2015 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル社会変動下のリスクとくらし:先端ミクロ計量経済学を用いた実証・政策研究
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26220502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 康幸 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40322078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 久紀 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40450548)
山田 浩之 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (40621751)
市村 英彦 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50401196)
田中 淳 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (70227122)
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Project Period (FY) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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Keywords | 経済発展論 / 人口オーナス / 人口ボーナス / 高齢化 / 災害 / 貧困問題 / ミクロ計量経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、先進国の超高齢化による「人口オーナス」の問題と、「人口ボーナス」を享受する発展途上国が次々と先進国経済にキャッチアップすることで生じているグローバル社会の変動を、高齢化リスク・災害リスク・貧困リスクという三大リスクの視点から分析するものである。日本と途上国における緻密なマイクロデータの収集・データベース構築と先端的な計量経済学を用いた政策分析とを統合し、学術研究に基づいたエビデンスとして蓄積し国際公共財とすること、人口ボーナスを享受する発展途上国におけるリスクと暮らしの関係についての新たなエビデンスを蓄積することが目的である。 この研究目的に従い、H27年度は三つの研究を行った。第一に、中高年個人を追跡調査する「暮らしと健康の調査(JSTAR)」を基に日本の超高齢化の経験を明らかにする研究を推進し、H28年度の調査準備を進めるとともに、本研究と韓国・中国との国際比較研究を行い学術論文としてまとめた。第二に、JSTAR調査とともに日本と諸外国での自然災害・人的災害への被災調査の拡張と既存データを解析する研究を行った。第三に、日本といくつかの発展途上国におけるフィールド調査・フィールド実験を継続・拡大し、人口ボーナスを享受する発展途上国における人的資本蓄積を推進するための基礎研究として、ボーナスの渦中にある若年層が直面するリスクと暮らしの関係についての新たなエビデンスを蓄積した。具体的な研究については「進捗状況」に詳述する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的達成のため、H27年度は3つの視点で分析を推進。第一は、中高年個人を追跡調査する「暮らしと健康の調査(JSTAR)」を基に日本の超高齢化の経験を明らかにする研究を推進し、H28年度の調査準備を進めた。同様のパネルデータを収集する韓国(KLoSA)・中国(CHARLS)と本研究の国際比較研究を行い、学術論文をまとめ、関連の研究成果を取り入れて、Japanese Economic Review特集号“Conference on Economics of Aging in Japan and Other Societies”をGuest editorとして取りまとめた(2016年度掲載予定)。第二は、JSTAR調査と共に、日本と諸外国での自然・人的災害の被災調査拡張と既存データを解析する研究を行った。福島県双葉町・郡山市、日本の金融危機、フィリピン自然災害被災者、モンゴル遊牧民、四川省地震被災学童、ベトナム自然災害、バングラデシュ中洲貧困地域等の研究を実施、学術研究に基づいたエビデンスとして蓄積する作業を推進した。研究成果の一部はWorld Development特集号のGuest editorとして編集し、2016年度中に公表の予定。第三は、フィリピン・スラム地域のライフスキル構築研究と都市周辺地域の長期貧困ダイナミクスに関する研究、バングラデシュの認知能力・非認知能力改善のための介入研究と女性のエンパワーメント介入研究、インドの胎児期起源仮説の検証と企業家精神介入研究、中国の基礎教育の介入研究、日本の在日韓国・朝鮮人大学生と日本人大学生の向社会的行動に関する実験を実施しミクロデータ収集と解析を推進。NGOや企業CSR活動と連携したプロジェクトは計画以上に進展。中間的成果を議論するため8つ国際研究集会を開催。以上の進捗状況から、プロジェクト全体が概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究目的達成のため、今後は、以下の大きく分ければ三つの視点による分析を推進する。第一に、中高年個人を追跡調査する「暮らしと健康の調査(JSTAR)」の一環としてパネルデータ構築・解析を進め、JSTARデータを同様のパネルデータを収集しつつある韓国(KLoSA)・中国(CHARLS)と比較するためのデータベースの作成と解析・研究推進を行う。第二に、東日本大震災に関するJSTARの仙台調査・災害に関する広島調査とともに、岩沼市における経済実験データ、四川省地震のマイクロ(実験)データ、フィリピン・バングラデシュ・ベトナム・マダガスカルの自然災害被災者データ、モンゴル遊牧民データ、人的災害として原発事故に注目し、双葉町住民・郡山市児童のアンケート調査データ、日本とインドネシアの金融危機データ、カンボジアにおける対人地雷被災データの収集と解析を進め、論文執筆・学会報告など研究活動を推進する。第三に、発展途上国におけるフィールド調査・実験の各プロジェクトを推進する。具体的には、フィリピンにおける世帯形成のダイナミックスを把握するための長期パネルデータの収集継続と解析、NGOと連携したフィリピン貧困地域における若者を対象とした教育プログラム介入の継続と解析、バングラデシュにおいて日系企業のCSR活動と連携した学童の認知・非認知能力改善・女性のエンパワーメントに関する介入研究、中国貧困地域における人的資本促進策としての教師の給与ボーナスの精緻な分析、ラオスにおける零細企業の生産・投資行動解明のための経済実験研究、日本における若者の向社会性に関する経済実験研究を継続・拡大する。それによって、人口ボーナスを享受する発展途上国において、日本と比較しながら、ボーナスの渦中にある若年層が直面するリスクと暮らしの関係についてのプロジェクトを推進する。
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Research Products
(53 results)