2013 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム動態からみる近代中央アジアの遊牧社会史研究:クルグズを中心に
Project/Area Number |
25884070
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 徹 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 研究助手 (90704809)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 中央アジア / 中央ユーラシア / イスラーム / ロシア帝国 / 内陸アジア / 遊牧 / キルギス / クルグズ |
Research Abstract |
本研究はロシア帝国統治下の中央アジア遊牧社会を、旧ソ連領と中国との境界に位置する天山山脈周辺に居住するクルグズ(キルギス)を中心としながら、イスラーム地域としての側面に焦点を当てて考察することを目的としている。 本研究は大きく三つの柱から成り立っている。第一に、クルグズ遊牧社会におけるイスラームの動態をクルグズおよび中央アジアというローカルな文脈の中で位置づける作業である。この点について、本年度は『マナス』をはじめとするクルグズの英雄叙事詩を収集、読解し、そこに投影されたクルグズのイスラーム意識を析出した。 本研究の第二の柱はクルグズ遊牧社会を、中央アジアの枠組みを超えた、より広域なイスラーム世界の潮流に位置づける作業である。この点について本年度は、まず20世紀初頭に執筆された聖地巡礼(ハッジ)のためのマニュアルを収集し、その中でクルグズをはじめとする遊牧民の位置づけを析出した。さらに、3月にはカザフスタン共和国国立中央公文書館において史料調査を実施した。同公文書館に収められている史料は中央アジア内の一行政官庁において作成されたいわば「ローカルな」公文書である。しかしそこにはハッジやイスラーム改革運動といったグローバルな潮流とクルグズの伝統的首領層との関係についても数多くの言及があり、本研究にとって大きな収穫を得ることができた。 本研究の第三の柱は研究の発信である。この点について、本年度はとくに英語での論文執筆に意を注ぎ、合計2本の英語論文を執筆・投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体としては良好に進展している。とはいえ、本年度は当初の計画では3月にウズベキスタン共和国国立中央文書館ならびに同共和国科学アカデミー東洋学研究所写本部での調査を約2~3週間程度予定していたが、本務との兼ね合いから断念せざるを得なかった。翌年度の夏に調査を行うことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に増して翌年度平成26年度(とりわけ後期)は本務における仕事量が倍増することが予想される。このため翌年度はなるべく早い時期――夏期(8月~9月)――にウズベキスタン、キルギスおよびトルコでの海外調査を集中的に実施する。この成果に基づいて、論文執筆ならびに学会での口頭報告の準備をする。とりわけこれまでの研究成果をモノグラフの形で出版することが急務である。夏期調査の成果を加味しつつ、2014年末までに第一稿を完成させたい。
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Research Products
(2 results)