2014 Fiscal Year Annual Research Report
刑事司法と福祉の連携に関する試行モデルの検証と制度設計のための総合的研究
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26245008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30188841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甘利 航司 國學院大學, 法学部, 准教授 (00456295)
金澤 真理 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10302283)
武内 謙治 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10325540)
渕野 貴生 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20271851)
崔 鍾植 神戸学院大学, 法学部, 研究員 (20380652)
平山 真理 白鴎大学, 法学部, 准教授 (20406234)
木下 大生 聖学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (20559140)
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
高平 奇恵 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (30543160)
森久 智江 立命館大学, 法学部, 准教授 (40507969)
水藤 昌彦 山口県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (40610407)
前田 忠弘 甲南大学, 法学部, 教授 (60157138)
丸山 泰弘 立正大学, 法学部, 准教授 (60586189)
佐々木 光明 神戸学院大学, 法学部, 教授 (70300225)
正木 祐史 静岡大学, 法務研究科, 教授 (70339597)
井上 宜裕 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70365005)
中村 悠人 東京経済大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90706574)
大貝 葵 金沢大学, 法学系, 准教授 (90707978)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑事司法と福祉 / 福祉的ダイバージョン / 更生緊急保護事前調整モデル / 社会内処遇 / 地域生活定着支援センター / 保護観察 / 監視 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、刑事司法と福祉の連携をめぐる試行モデルの運用を刑事司法と福祉の両側面から検証し、課題を明らかにするとともに、刑事司法と福祉の連携の在り方を探求し、その具体的な制度設計を行うことを目的とする。 (1)実態調査 ①国内。調査項目を確定するために、山口、兵庫、滋賀の地域生活定着センターを中心にパイロット調査を実施した。これに基づいて、「地域生活定着支援センター活動評価のための調査項目案」を作成した。また、大阪における更生保護施設と福祉との連携の状況並びに4か所の保護観察所のヒアリング調査を実施した。②外国。2014年7月、オーストラリアのビクトリア州における刑事司法関係機関および民間支援団体の調査を実施した。2015年3月、パリの刑事司法関係機関及び民間支援団体等の調査を実施した。 (2)比較研究 ①メルボルン大学及び対人援助省の研究者を招へいして、2015年2月14日にシンポジウム「福祉と司法の連携における『リスク評価』と支援」を開催した。これにより共同研究に向けて基盤づくりができた。②2014年12月の日本更生保護学会において、ヨーロッパの社会内処遇をテーマとするシンポジウムで、フランスとドイツの社会内処遇の現状について報告した。 (3)理論的・制度的研究として、①犯罪社会学会(2013年10月)において、共同研究「刑事司法と福祉の連携の在り方―犯罪行為者の社会復帰支援の現状と課題」を企画・実施したが、その成果を犯罪社会学研究39号(2014)に掲載した。また、福祉的ニーズを持つ被疑者への起訴猶予等について研究成果を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)実態調査。①国内。地域生活定着支援センター活動(出口支援及び入口支援等)の実態調査に関しては、山口、兵庫、滋賀等の地域生活定着センター等についてパイロット調査を実施し、今年度の目標であった「地域生活定着支援センター活動評価のための調査項目案」を作成することができた。この調査項目票に基づき、各定着センターの活動の実態調査を行う準備を整えた。②更生緊急保護事前調整モデルは、2013年10月から全国7庁の保護観察所で試行されていたが、2014年度には新規に13庁の保護観察所でも試行されている。このモデルが、かつての更生措置付き起訴猶予(横浜方式)といかなる類似と相違を持っているのかを調査している。今年度は、4か所の保護観察所のヒアリングを行った。試行開始後間もないことからまだ本モデルによる保護の実績は多くないが、今後の動向を探る上で分析視角を得ることができた。 (2)比較研究。オーストラリアのメルボルン大学の研究者とシンポジウム「福祉と司法の連携における『リスク評価』と支援」を開催した。内外の研究者のみならず保護観察官ら実務家の参加を得て、充実した内容のシンポジウムになった。今後メルボルン大学のスタッフとは継続的な共同研究を行うことになった。また、今年度は、フランス及びドイツの社会内処遇の現状について学会報告を行い、研究の成果を公表することができた。 (3)理論的・制度的研究 保護観察の理念が変容し社会内刑罰化しつつある現代において、ソーシャルワークとしての保護観察及び更生保護の理念を歴史的に再確認し、その将来的展望を切り開くことを目的に理論的・制度的研究に取り組んでいる。その研究成果は来年度以降に公表される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)実態調査。①国内の実態調査としては、パイロット調査をもとに作成した「地域生活定着支援センター活動評価のための調査項目」に基づき、各県の定着支援センターを訪問し、活動状況についてヒアリングを行う。②外国の実態調査としては、引き続きオーストラリア・ビクトリア州の刑事司法機関及び民間支援団体の活動状況について調査を行う。また、イギリス、フランス及びドイツの状況について調査を行う。 (2)比較研究。①オーストラリアとの関係では、メルボルン大学犯罪学関係スタッフや対人援助省の研究者と共同研究を継続する。双方で公的な研究資金の申請と確保に努める。また、民間支援団体であるACSOの2015年度の国際カンファレンスにおいて、日豪の刑事司法と福祉の連携のあり方に関する報告を行い、両国における類似性と相違を明らかにしたうえで、課題解決の方向を探る。大学間あるいはコンソシアム形式での教員、院生、実務家の相互交流をはかり、刑事司法と福祉の連携に関する共同研究と実務家の研修のための試行を始める。②イギリスについては、保護観察業務の一部民営化とリエゾン・ダイバージョンの動向に関する調査を行う。③フランスについては、社会内処遇における刑罰適用裁判官及び保護観察所とアソシアシオンの連携について調査を継続する。④ドイツについては、保護観察業務の民営化以後の動向(バーデン・ヴュルテンベルク州)や再社会化法案等の動向について引き続き調査する。⑤韓国及び台湾における刑事司法と福祉の関係について調査を行う。 (3)理論的、制度的研究。執行猶予制度、累犯加重制度、量刑手続における判決前調査制度、刑や裁判の個別化を目的とした刑罰執行裁判所や障害者等特別司法手続、起訴猶予などダイバージョン制度、刑事収容施設法や更生保護法、保護観察の理念及び位置づけ等の検討課題について、比較法的・理論的観点から検討を進める。
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Research Products
(25 results)