2015 Fiscal Year Annual Research Report
酸素同位体比を用いた新しい木材年輪年代法の高度化に関する研究
Project/Area Number |
26244049
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
中塚 武 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (60242880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70292448)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 年輪年代法 / 酸素同位体比 / 樹木年輪 / セルロース / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、本研究の2年目に当たり、酸素同位体比年輪年代法の応用範囲の飛躍的拡大を図るために、日本各地で、年単位の樹木年輪酸素同位体比の標準変動曲線(マスタークロノロジー)の延伸と高精度化を実現すると共に、計10か所以上に及ぶ、さまざまな時代の考古遺跡等からの出土材の年代決定への応用を進めた。 具体的には、青森県の古墳時代から中世にかけてのヒバ材(多数の埋没林および遺跡出土材)、秋田県の古代のスギ材(大仙市・払田柵の材木塀由来の材)、新潟県の弥生時代から中世にかけてのスギ材(各種遺跡の出土材)、三重県の弥生時代早期~前期のケヤキ材(河床埋没木)などの系統的な年輪酸素同位体比の分析と年代確定が進み、これまで「本州中部と屋久島における弥生時代中期以降」と「秋田県・福井県の縄文時代」に偏っていたマスタークロノロジーの時空間分布のバランスが大幅に改善した。 考古遺跡からの出土材の年代決定に関しては、福岡から青森までの各地のさまざまな遺跡から出土した木製品(板材、杭材、柱材など)や自然木の年単位での年代決定に成功した。その中では、弥生時代前期末の土器と共伴関係にある奈良県の遺跡の洪水砂中の立木の枯死年代や、弥生時代後期末の層序から見つかった大阪府の遺跡の流木の年代、古代の城柵の建築年代の特定につながる材木塀の柱材の伐採年代など、考古学や歴史学の知見を大きく前進させる数多くの成果が含まれている。 平成27年度は、一方で、年輪数の少ない木材の酸素同位体比年輪年代決定の鍵となる酸素同位体比の年層内(季節)変動に関するデータの収集が進み、その気候・気象学的な理論的解析を進め、今後の年代決定への応用の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縄文時代から現在までの各時代において、全国各地のさまざまな地域から、樹木年輪資料を多数個ずつ取得し、その年輪セルロースの酸素同位体比の経年変動を測定することで、信頼度の高い年輪酸素同位体比のマスタークロノロジーを構築するという目標は、全国の多くの関係者(埋蔵文化財関係者、工事関係者、神代木を保管しておられる一般の方々等)の協力を得て、着実に達成しつつある。その一方で、年輪酸素同位体比の年層内(季節)変動の測定については、現生木を用いた近過去の試験的な取り組みの段階である。今後、早期に、先史時代の小径の杭材などの考古材への応用を始める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる平成28年度は、これまで通り全国各地のさまざまな時代から木材資料を収集し、年輪セルロース酸素同位体比のマスタークロノロジーの延伸・拡張と高精度化を更に進めると同時に、弥生時代の開始期や古墳時代の開始期など、歴史的に重要な画期を成すイベントの年代を、酸素同位体比を用いて、できるだけたくさん明らかにして、考古学への具体的かつ普遍的な貢献につなげたい。出土木材と共伴関係にある土器の暦年代も同時に決定できれば、より大きな考古学的インパクトがあるものと思われる。また、これまで現生木を対象にした「近世以降のセルロース酸素同位体比の季節変動の分析」で得られた知見を、先史時代の木材にも応用して、水田の杭材などのより小径の木材の年代決定にチャレンジする。
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[Journal Article] A multi-proxy reconstruction of spatial and temporal variations in Asian summer temperatures over the last millennium.2015
Author(s)
Feng Shi, Quansheng Ge, Bao Yang, Jianping Li, Fengmei Yang, Fredrik Charpentier Ljungqvist, Olga Solomina, Takeshi Nakatsuka, Ninglian Wang, Sen Zhao, Chenxi Xu, Keyan Fang, Masaki Sano, Guoqiang Chu, Zexin Fan, Narayan P. Gaire, Muhammad Usama Zafar
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Journal Title
Climatic Change
Volume: 131
Pages: 663-676
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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