2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオマス選択的溶解性イオン液体によるサスティナブル材料科学の創成
Project/Area Number |
26241030
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 敏幸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50193503)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅沼 学史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90731753)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | イオン液体 / セルロース / リグニン / 溶解 / アシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物体はセルロースやヘミセルロースと,芳香族環をもつフェニルプロパノイドの3次元網目構造体であるリグニンが絡み合って構成されている.これらのバイオマスの主成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンは再生可能資源として重要であるが,各成分を犠牲にせずに分離することは困難であり,既存のバイオマス資源化工程は環境保全の観点から問題が残るプロセスを含んでいる.たとえばパルプ生産は木質バイオマスから「リグニンを除去」してセルロースを精製する工程であり,強塩基や強酸など様々な化学薬品と大量のエネルギーを消費し,しかも,リグニン成分は完全に断片化してしまっていた。 本研究は,リグノセルロースの主要3成分を選択的に抽出するプロセスを構築し,環境調和型バイオマス材料科学を創成することを目的とする。現在までの研究で,リグニンやセルロースを溶解するイオン液体[P1ME][Lys]を開発できた。 平成28年度は,アミノ酸アニオンにこだわらず,なるべく低温で多糖類やリグニンの抽出を可能とするイオン液体の研究を行い,単純なアセタートアニオンとN-メチルーN-(2-メトキシエチル)ピロリジニウムカチオンからなるイオン液体[P1ME][OAc]がβ値1.3と大きな水素結合受容能を示し,セルロース溶解性が非常に高いことを見いだした。また,[P1ME][Lys]とDMFとの混合溶液が,粘性も低くなり多糖類溶解性を示すことを見いだした。実際に,この溶液を用いると,室温で10重量%以上のセルロースを竹粉末から抽出でき,この操作を繰り返すことでリグニンを分離することができた(現在,論文投稿中)。さらに,[P1ME][OAc]にセルロースを溶解し,酢酸ビニルを作用させるとセルロースのすべての水酸基をほぼアセチル化して可溶化することができ,アシルドナーにビニルベンゾエートを使用するとベンゾイル化もできることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は下記の研究に注力した。 (1)イオン液体と非プロトン性極性溶媒の混合溶媒によるバイオマス成分の抽出 (1) 代表的な非プロトン性極性溶媒であるDMF, DMSO, DMI, アセトニトリルとイオン液体[P1ME][Lys]を混合し多糖類抽出のための最適混合比を検討した結果,イオン液体[P1ME][Lys]とDMFの混合した場合,モル比1:1で混合すると,プロトン受容能を示すβ値がイオン液体と同等になり,竹粉末からの抽出実験では [P1ME][Lys]-DMF(1:1,モル比)混合溶媒を用いた場合,10重量%まで多糖類抽出率が向上した。この混合溶媒ではもっぱらセルロースとヘミセルロースが抽出され,この操作を繰り返すことでリグニンを残渣として分離する事ができた。 (2)セルロースを素材とする機能材料の創製 セルロースを[P1ME][OAc]にイオン液体に溶解し,酢酸ビニルや酢酸イソプロペニルを作用させたところ,97%以上の水酸基をアセチル化することができた.さらにビニルベンゾエートを作用させた結果,ベンゾエート化も進行することを見いだした。 また,この研究で開発したイオン液体を活用する派生研究も進行し,イオン液体を全く異なる分野にも利用することができることがわかり,イオン液体を利用する酵素活性化やイオン液体を次世代メモリー用途に使う研究が進み出し,新しい研究が広がりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度から,深谷に代わり,新しい研究分担者として菅沼が本プロジェクトに参画することになった.そこで,当初に立案した研究ロードマップに従いつつ,菅沼が得意とする固体触媒を活用するセルロースやヘミセルロースの化学変換を研究計画に加えることとした。研究期間もあと2年間となったため,今後は,バイオマス由来の新素材の開発を目指す。 (1)イオン液体によるセルロース,リグニンの溶解を基本戦略にセルロースやリグニンの環境調和型の化学修飾法を開発する。H28年度の研究でベンゾエート化がイオン液体を使うことで非常に簡便な操作で実現できた。本年は芳香環部分に置換基を導入したベンゾエート誘導体化の検討を進め,ユニークな機能性アシル化セルロース,さらにはリグニンの創製をめざす。また,新しいイオン液体である[P1ME][OAc]にセルロースが良く溶けることがわかった。そこで,単純なカルボン酸を対アニオンとするイオン液体についても,さらに各種合成し,セルロースやリグニンをよく溶かすイオン液体のデザインを検討する。 (2)イオン液体―非プロトン性極性溶媒の混合でバイオマスから選択的にセルロースを抽出する方法を開発でき,この操作を繰り返すことでリグニンを残して,セルロースとリグニンを分離する方法論を開発できた。この方法で得たリグニンについて機能材料化を検討する。また,この時,使用するバイオマスの種類で,抽出性が異なることがわかってきた。このため,さらにバイオマスの種類を変えて,セルロースとリグニン分離について調べる。
|
Research Products
(25 results)
-
-
-
[Journal Article] Molecular mechanisms underlying the pilsicainide-induced stabilization of hERG proteins in transfected mammalian cells2017
Author(s)
Onohara, Takeshi; Hisatome, Ichiro; Kurata, Yasutaka; Li, Peili; Notsu, Tomomi; Morikawa, Kumi; Otani, Naoyuki; Yoshida, Akio; Iitsuka, Kazuhiko; Kato, Masaru; Miake, Junichiro; Ninomiya, Haruaki; Higaki, Katsumi; Shirayoshi, Yasuaki; Nishihara, Takashi; Itoh, Toshiyuki; Nakamura, Yoshinobu; Nishimura, Motonobu
-
Journal Title
J. Arrhythmia,
Volume: 32
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
[Journal Article] Dealkylation of Alkyl Polycyclic Aromatic Hydrocarbon over Silica Monolayer Solid Acid Catalyst2017
Author(s)
Katada, Naonobu; Kawaguchi, Yusuke; Takeda, Kazuki; Matsuoka, Taku; Uozumi, Naoki; Kanai, Kazuki; Fujiwara, Shohei; Kinugasa, Keisuke; Nakamura, Koshiro ; Suganuma, Satoshi ; Nanjo, Masato
-
Journal Title
Appl. Catal., A: Gen.
Volume: 530
Pages: 93-101
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
[Journal Article] Improved Performance of a Conducting-Bridge Random Access Memory using Ionic Liquids2016
Author(s)
Harada, Akinori; Yamaoka, Hiroki; Tojo, Shota; Watanabe, Kohei; Sakaguchi, Atsushi; Kinoshita, Kentaro; Kishida, Satoshi; Fukaya,Yukinobu.; Matsumoto, Kazuhiko; Hagiwara, Rika; Sakaguchi, Hiroki; Nokami, Toshiki; Itoh, Toshiyuki
-
Journal Title
J. Mater. Chem. C
Volume: 4
Pages: 7215-7222
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
[Presentation] Activation of Lipase Using Ionic Liquid Engineering2017
Author(s)
Shiho Kadotani, Takashi Nishihara, Toshiki Nokami,Toshiyuki Itoh
Organizer
International Conference on Catalysis and Chemical Engineering
Place of Presentation
The Double Tree by Hilton Baltimore, MD, USA
Year and Date
2017-02-22 – 2017-02-24
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-