2013 Fiscal Year Annual Research Report
光励起電子スピンを用いた動的核偏極による希少天然存在核の検出
Project/Area Number |
25887054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
立石 健一郎 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, リサーチアソシエイト (80709220)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 磁気共鳴 / 動的核偏極 |
Research Abstract |
本研究は、存在量が少なく、感度が悪い13Cスピンなどの検出効率を、スピン偏極率を向上させることによって大幅に上昇させることを目的である。ペンタセンの光励起三重項電子スピンによる動的核偏極法を用いて、一旦高偏極1Hスピンを生成し、それを13Cスピンに移す、という手順で13Cスピンの高偏極化を実現する。 今年度は、高偏極1Hスピンの生成に関する研究を行った。まず、ペンタセンの三重項電子の励起に適したレーザを開発した。励起波長・パルス幅・繰返周波数はそれぞれ589 nm、126 ns、1 kHzである。次に、試料のスピン格子緩和時間を測定したところ、高磁場の方がスピン格子緩和時間が長いという結果を得たので、既存の0.4テスラから0.6 テスラへ磁場を変更し、それに合わせた動的核偏極法の実験装置を作成した。 これらの装置改良を評価するため、0.05 mol%の重水素化ペンタセンをドープした部分重水素化p-ターフェニルの単結晶を用いて1Hスピン高偏極化実験を行った。これまで使用していた色素レーザ(596 nm、1 us、50 Hz)に比べて、初期偏極向上速度は約6倍向上した。また、レーザ照射しながら測定したスピン格子緩和時間は、18分から28分へと伸びた。以上の2点の改良により、これまで1Hスピンの最大到達偏極率・偏極時間は34%、40分だったものが、40%、10分へと向上した。 今年度は、実験装置の評価のため単結晶試料を使用したが、来年度はガラス試料中の1Hスピンの高偏極化に取り組む。来年度前期は、今年度作成した装置を用いて1Hスピン偏極率10%以上を目指し、後期は希少天然存在核スピンの高偏極化に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザの開発が若干遅れたため、実験スケジュールが全体的にやや遅れている。しかしながら、新たなレーザや実験装置からほぼ予定通りの結果が得られたので、全体的には順調に進展してる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、単結晶試料を用いて新たな装置類の性能評価を行った。次年度は、これらを用いてガラス試料中の1Hスピンを10%以上偏極させることに取り組む。そして、二重共鳴回路を作成し、交差分極法を用いて、他の希少天然存在核へとその高偏極状態を移し高感度測定を実現する。
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Research Products
(3 results)