2013 Fiscal Year Research-status Report
クルマエビにおけるD-グルタミン酸の生合成機構および生理機能の解明
Project/Area Number |
25870858
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 尚子 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (30392533)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | D-グルタミン酸 / クルマエビ / D-アミノ酸 |
Research Abstract |
水生無脊椎動物の諸組織中には、D-アラニンとD-アスパラギン酸が存在していることが知られており、D-アラニンは甲殻類や二枚貝では海水順応過程でL-アラニンとともに蓄積されることから、細胞内等浸透圧調節の主要なオスモライトの1つであると考えられている。一方、クルマエビの生殖腺では、動物組織ではほとんど検出されていなかったD-グルタミン酸が特異的に存在しており、全D-グルタミン酸の50%以上をD体が占めていることが明らかとなった。そこで、本研究では、クルマエビ生殖腺に存在するD-グルタミン酸の生合成機構および生理機能を解明するために、高浸透圧環境下における精巣のD-グルタミン酸含量の変動を明らかにするとともに、精巣に存在する代謝産物およびタンパク質を網羅的に解析することで、D-グルタミン酸の代謝系に関わる因子の全容を明らかにすることを目的とした。 本年度は、まずクルマエビ各生殖組織におけるD-グルタミン酸の分布を明らかにした。オスの生殖腺を、精巣、輸精管および貯精嚢に分け、各組織に存在するD-グルタミン酸含量の測定を行ったところ、いずれの組織においてもD-グルタミン酸は検出されたが、特に輸精管において多量のD-グルタミン酸が存在しており、全グルタミン酸に占めるD体の割合はおよそ80%を占めていた。さらに、D-グルタミン酸抗体を用いて免疫染色を行ったところ、精巣の精祖細胞にD-グルタミン酸の分布が認められたため、D-グルタミン酸は精子の形成に関係していることが示唆された。また、クルマエビを高塩濃度海水に順応させたところ、精巣のD-アラニン含量の増加は認められたが、D-グルタミン酸含量の著しい増加は認められなかったことから、精巣におけるD-アラニンとD-グルタミン酸の生理機能は異なるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、クルマエビ生殖腺におけるD-グルタミン酸の分布を明らかにするとともに、高浸透圧環境下における精巣のメタボローム解析を行う予定であった。生殖腺におけるD-グルタミン酸の分布については、各生殖組織におけるD-グルタミン酸含量の測定を行い、D-グルタミン酸抗体による免疫染色も順調に進めることができたが、クルマエビの飼育環境のコントロールに難航したため、メタボローム解析まで到達できなかった。しかしながら、そのかわりに次年度行う予定であったD-グルタミン酸生合成酵素活性の検出に成功できたことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度行えなかったクルマエビ生殖腺のメタボローム解析を行うとともに、次年度に予定していた高浸透圧環境下におけるクルマエビ精巣のタンパク質発現変動の解析を合わせて行うことで、D-グルタミン酸の代謝系に関わる因子の全容を明らかにしていく。また、次年度にD-グルタミン酸生合成酵素の活性測定を行う予定であったが、D-グルタミン酸生合成酵素の活性は本年度確認することができたため、その分メタボローム解析に専念することができる。また、D-グルタミン酸生合成酵素の活性測定の際に、精巣のタンパク質抽出条件の検討も行ったことから、プロテオーム解析についても順調に遂行できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、試料である活きたクルマエビをできるだけ良い状態でサンプリングすることが重要であるが、飼育環境のコントロールに難航し、当初予定していたメタボローム解析まで到達できなかった。また、D-グルタミン酸抗体の免疫染色も今年度は予備検討までで終了したため、メタボローム解析および免疫染色の本試験にかかる費用を翌年度に持ち越すこととなった。 翌年度に持ち越した助成金は、今年度達成できなかったメタボローム解析および免疫染色にかかる委託分析費用として使用する。翌年度分として請求した助成金については、プロテオーム解析を行うための物品費や委託費として使用する。
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Research Products
(3 results)