2015 Fiscal Year Annual Research Report
経済・金融多変量データのベイズモデリングと政策・行動の確率的評価
Project/Area Number |
26245028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 裕浩 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60251188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
石原 庸博 大阪大学, 金融・保険教育研究センター, 講師 (60609072)
高橋 慎 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (20723852)
黒瀬 雄大 関西学院大学, 理工学部, 契約助手 (20713910)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベイズ統計学 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / ボラティリティ / 高頻度データ / 一般化双曲非対称t分布 / マルコフスイッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
大森はOmori and Watanabe (2015)において、株式収益率の計量経済学モデルとして一変量確率的ボラティリティ変動(SV)モデルの日次収益率の観測方程式に、日中の高頻度データを用いた観測方程式を追加した実現SV(Realized Stochastic Volatility 、RSV)モデルについて、モデルパラメータのマルコフ連鎖モンテカルロ法による推定方法を提案し、実証分析を行った。石原は、RSVモデルにおいて複数種類のボラティリティ推定値を同時に一つのモデルに導入する方法・及びベイズ推定法を提案した。収益率の予測精度の向上だけでなく、収益率の様々な種類の変動を分離し、解釈しやすい推測結果を得ることができた。
黒瀬は、Kurose and Omori (2016)において、動学的ブロック均一相関構造を持つ多変量SVモデルを構成して、モデルパラメータのベイズ推定法を提案し、実証分析を行った。高橋はTakahashi, Watanabe and Omori (2015)において、RSVモデルを、金融収益率分布の裾の厚さと非対称性を捉えられる一般化双曲非対称t分布を用いて拡張したモデルを提案した。また、日米の株価指数を用いて、特に株価変動の激しい時期において、拡張されたRSVモデルを用いることによりボラティリティ予測と収益率の分位点予測のパフォーマンスが改善されることを示した。
渡部は、石原・渡部 (2015) において、マルコフスイッチングモデルに、(1)誤差項の分布をt分布にする、(2)分散を確率ボラティリティ変動モデルで定式化する、(3)構造変化を加える、といった拡張を行い、MCMCを用いてベイズ推定した。その結果、これらの拡張により、金融危機や東日本大震災を含む期間でも景気の転換点を正確に推定できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者及び分担者は、研究成果をこれまで査読付き雑誌としてEconometric Reviews(2論文), Computational Statistics and Data Analysis (3論文), International Journal of Forecasting, Journal of Financial Econometrics, Japanese Economic Review, Empirical Economics, Journal of the Japanese and International Economies, 経済研究(3論文), 日本統計学会誌などのほか、研究書「Current Trends in Bayesian Methodology with Applications」にも掲載を順調に進めている。学会における発表も2014年度統計関連学会連合大会(東京大学)、2015年度統計関連学会連合大会(岡山大学)、2014年度国際ベイズ分析学会、2014年度計算・計量ファイナンス学会(CFE2014、イタリア)、2015年度計算・計量ファイナンス学会(CFE2015、英国)など国内外において精力的に継続している。また、関西計量経済研究会を主催(科研費にて共催)し、計量経済学の最近の研究について発表の場も広く提供した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 多変量株式収益率のための確率的ボラティリティ変動(SV)モデルの共分散行列のコレスキー分解や多重ブロック内均一相関構造などによる改善、(2) 一変量RSVモデルの誤差項にさまざまな歪みを表現する確率分布を導入することによる、モデルのあてはまりや予測の改善、(3) 金融市場などにおける多変量時系列データのための、ディリクレ過程混合分布に基づくノンパラメトリックベイズ法の応用、(4) 時変VAR モデルの改良とマクロ経済データへの応用、(5)ミクロ経済データを用いた経済政策の効果・予測の確率的評価を行う。
研究成果は、積極的に国内外の会議で発表をするとともに、国際的学術雑誌への投稿を行う。
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