2014 Fiscal Year Research-status Report
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25870689
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
杉浦 功一 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (70453470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民主化 / 民主化支援 / ガバナンス / 中東 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主要な国際アクターによる、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプトなどに対する、人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・ 支援、市民社会支援につき、支援の決定と実施のレベルに分けて調査・比較する。26年度は、引き続き文献やウェブで情報を収集するとともに、国内外で実地調査を行った。2014年9月には(援助モデルとされる)日本のローカル・ガバナンスについて調査を実施した。また、「非民主的」な国家に対するガバナンス(民主化)支援・関与の例として、9月に中国、2015年2月にベトナムを訪れ、民主化・ガバナンス改革の動向と支援の効果を可能な範囲で調べた。 研究成果として、2014年5月、論文「民主化―デモクラシーの実現不可能性」(大庭弘継・高橋良輔編『国際政治のモラル・アポリア―戦争/平和と揺らぐ倫理』所収)を公表した。国家の民主化支援を含めた幅広い課題について、民主化支援の二重基準など直面するアポリア(難問)を取り上げ考察している。6月には、論文「デモクラシー重視の開発援助―ポスト2015年へ向けた民主的ガバナンスの評価と援助戦略―」(『国際開発研究』Vol.23、No.1)を公表した。そこでは、ポスト・ミレニアム開発目標の動きと、多様なデモクラシー・ガバナンス評価の試み、インドネシア、カンボジア、ルワンダ、フィリピンなどへの開発援助戦略を、デモクラシー重視の観点から検証した。10月に、日本政治学会研究大会で「中東の政治変動に対する民主化支援の検証」という学会報告を行い、2015年3月に、論文「『アラブの春』に対する民主化支援の検証」(『和洋女子大学紀要』第55集)として刊行した。同論文では、チュニジア、エジプト、イエメンといった諸国に対する、国連、EU、アメリカによる支援戦略とその効果を検証し、戦略的利益の優先の問題などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、複数のアクターによる複数の国家への民主化支援、特に人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・支援、市民社会支援の事例について、(1)対象国の民主化の段階が異なる中で、各支援アクターが支援内容を決めた根拠や理由、(2)各アクターの支援が対象国の民主化にもたらした効果を明らかにし、それらを比較することで、どのように決定された、どのような内容の活動が、どのような国際的・国内的環境の下で、民主化の過程(の一部)に正ないし負の影響を与えうるか明らかにすることである。そのため、本研究は、主要な国際アクターによる、ミャンマー、ルワンダ、フィリピ ン、カンボジア、インドネシア、エジプトなどに対する、人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・ 支援、市民社会支援につき、3年間を通じて調査・比較する。26年度はエジプトを中心に民主化支援の事例を調査・分析を行うことを計画していた。 26年度は、カンボジア及びインドネシアの調査のフォローや、その他の国の事例分析は比較的順調に進み、エジプトについても二次資料の収集・分析は進んだ。しかし、エジプトを含む中東の治安状況の悪化により、エジプトへの現地調査は、26年度は断念せざるを得なかった。そこで、欧米的な基準では「非民主的」な国家とされるものの経済発展が進む中国とベトナムを比較対象として取り上げ、民主化・ガバナンスの状況と市民社会の現状及び国際的な支援・関与について考察を行った。結果、「デモクラシー」の価値観の違いやその国際的影響、二重基準の存在や支援分野の優先順位の相違など、経済発展が進む国に対する先進諸国や国際機関の支援・関与戦略が明らかとなった。それにより、今後の本研究における民主化支援の比較分析がいっそう包括的なものとなることが期待できる。しかし、エジプトの調査ができなかったため、本来予定されていた計画の一部は達成できなかったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、最終年度は、国連、EU、アメリカ政府、日本政府による、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプト各国に対する民主化支援について、(1)民主化支援活動、特に人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・支援、市民社会支援の実施とその内容を決めた根拠や理由、(2)それら支援が民主化全般及び各セクターにもたらした効果をまとめ、①支援アクター、②活動の内容、③各国の民主化の段階や国際的・国内的環境を軸に比較分析し、どう決定された、どのような内容の活動が、どのような国際的・国内的環境の下で、民主化の過程に好ましい(あるいは逆の)影響を与えうるか、一般的知見を導き出す予定であった。 しかし、すでに26年度において、予定されていたエジプトなど中東地域における現地調査が実施できなかった。そのため、27年度もエジプトを中心に調査を行うことを計画している。ただし、エジプトでは大統領選挙の実施をめぐって不安定な情勢が依然続き、2015年4月時点でも、自称「イスラーム国」の問題を含め政情は不安定で治安の悪化も顕著である。そのため、今年度も現地調査が可能であるかは不透明であり、場合によっては現地調査の延期や中止、事例の変更を考える可能性がある。他方で、カンボジアやインドネシアなどこれまで調査を行ったり、事例として検証を進めてきたりした国についても、政治情勢の変化とその民主化(支援)への影響を引き続き注視しており、必要に応じて再調査を行うかもしれない。特に総選挙が実施予定のミャンマーへの調査を考えている。さらに、これまで取り上げてこなかった国の事例や、支援側の政府機関や国際機構などへの調査の可能性もある。 これらを踏まえて、最終年度として、研究の完成へ向けて作業を進めたい。その過程では、学会報告や学術雑誌、著書を通じた公表を試み、研究内容の改善を心がけていく。
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Causes of Carryover |
エジプト調査を26年度に予定していたが、政情の急速な悪化により、エジプトの専門家などの意見を踏まえて、現地調査を断念せざるを得なかった。主にその費用分が、27年度に繰り越されることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度調査できなかったエジプトへの1週間~10日程度の調査を検討している(約40万円程度)。加えて、当初から計画していたように、情報の収集・分析の状況に応じて、補足的にアジア諸国を中心とする1~2 カ国で10 日程度の現地調査含む情報収集を行うことを考えている。
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Research Products
(4 results)