2015 Fiscal Year Annual Research Report
DNA二本鎖損傷修復経路選択機構の解明とゲノム編集技術への応用
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26241014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 慎一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70548528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
逆井 良 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10549950)
寺尾 由里 大阪大学, 医学部, 技術職員 (80466846)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
意図したとおりにDNA配列を書き換えるゲノム編集は遺伝子治療のための強力なツールとなり得る技術である。ドナープラスミドの配列をゲノム遺伝子に取り込ませるには、ゲノム上の標的部位近傍にDNA2本鎖切断(DSB)を入れ、DNA2本鎖切断修復経路の1つである相同組換え修復を誘導することにより、その効率を高めることができると知られている。標的部位を狙ってDSBを発生させることは難しかったが、Crispr/Cas9の発見により、特別な知識がなくとも標的部位にDSBを発生させることが容易となった。Crispr/Cas9を用いると標的としたDSB部位ではDNAの欠失や挿入が非常に高頻度で生じる。これはoff target部位でも同様である。報告者の実験では、常染色体上のゲノム配列を標的としてゲノム編集を試みた場合、1アレルで意図通りのゲノム編集が達成できたとしても、たいていの場合、もう1アレルには欠失や挿入が発生する。遺伝子治療を念頭に置いた場合、このようなエラーは安全性の低下につながり、これを回避する方法の開発が重要であると考えられる。そこで、報告者らはニックのみを発生させるCas9変異体Cas9D10Aを用い、ゲノム上にニックのみを発生させることでゲノム編集を達成する手法の開発を試みた。ガイドRNAの組み合わせやドナープラスミド配列パターンを様々に変更し、試行錯誤を繰り返した結果、特定のガイドRNAの組み合わせやドナープラスミド配列をある法則に基づいて改変することにより、野生型Cas9を用いた場合よりも高効率に意図通りの遺伝子編集を達成できた。 DNA修復経路選択については共同研究者とともに53BP1/RIF1/BRCA1のDNA損傷部位への局在の時空間的変化が重要であるとする知見を得つつある。One-ended DSBに対する新規修復経路制御因子も同定されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DSBを発生させないゲノム編集法の開発が順調に進んでいる。現時点では完全なデータがそろっているわけではないが、本研究において開発したゲノム編集方法では、たとえゲノム編集に失敗したとしても、ゲノムにDNAの欠失や挿入が起こりにくいことを示唆するデータも出てきている。また、本手法によるゲノム編集において機能するDNA修復経路と放射線照射等で発生するDSB修復経路とに違いがあることもわかってきている。これらのことから、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFP配列を1塩基置換した (c.321C>G)レポーターをゲノムに組み込んだ細胞株(樹立済み)においてゲノム編集によりレポーター遺伝子の塩基置換を行い、EGFPを発現させる手法(確立済み)を用いる。標的外の部位に数十塩基対ごとにサイレント変位を入れたドナープラスミドを用い、本手法によるゲノム編集を試みる。セルソーターを用いてEGFP陽性となった細胞を1つずつ単離し、その細胞におけるゲノム編集の結果をDNA配列レベルで解析する。これにより、標的部位からどの程度離れた部位からドナープラスミド配列が読み込まれているのかを明らかにする。また、前述のレポーター細胞に、もう1コピーのレポーターを組み込んだ細胞を樹立し、一つのレポーターの編集に成功した際、もう一方のレポーターが受ける編集について、上記の手法を用いて解析を進める。DNA修復経路選択については、BRCA1が存在しない細胞におけるDNA架橋修復のうち、相同組み換え修復とは異なる修復機構に注目し、その修復の分子機構を検証する。
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Research Products
(4 results)