2013 Fiscal Year Research-status Report
認知言語学に基づいた英語語彙・構文ネットワーク構築のための学習法開発
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25870898
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
長谷部 陽一郎 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (90353135)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 語彙リスト開発 / データベース開発 |
Research Abstract |
本研究は、実践的な運用能力の獲得を目指す英語学習者が既存知識を最大限に利用しながら、さらに高度な知識とスキルを身につけるための学習システム開発を行うものである。認知言語学における使用依拠モデルを理論基盤としており、豊富な用例から断片的な既存知識に有機的連関とまとまりを生じさせ、各学習者の中に豊かな言語知識ネットワークを構築することを目標としている。 研究の1年目(2013年度)には語彙リストの第1版を作成した。語彙項目の選定にあたってはCorpus of Contemporary American English(COCA)を中心とするコーパスから得た頻度情報と既存の複数の語彙リストを元にして作業を行った。語彙項目を互いに関連づけてネットワーク的に知識化できることを重視している点に本リストの独自性がある。 各語に対しては、基本的な語義の他に、TED(http://ted.com)のデータを利用して取得した複数の使用例を用意し、全体を検索可能なデータベースとして利用できるウェブ・インターフェイスを設計・実装した。これによって、英語での使用例に加えて、日本語訳や該当部分の音声・動画にアクセスすることが可能になる。 TEDでは2014年4月において約1600件の英語プレゼンテーションのスクリプトと多言語による対訳テキスト(日本語は約1300件)が各種プログラミング言語を通じてアクセスできる形で提供されており、このサービスを効果的に用いることは、発信的な側面に焦点を当てた英語学習に新たな可能性を拓くものと思われる。TEDのデータは上記サイトのUsage PolicyとCreative Commonsライセンス(BY-NC-ND)の範囲内で自由に利用できるため、本システムは英語の学習・教育活動に広く資することが期待される。 以上の成果(語彙リストと用例データベース・システム)は2014年度に部分的公開を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画の通り、語彙リストの第1版を完成し、これを最大限活用するための用例データベース・システムを開発した。また、その過程で、認知言語学における使用依拠モデルを言語教育・言語学習の実践に利用する方法について多くの知見が得られた。これは最終的に本研究の成果をさらに応用するための重要な手がかりになると思われる。 一方で、研究計画には一部変更を施す必要が生じている。当初は研究の1年目に自学自習用オンライン・システムの開発を予定していたが、いくつかの要因により、これは研究の2年目(2014年度)に行うこととなった。また、当初は2年目前半から予定されていた実際の学習者の参加による効果検証のプロセスを2年目後半以降に実施することとなった。 上記のような変更の具体的な要因は以下の通りである。(1)初年度に研究用途で用いていたCOCAコーパスには当初、その利用に大きな制約(ウェブ経由での利用)があったが、現在は全データをダウンロード可能となっており、より緻密な分析を行える状況となった。(2)TEDのデータを利用した用例検索システムの開発に予定より多くの時間を割くことになった。 いずれも、研究計画作成の時点では予期していなかったことではあるが、研究の停滞を意味するものではなく、むしろその価値を高めるための変更である。また、研究期間を通じて最終的に得られる成果の見込みについて変更はない。
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Strategy for Future Research Activity |
上で示したように、当初の研究計画に比べると現在の進捗は若干遅れている。しかし、2014年度前半に語彙リストの第2版と自学自習システムを完成させ、用例データベース・システムと連携させる。また、2014年度後半からは実際の学習者を募ってのテスト・プログラムを実施し、総合的な評価、改良、システム全体の公開を行う予定である。これにより、研究の3年目である2015年度には予定通りシステムの評価と改良に多くの時間を充てることができる。したがって全体的な研究の遂行に支障はない。
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Research Products
(2 results)