2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌ゲノミクス手法を用いた殺菌剤作用点同定基盤の確立およびその応用
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25892024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20579263)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 作用機構 / 全ゲノムシークエンス / 植物病原菌 |
Research Abstract |
これまでに、重要植物病原菌であるトウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)をモデルとして、興味深い新規殺菌剤を含む多重薬剤耐性変異株を人為的に作出し、その全ゲノム配列を決定している。2013年度は、この多重変異株のゲノム配列と親株(野生株)のゲノム配列の間で異なっている配列を「薬剤耐性変異点」の候補として解析をすすめ、いくつかの薬剤耐性遺伝子(TFR1、TFR2、POL2、POL4)について変異遺伝子の有力候補を見つけることに成功した。TFR1はファルネシルトランスフェラーゼ遺伝子を、TFR2はゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ遺伝子をコードしていることが示唆され、これらの遺伝子の1アミノ酸変異が薬剤耐性化を引き起こしていると考えられる。Tolnifanideの作用機構はこれまで全くわかっていなかったが、この殺菌剤の作用性・耐性メカニズムにはタンパク質のプレニル化過程が関与していることが強く示唆された。また、ポリオキシン耐性遺伝子Pol2およびPol4はそれぞれ、フェロケラターゼ遺伝子およびポルフォブリノーゲンデアミナーゼ遺伝子をコードしており、これら遺伝子の1アミノ酸変異が薬剤耐性化を引き起こすことが強く示唆された。両遺伝子はヘムの生合成に必須の遺伝子として知られており、これまで知られていなかったポリオキシンの耐性化とヘムの生合成過程の強い関連性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、全ゲノム解析から得られた薬剤耐性変異点の候補リストの中から、各殺菌剤の耐性化に関わると考えられる遺伝子を4種類推定することに成功した。今後、薬剤耐性遺伝子であることの直接的な証明が必要になるが、こうした手法からの薬剤耐性遺伝子の同定や作用機構の解明はこれまでにもほとんど例が無いことから、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度に薬剤耐性遺伝子の有力候補として絞り込んだ4遺伝子についてさらに解析を行い、薬剤耐性遺伝子としての直接的な証明実験をすすめる。具体的には、TFR1、TFR2、POL2、POL4それぞれの交配子孫株について、有力候補遺伝子のシークエンスを更に詳細に行い、薬剤耐性の形質と強く連鎖していることを示す。さらに、遺伝子組換え手法によりそれぞれが薬剤耐性遺伝子であることを直接的に証明することを試みる。まず、それぞれの薬剤耐性株について、野生株由来の正常な遺伝子(変異の入っていない遺伝子)を再導入することにより、薬剤耐性株が薬剤感受性株に変化するか否かを調査する。遺伝子組換えにはプロトプラスト-PEG法を用いる。また、これとは逆に、野生株について、薬剤耐性株由来の変異遺伝子を導入することにより、薬剤感受性株が薬剤耐性株に変化するか否かを調査する。これら両実験により、それぞれの有力候補遺伝子が真の薬剤耐性遺伝子であることを証明する。
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Research Products
(6 results)