2013 Fiscal Year Research-status Report
大動脈瘤発生のメカニズム解明による新たな大動脈瘤破裂予測因子の発見
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25870553
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田爪 宏和 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10648273)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / 慢性炎症 |
Research Abstract |
本研究は、大動脈瘤患者の検体およびモデルマウスを分子生物学的手法で解析し大動脈瘤発生の機序を詳細に解明することで、「慢性炎症」の重要な鍵因子であるAngiopoietin-like protein 2(Angptl2)を大動脈瘤径の拡大あるいは破裂の予測因子として臨床応用へ展開するための研究基盤を確立することを目的としている。 平成25年度は大動脈瘤モデルマウスを用いて、Angptl2、マトリックスメタロプロテアーゼ9、2(MMP-9、2)および他の炎症性サイトカインの発現解析と組織学的解析を進めた。また、ヒト大動脈瘤患者の血清Angptl2 濃度をELISA 法にて測定し、大動脈瘤径および喫煙歴などとの関連性について解析を行なった。 具体的には、薬物投与による大動脈瘤モデルマウスを作製し、大動脈瘤形成に至るまでの期間、継時的にAngptl2 およびMMP-9、MMP-2、炎症性サイトカインの発現変化を解析するとともに組織像の変化について解析を行なった。 また大動脈瘤患者の検体を用いた解析については、患者血清中のAngptl2 濃度と大動脈瘤径や喫煙歴・高血圧症の有無などの背景因子に加え、他の炎症マーカーとの相関について解析を行なった。さらに治療を受けた患者について、術後経過と血清Angptl2 濃度の変化の追跡も開始している。 引き続きこれらの研究を進めることにより、致死的疾患でありながら現在のところ外科的手術か血管内治療以外に効果的な治療法が存在しない大動脈瘤に対し、早期の診断・さらに低侵襲な治療に新たな道を開くために必要な「大動脈瘤発生機序の解明」に寄与することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルとしては使用するマウスはApoE-KOマウスが適切であり、1回の解析で多数を使用するため、飼育の面から個体数を揃えることに時間を要していること、ヒトのサンプルに関して当初予定していた人数よりもやや少なめで推移していることから、研究成果について学会などで発表するために充分な量のデータが平成25年度中に得られなかったが、計画した内容について変更や再検討を要するような状態ではない。 また共同研究の中では、大動脈瘤の成因の一つとされている動脈硬化の初期の段階においてAngptl2が重要な役割を果たしていることを明らかにする(Horio E., Arterioscler Thromb Vasc Biol., 2014)など、大動脈瘤発生のメカニズムに関連する研究成果を着実に挙げているところである。 これらのことから「おおむね順調」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度の研究において個体数の問題から統計学的解析にまで至らなかったin vivoの実験について、データの収集を全力を挙げて行う。特に使用するマウスの確保については、同じ研究室の他の研究者にも協力してもらうことで対応を始めている。これによりモデルマウスでの解析を加速させることにしている。 ヒトサンプルについては、大動脈瘤患者数に影響されるため介入は困難であるが、仮に症例数の確保が困難となった場合にも対応できるよう、他の施設への協力依頼についても準備を進めているところである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス飼育部屋の都合で、個体数を増やすためのマウス購入が予定よりも少なかったことに加え、解析に使用する試薬の必要量が予定よりも少なくなったため次年度使用額が生じたものである。 次年度(平成26年度)においては、モデルマウス作製数を当初予定よりも増加する予定であり、このための物品費として使用することを予定している。また、研究成果についての発表討論に加え、他の研究者とのさらなる情報交換のため、関連する学会での発表・参加を行うことも検討している。
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[Journal Article] Role of Endothelial Cell-Derived Angptl2 in Vascular Inflammation Leading to Endothelial Dysfunction and Atherosclerosis Progression2014
Author(s)
Eiji Horio, Tsuyoshi Kadomatsu, Keishi Miyata, Yasumichi Arai, Kentaro Hosokawa, Yasufumi Doi, Toshiharu Ninomiya, Haruki Horiguchi, Motoyoshi Endo, Mitsuhisa Tabata, Hirokazu Tazume, Zhe Tian, Otowa Takahashi, Kazutoyo Terada, Motohiro Takeya, Hiroyuki Hao and Yuichi Oike
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Journal Title
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
Volume: 34
Pages: 790-800
DOI
Peer Reviewed
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