2013 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌におけるダイオキシン受容体を介した増殖および浸潤・転移抑制メカニズムの解明
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25893022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日吉 裕美 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10406530)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 乳がん / ダイオキシン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、乳がんにおける芳香族炭化水素受容体 (AhR) を介した増殖および浸潤・転移抑制メカニズムの解明を目標とし、当該年度は① AhR が抗乳がん作用を発揮し得る乳がんタイプの同定、② AhR の抗乳がん作用を制御する因子の探索・同定を試みた。 まず、エストロゲン受容体 (ER) の発現している乳がん細胞株 MCF-7 と発現していない細胞株 MDA-MB-231 における AhR の発現を検討したところ、両細胞株ともに AhR の発現が確認された。次に、AhR アゴニストとしてすでに報告されている 2-(4-aminophenyl)-benzothiazole 体の類似体である 2-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-benzothiazole (YL-109) を用いて、乳がん細胞に対する AhR の作用を検討した。YL-109は、乳がん細胞の細胞増殖ならびに浸潤を抑制し、この抑制は AhR アンタゴニスト共存下やsiRNA を用いた AhR 発現ノックダウンにより抑制された。以上の結果から、乳がん細胞における ER発現の有無に関わらず、AhR を介した抗乳がん作用は認められることが示唆された。 研究代表者の所属する研究室では、乳がんの増殖および浸潤・転移を抑制するタンパク質として CHIP を見出したことから、YL-109 の抗乳がん作用に CHIP が寄与しているのではないかと考えた。YL-109 は乳がん細胞において CHIP の発現量を増加し、この増加は AhR 発現ノックダウンにより抑制された。この結果から、YL-109 の抗乳がん作用は AhR シグナルにより発現誘導された CHIP を介している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳がんのタイプを分類する上で一つの指標となるエストロゲン受容体の発現の有無に関わらず、AhR が抗乳がん作用を発揮することを見出した。また、網羅的な解析により得られた因子ではないものの、乳がん細胞において AhR による抗増殖・抗浸潤作用を制御する因子として CHIP が寄与している可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
YL-109 は乳がん細胞において CHIP の発現量を増加し、この増加は AhR 発現ノックダウンにより抑制されたことから、YL-109 の抗乳がん作用は AhR シグナルにより発現誘導された CHIP を介している可能性が示唆された。今後は、CHIP の発現制御機構への AhR の関与について追加検討を行うとともに、YL-109 の抗乳がん作用が CHIP を介しているかについて検証することにより、乳がん細胞において AhR による抗増殖・抗浸潤作用を制御する因子が CHIP であるかを検討する。さらに、マウスに乳がん細胞の皮下移植や尾静脈内注入を行い、 in vivo での乳がん増殖および転移に対して YL-109 が有効であるか検討する。これらの解析を行うことにより、AhR を介した抗乳がん作用のメカニズムを明らかにするとともに、新たな乳がん治療薬の開発へと繋げることができると考える。
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