2015 Fiscal Year Research-status Report
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25870689
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
杉浦 功一 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (70453470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民主化 / 民主化支援 / ガバナンス / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主要な国際アクターによる、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプトなどに対する、人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・ 支援、市民社会支援につき、支援の決定と実施のレベルに分けて調査・比較するものである。27年度は、前年度に引き続き文献やウェブで情報を収集するとともに、国内外で実地調査を行った。2015年11月には、民主化を占う重要な総選挙が行われるミャンマーで、選挙運動および市民社会の動向と民主化支援について実態調査を実施した。 本研究の成果については、いまだ最終的な公表にはなっていないが、上記の作業を通じていくつかの関連した研究成果を生んだ。まず、藤田憲・松下冽編『変容する国際秩序と覇権にゆれる途上国(仮)』(ミネルヴァ書房)所収の単著論文「紛争後の平和構築―オーナーシップと民主化の課題を中心に」として2016年度に公表予定である(原稿提出済み)。同論文では、平和構築が直面しているジレンマや課題について、カンボジアやルワンダなどでの実態を踏まえて、「人々中心の視点」からオーナーシップと民主化、民主化支援に注目して整理したものである。そこでは、過去の事例を踏まえて、平和構築の目標の一つである民主化を進めるにあたって多様なアクターが参加する「民主的」パートナーシップの重要性と課題にも触れている。また、2016年6月には国際開発学会で「ルワンダのガバナンスに対する国際関係の影響の検証」を報告予定である。同報告では、本研究の成果の一部を生かして、ルワンダの民主化やガバナンスに対する民主化支援を含めた国際的な影響を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、複数のアクターによる複数の国家への民主化支援、特に人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・支援、市民社会支援の事例について、(1)対象国の民主化の段階が異なる中で、各支援アクターが支援内容を決めた根拠や理由、(2)各アクターの支援が対象国の民主化にもたらした効果を明らかにし、それらを比較することで、どのように決定された、どのような内容の活動が、どのような国際的・国内的環境の下で、民主化の過程(の一部)に正ないし負の影響を与えうるか明らかにする。そのために本研究は、主要な国際アクターによる、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプトなどに対する、人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・ 支援、市民社会支援につき、3年間を通じて調査・比較する。27年度は、前年度に延期したエジプトを中心に民主化支援の事例を調査・分析を行い、研究をまとめることを計画していた。 27年度は、これまでの調査のフォローや、その国の事例分析が比較的順調に進んだ。しかし、エジプトを含めた中東の治安状況が引き続き悪い状態で、エジプトへの現地調査は、27年度も断念せざるを得なかった。他方で、軍事政権から民政移管が行われ、最初の本格的な選挙が実施されたミャンマーについて、実地調査を含めて、民主化・ガバナンスの状況と市民社会の現状及び国際的な支援・関与について考察を行った。結果、民主化の移行期における先進諸国や国際機関の支援・関与戦略の一端が明らかとなった。それによって、本研究における民主化支援の比較分析がいっそう包括的なものとなることが期待できるが、今後の動きの追跡調査が必要である。また、エジプトの調査ができなかったため、本来予定されていた計画のまとめは今年度中には達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、最終年度は、国連、EU、アメリカ政府、日本政府による、ミャンマー、ルワンダ、フィリピン、カンボジア、インドネシア、エジプト各国に対する民主化支援について、(1)民主化支援活動、特に人権に関する外交圧力・対話、選挙監視・支援、市民社会支援の実施とその内容を決めた根拠や理由、(2)それら支援が民主化全般及び各セクターにもたらした効果をまとめ、①支援アクター、②活動の内容、③各国の民主化の段階や国際的・国内的環境を軸に比較分析し、どう決定された、どのような内容の活動が、どのような国際的・国内的環境の下で、民主化の過程に好ましい(あるいは逆の)影響を与えうるか、一般的知見を導き出す予定であった。 しかし、すでに26年度と27年度連続で、予定されていたエジプトなど中東地域における現地調査が実施できなかった。そのため研究期間を1年延長した。28年度もエジプトを中心に調査を行うことを計画している。しかし、エジプトでは不安定な情勢が続いている。そのために、今年度も現地調査が可能であるかは不透明であり、場合によっては現地調査の延期や中止、事例の変更を考える予定である。他方で、1年延長できたことにより、カンボジアやインドネシア、ミャンマーなどこれまで調査を行ったり、事例として検証を進めてきたりした国についても、その後の政治情勢の変化とその民主化(支援)への影響を引き続き調査を続け、研究成果に生かす予定である。これらを踏まえて、最終年度として、改めて研究の完成へ向けて作業を進めていきたい。その過程では、学会報告や学術雑誌、著書を通じた公表を試み、研究内容の改善を心がけていく。
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Causes of Carryover |
エジプト調査を27年度に予定していたが、政情の悪化が続いたことにより、エジプトの専門家などの意見を踏まえて、現地調査を断念し、研究期間を延長せざるを得なかった。主にその費用分が、28年度に繰り越されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度調査できなかったエジプトへの1週間~10日程度の調査を検討している(約40万円程度)。加えて、情報の収集・分析の状況に応じて、資料の収集を行うことを考えている。
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Research Products
(1 results)