自治体(本年度調査済)、X自治体、Y自治体への調査を実施し、その調査結果をまとめる。X自治体とY自治体への調査は主に①行政資料、文献資料の収集、②教育委員会の管理職人事担当者へのインタビュー調査、③女性管理職のインタビュー調査データの整理である。 二つ目は、本研究を推進するための途中経過報告及び研究成果の発表である。次年度から日本教育行政学会や日本教育制度学会などの学会では、事例の比較等の研究発表を行い、教育行政学、教育制度学の専門家から意見をもらい、分析枠組をさらに修正し、また追跡調査を行う。最終年度では、上記の研究成果を学術論文にし、また最終報告書にまとめ、関係機関への発送によって、社会・国民への発信を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【物品】本研究課題にかかわる文献資料の収集およびデータ化の作業等は自宅のデスクトップパソコンで行ったため、購入する予定であったノート型パソコン、ICレコーダー、ソフトウエアは未購入のままである。しかし、次年度から複数の自治体への出張、インタビュー調査を行わなければならない。上記の物品は調査中、迅速にデータの整理を行うことができるものとして必要である。また、各種印刷作業に伴い、プリンタ用トナーカートリッジが必要になる。 【国内旅費】本年度予定していたX自治体への調査は、調査協力者の都合により、管理職人事担当者へのインタビュー調査、女性管理職への追跡調査は次年度に行うことになったため、その旅費は未使用のままである。次年度からX自治体への調査だけではなく、予定しているY自治体への調査も行うため、その旅費が必要である。また、上記の複数の事例を比較し、その研究成果発表のための旅費も必要である。 次年度からは事例研究を中心に進めるため、まず、調査中、迅速にデータの整理を行うことができるものとしてノート型パソコン、ICレコーダー、ソフトウエア、また各種印刷作業に伴うプリンタ用トナーカートリッジを速やかに購入する。また、X自治体とY自治体へ出張し、行政資料を収集し、教育委員会の学校管理職人事担当者へのインタビュー調査等を行うことなど、そのための旅費を使用する。さらに、調査から得られた情報、資料、インタビューのデータを整理するため、人件費及びテープ起こしの費用も必要である。最後に、事例調査から得られた研究成果を学会にて発表し、学術論文としてまとめる予定があり、その旅費及び複写費等が発生する。
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