2013 Fiscal Year Annual Research Report
独居の認知症高齢者に対する情報支援機器の設置効果検証と適応対象群の抽出
Project/Area Number |
25882053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
西浦 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 流動研究員 (60710796)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 認知症 / 高齢者 / 情報支援機器 / 時間的見当識障害 / 生活行動 |
Research Abstract |
○独居で生活している軽度から中等度の認知症者を対象とした、時間的見当識障害レベル、および伴って生じる生活行動上の問題に関する調査 時間的見当識障害調査では、ある1日の中で10時30分、12時30分、15時30分に時間を尋ねる質問を繰り返し、分単位で回答を得た。実時刻と回答された時間の差の絶対値(分)をΔTとした。対象とした18名(平均MMSE得点= 22.4±5.7)について、10時30分、12時30分、15時30分におけるΔTは、それぞれ23.9±19.7、10.8±7.1、13.8±16.2であった。すなわち、10時30分における時間のずれが大きく、午前中に時間的見当識障害が重度である可能性が示唆された。 生活行動上の問題に関する調査では、生活の中で忘れやすい予定、電子カレンダー活用の可能性に関し、複雑な言語コミュニケーションが困難な1名を除く17名の高齢者に対し、30分程度の半構造化インタビューを行った。約半数が、デイサービス、通院、服薬などの日常生活行動について「忘れやすいと感じている」と回答した。また、約9割が「電子カレンダーを生活の中で活用できると思う」と回答した。さらに「現在時刻の表示」、「法事などの個別行事」を追加してほしい、といった意見もあった。現在の電子カレンダー表示画面については、15名が見やすいと回答した。 追加で実施した、作業療法士およびケアスタッフへのインタビューでは、高齢者の居宅へ安全に機器を導入するために、電子カレンダーのカバーとスタンドが必要であると意見をいただいた。 ○電子カレンダーの情報呈示画面の改良と介入効果検証の準備 現在時刻の表示、予定の時間帯表示の変更、個別行事入力画面の改良など、新しい画面の開発を行った。また、電子カレンダーのカバーとスタンドを作成するなど、平成26年度の介入効果検証に向けた準備も並行して進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね実施計画に沿い、軽度から中等度認知症高齢者を対象とした時間的見当識障害レベル、それに伴って生じる生活行動上の問題を把握する、という目標を達成することができた。対象者の人数が想定していたより少なかった原因として、調査に対する拒否、心身の負担を考慮した辞退(ケアマネージャーやご家族の判断を含む)、入院、等の理由により、研究参加の協力が得られないケースが数名あったことが挙げられる。今後も、研究参加者のリクルートを継続し、協力が得られる場合には調査を継続する予定である。 さらに、調査を踏まえ電子カレンダーの情報呈示画面を改良し、介入効果検証の準備を行う、という2つ目の目標も達成した。当初の計画では想定していなかったが、調査を進めていく中で、生活場面へ電子カレンダーを安全に導入するにあたり、カバーとスタンドの作成が必要であることが明らかとなった。そのため、電子カレンダーの導入準備として、機器に適したタブレットカバーとスタンドの開発および作成も追加で実施した。また、対象人数分の電子カレンダー、活動量計、センサー付きカメラなど準備し、介入実験の環境を想定した試用を行った。平成26年4月頃より、電子カレンダーの設置効果検証を開始するにあたり、順調に準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「情報支援機器導入により生活行動に変化が認められるかどうか、RCTにより実証する」、という平成26年度の目標に基づき、4月頃より情報支援機器の設置効果検証を実施する。軽度から中等度認知症のある対象者の居室に電子カレンダーを12週間設置し、画像、文字、音声により情報呈示を行う。センサー付カメラで、機器にアプローチし情報察知する回数を計測する。また、介入開始後および終了前1週間には、対象者に9時から18時まで加速度計(活動量計)を着用し、単位時間あたりの活動量を計測する。(カメラおよび活動量計の導入は同意の得られた者に限る。)非介入期では、居室における時間に関する刺激は音声情報のない時計、カレンダーのみとする。対象者を2群化し、全ての対象者に介入を行うクロスオーバーランダム化比較対照試験として行う。申請者は居宅訪問し、機器使用状況等を確認する。介入期および非介入期前後には、認知機能評価、ADL評価、認知症行動障害の評価、生活行動に関する主介護者に対するヒアリングを行う。介入期および非介入期前後の各種評価結果を比較し、機器の有効性について分析する。4月からはデイサービスに通所している高齢者15~20名、7月頃より予防事業に通う高齢者15~20名を対象に実施する予定である。 実験終了後、「情報支援機器の設置効果を得られる適応対象群の特性を明らかにする」という目標に基づき、行動障害が減る、認知機能レベルが維持されるなどの機器設置効果の有無や、性別、年齢、など、機器の適応対象群の特性を明らかにする。平成27年2月頃には、福祉機器の普及が進んでいる豪州、The Independent Living Centreを訪問、視察し、効果的な情報呈示方法を検討する。機器適応対象群の特性が支援者に伝わるよう、得られた知見を分かりやすくマニュアルに追記する。
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