2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26242022
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
高橋 裕次 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 課長 (00356271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 嘉章 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (80213099)
浅見 龍介 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (30270416)
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (20249915)
恵美 千鶴子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 主任研究員 (60566123)
村田 良二 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (50415618)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報資源化 / 文化財 / 博物館史 / 公文書 / MLA連携 / ガラス原版 / 史料論 / 料紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、博物館が収集した文化財と関連する資料(図書・文書など)の分析と整理、データ化を行い、文化財との相互の関連付けを行うことで、これらを一元的に管理し、必要なときに引き出して活用できる博物館アーカイブズを構築する。さらに他の研究機関と情報の共有化を図るため、情報資源を新しい枠組みでとらえ直し、相互利用を可能とする資料の情報資源化の方法論を、実践をとおして研究するものである。
①調査の内容 草創期の博物館が、古器旧物の保存を目的として行った「壬申検査」や、博覧会事業によって収集した文化財の情報と、博物館が所蔵する文化財との関連調査を行い、以後の活用の状況を明らかにした。また、大正年間に総長であった森鴎外が著した蔵書解題をとおして、どのような文化財と関連して図書が収集されたのか、さらに鴎外が推進した天産部の資料の文部省移管を示す目録を検討した。博物館の業務のために収集した文化財をとりまく公文書、図録類から引き出した関連性を示す情報を分析して、文化財の利用のあり方を考察した。 ②意義 本年度の研究テーマである「壬申検査」、博覧会、森鴎外、天産部の資料の移管と関わりのある文化財について、「重要雑録」「展覧会録」「出品録」などの目次データを手がかりに引き出した公文書類の記事や目録、展覧会図録、図書閲覧室のレファレンス記録、写真資料、新聞のスクラップなど博物館の機能との関わりで作成された資料と照合し、文化財の活用という観点からとらえることで、文化財と関連資料との相互の関連付けの有効性が確認できた。 ③重要性 研究の成果を統合データベースに反映させるための作業を実施するなかで、年度ごとのテーマを設定し、文化財の情報資源化の方法論を検討するための具体的な研究を行うなど、文化財の情報資源化という観点から、MLA連携を見据えた統合データべースの構築に向けて着実な一歩を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度以降の目標は、文化財と関連する資料の全貌がほぼ明らかになったところで、個別テーマの研究を進めることにある。その分析をとおして、文化財がどのように利用されてきたかを検討しており、草創期の博物館が、古器旧物の保存を目的とした「壬申検査」などの文化財調査を行い、政府の殖産興業の施策である博覧会事業などに支えられて収集した文化財が、収蔵品の基礎となった。当時の目録類を分析し、文化財がどのように利用されていたかを検討した。また、図書館と動物園を併設する総合博物館として誕生したが、所轄官庁の変更にともない、もっとも多くの文化財を管理していた自然史系の天産部が縮小、廃止され、やがて美術歴史博物館と変貌する。これらの経緯を伝える目録類と文書から、その背景を探った。 未整理の公文書82件をデジタル撮影し、重要度の高いものについて、ほぼ撮影を終了できた。今後の関連付けにおいて、研究の利便性、効率の向上につながる。なお当館では、壬申検査において、文化財を撮影したガラス原板465枚を所蔵しているが、作品の記録としては多く拓本が使用され、写真撮影の対象はほとんどが建物と人物で、作品の撮影はほんの一部である。当時の写真の位置付けについて、さらに検討する必要がある。 博物館におけるさまざまな資料は、相互に関連しあっている。そして個々の文化財を情報のハブとして機能させ、博物館の図書や文書から引き出されるさまざまな情報を参照ポイントとして連結させる。これにより、参照ポイントから逆引きすることで、必要とする情報をもつ文化財にたどり着くことができる。こうした考え方を応用することで、各研究機関との情報の共有を実現することができると考えている。文化財の情報資源化という観点から、MLA連携を見据えた統合データべースの構築をめざしている。計画的に調査・研究を行い、所期の目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、宮内省が明治21年より10年間にわたって実施した臨時全国宝物取調局の調査に関わる公文書、写真資料などをとおして、この事業を実質的に推進した博物館の役割をはじめ、文化財に対する一般の人々の意識や、博物館における文化財の管理体制に与えた影響などを考察する。また博物館で陳列や教育など活用の対象となった文化財について、その特質を示す事項のなかから、材質や伝来、制作地など、これまで一般に示されることのなかったデータについても情報を収集し、より広い利用者を対象としたデータベースの構築を検討する。 平成29年度は、これまでの研究のまとめとして、個々の文化財に関連付けた目録類、図書、文書などのデータをもとに、文化財を多角的にとらえた総合的な情報について確認する。また、検索された情報について、各研究機関と共有する上での適合性を検証する。報告書については、情報資源を新しい枠組みでとらえ直し、相互利用を可能とする資料の情報資源化の方法論を、実践をとおして研究するという、研究の目的にふさわしい内容かどうかについて討論を重ねる。 以上の計画は、研究の対象となる文化財、目録類などの分量が多いことから、当初計画どおりに進まないことも予想されるため、年度初めに研究計画の見直しを行い、目的の遂行を目指す。
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