2016 Fiscal Year Annual Research Report
療育を必要とする児とその家族(父親)への支援に関する検討
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25893083
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石田 史織 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (20710065)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2018-03-31
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Keywords | 家族支援 / 父親 / 療育 / 発達障がい児 |
Outline of Annual Research Achievements |
0~5歳児(未就学児)は発育・発達が著しく伸びる時期であり、育児として保護者の関わりが最も必要とされるが、それに伴って育児不安や負担を訴える保護者は多く、また増加している。各自治体の母子保健活動においても母親やその家族の育児支援に力が注がれており、そのニーズが高いことが伺える。加えて、療育が必要とされる児の場合、保護者の育児負担や不安は特徴的でそれに見合った支援の重要性はより一層求められている。また、現代において育児への父親の参加が重要視され、母親の育児不安を軽減するだけでなく子どもの精神発達を良好にするためにも必要とされている。 しかし、療育を必要とする発達障がい児の家族支援については、実際に育児を担う母親が中心となることが多く、父親に対する支援に関する検討は十分とはいえない。父親は経済的に家族を支えることが主であることが多いため育児や療育への関わり方や必要とされる支援に関する調査の必要性は高いといえる。2014年に実施した父親たちの実態を把握するための基礎調査から、父親の療育を必要とする子どもの育児状況や意識・思い、育児不安や育児不安を解消するための方法に母親との共通点や差異があることが明確になった。他にも、父親たちの必要としている支援の内容から、母親とは違った父親たちへの具体的な支援方法を検討する必要性も示唆された。 基礎調査では、対象者が少数であったためより明確な傾向を示すために今回の調査では、規模を拡大してN県内の就学前児を対象に療育を行っている療育施設を利用している児の父親・母親を対象とした。また、夫婦関係や地域社会との関連などの生活に満足していることは、父親と母親の両者の育児を含めた様々な不安度を低下させるということからも母親に対して同時に調査を行い、母親・父親間と夫婦間での比較を行い、父親に焦点をあてたより具体的な家族支援の検討を目的に研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終調査を実施し、父親と母親双方の状況を比較検討のため療育を必要とする児の育児に関する実情や思いの共通点や相違点、ソーシャルサポートとの関連性を明らかにし具体的な支援を検討することを目的にN県内の就学前児を対象に療育を行っている療育施設(39施設:平成27年度現在) を利用している児の父親・母親を対象とした。調査前に対象者が利用する施設長へ調査協力依頼と調査対象人数の報告依頼を行い、施設長より承諾を得られた施設の対象者でかつご本人の承諾を得られた場合のみ対象とし自記式調査紙郵送法で調査を行った。39施設中、8施設から承諾が得られ対象者470名に対し調査票を配布した。 調査内容については副次的評価項目である(1)基本属性:父親・母親の状況、療育を受けている児の状況、(2)育児に関する実状や思いの共通点や相違点(①子どもに関する父親・母親の認識、②育児状況(療育を必要とする子に関わる時間や関わり方、育児ストレス)、③育児に関する社会との関係は、2014年に実施した基礎調査を元に質問項目を作成し、主要評価項目である(3)ソーシャルサポートとの関連性 ①ソーシャルサポートの利用状況(内容・提供者)は、太田らが作成した項目を参考に、道具的サポート、情緒的サポート、情報的サポート、評価的サポートの4種類とした。4種類の枠組みの中で、山下らが作成した「発達障害の母親が抱える生活困難に関する事例のコード・マトリックス」と藤田らが作成した「ASD児を持つ母親が認知したソーシャルサポート」の項目を参考に、基礎調査の結果を合わせて質問項目を作成し、実際の利用状況を調査した。回収率は、39.1%(n=184)であった。
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Strategy for Future Research Activity |
有効な回答が得られた内容について父親・母親間、夫婦間で(1)基本属性(2)育児に関する実状や思いの共通点や相違点との関係をMann-WhitneyのU検定等を用いて確認する。また、育児に関する社会との関係性を明確にするため(3)ソーシャルサポートとの関連性に関して因子分析等、多変量解析を行い、影響を確認する。その結果を用いて父親に焦点をあてたより具体的な家族支援を検討する。 その結果を関係学会などで発表すると共に調査協力施設へ報告を行う。加えて県発達障がい者支援センターなどでも結果公表について依頼を行う。また、自身の所属する領域ホームページ等への掲載も行う。
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